相続イメージ
「子供に相続するなら不動産? それともお金が良い?」

相続で不動産をどうするかお悩みですね?

確かに不動産だと相続税の評価額が減るため、相続税対策に有効な場合もあります。

しかし実際は9割以上の人が相続税の対象外。

むしろ多くの地域では不動産が値下がりしており、早く売却した方が有利です。

また不動産を使った過度な節税は、税務署の判断で否認されるリスクも知っておきましょう。

この記事では、あなたの相続で不動産をどうすべきか最適な判断をするための5つのポイントをまとめました。

あなたの不動産を最適な形で相続するために、この記事がお役に立てば幸いです。

不動産の相続5つのポイント

不動産の相続で最適な方法を考えるポイントとして次の5つがあります。

それぞれ解説します。

ポイント1. そもそも9割は相続税の課税対象外

相続税の課税対象になる人は全体の1割未満、残り9割以上は相続税がかかりません。

なぜなら相続税には基礎控除や軽減制度、特別控除があり、相続財産が控除額の範囲内であれば課税されないため。

基礎控除と軽減制度、特別控除

正確には国税庁の手引を参照しましょう。
【参考】国税庁・パンフレット・手引

ざっくりと概要をまとめておきます。

相続税の基礎控除

相続税の基礎控除額はこちら。

基礎控除額= 3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人が3人なら、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3)となります。

(参考)法定相続人の範囲、順位と割合

  1. 故人の配偶者は必ず相続人になる。
  2. 配偶者と、第1〜3のどれか1つの順位の人が一緒に相続する。
    第1順位…故人の子供1/2、配偶者1/2
    第2順位…故人の親1/3、配偶者2/3
    第3順位…故人の兄弟1/4、配偶者3/4
  3. 前の順位の人が全くいない場合は、次の順位の人が相続する。
  4. 配偶者がいなければ、その順位の人がすべて相続する。
  5. 一つの順位に複数の人がいる場合は、人数で等分する。
    例)奥さんと子供2人⇒奥さん1/2、子供1/4ずつ

【参考】国税庁・No.4132 相続人の範囲と法定相続分

軽減制度と特別控除

また基礎控除を超える場合も、軽減制度を利用すると大幅に控除できます。

1. 配偶者の税額の軽減
配偶者の相続は、法定相続分又は1億6千万円まで非課税
(ただし相続開始10ヶ月以内に遺産分割をして遺産を受け取っている場合に限る)
【参考】国税庁・No.4158 配偶者の税額の軽減
2. 小規模宅地の特例(特定居住用宅地等)
故人の配偶者や同居していた親族などが、居住用の宅地を相続すると、330m2までは土地の評価額が8割減額(他に事業用宅地の減額もあり)
【参考】国税庁・No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
3. 未成年者控除
未成年の場合は、満18歳になるまで1年に付き10万円を控除
【参考】国税庁・No.4164 未成年者の税額控除
4. 障害者控除
障害のある方の場合、満85歳になるまで1年につき10万円を控除(特別障害者の場合は20万円)
【参考】国税庁・No.4167 障害者の税額控除
5. 相次相続控除
今回の相続開始前10年以内に相続税を払っていたら、2回目の相続税から一定額を控除
【参考】国税庁・No.4168 相次相続控除
6. 贈与税の控除
相続開始前3年以内に支払った贈与税は相続税から控除
【参考】国税庁・No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続税の対象は8%程度

平成27年1月1日から基礎控除額が引き下げられたため、相続税の対象になる人が増えましたが、それでも相続全体の4.4%→8.0%程度。

ほとんどの人は、相続税の対象外です。

相続財産と対象にならない財産

そもそも相続税の対象にならない財産もあります。

1. 墓地・墓碑・仏壇・仏具
純金製の仏具で相続税対策をする方もいます。ただし節税目的と税務署が判断すると、否認される恐れがあります
2. 生命保険
相続人の受け取り金額のうち、500万円×法定相続人数までは非課税
【参考】国税庁・No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
3. 死亡退職金
相続人の受け取り金額のうち、500万円×法定相続人数までは非課税
【参考】国税庁・No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
4. 寄付金

【参考】国税庁・No.4108 相続税がかからない財産

相続財産とは

この様なものが相続財産になります。

  • 現金
  • 預貯金
  • 不動産(土地・家屋)
  • 株式・投資信託
  • 債権(国債・公債・社債など)
  • 未回収の賃金など
  • 自動車
  • 貴金属
  • ゴルフ会員権
  • 借地権・借家権

【参考】国税庁・No.4105 相続税がかかる財産

不動産の相続税評価額

不動産のままで相続税を計算するときは、土地と建物で違います。

土地の計算方法
土地は、路線価方式又は倍率方式のどちらか。
国税庁が作成している路線価図と倍率評価表をみると、あなたの不動産の価格が計算できます。
建物
固定資産税評価額と同じです。
毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。

【参考】国税庁・No.4602 土地家屋の評価

相続税対策に不動産を活用するのは条件次第

「相続税対策として不動産が活用できるのでは?」

そう考える人もいるかもしれませんが、これはあくまでも条件次第。

相続税は圧縮できても、他の理由で大損する恐れもあります。

小規模宅地の特例で節税できるなら不動産で

小規模宅地の特例は、故人の住んでいた自宅の土地や事業用の土地の評価額を最大8割も減額できるもの。

小規模宅地の特例で節税できるのであれば、不動産のまま相続したほうが良いでしょう。

住んでいた土地で特例を適用できる主な条件はこちら。

1.故人の配偶者
無条件で小規模宅地の特例が使えます。
2.無くなった人と同居していた家族
無くなった日の翌日から10ヶ月間は、所有して居住もしていることで小規模宅地等の特例が使えます。
3.上記の1.2.に該当するものがいないかつ、過去3年間持ち家に住んでいない家族
上記の1.2.に該当するものがいない場合で、持ち家を所有していない子供が、親の家を相続するばあいなど

ただし、配偶者に相続する場合は、配偶者が亡くなったあとの2次相続で、多額の相続税がかかる恐れもあるので、子供と
の共有名義にするなど、部分的に子供にも相続しておいたほうが良いでしょう。
【参考】国税庁・No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

王道のアパート・マンション経営だがリスクも大きい

アパート・マンション経営は王道とも言えますが、賃貸事業としてどの程度収益性があるのか、自分で計算して判断する必要があります。

賃貸需要が高いエリアで、すでに土地を持っている地主なら「あり」でしょう。

アパート・マンション経営が相続税対策になる理由として、次の2点があります。

  • 相続税には「小規模宅地等の特例」があり、課税評価額が50%または80%減額されるため。
  • アパートなどを建てる際にローンを利用すればローン残債分がマイナスの財産となり、その分も控除できるため。

こうした節税策で相続税は減らすことができるのです。

賃貸経営の環境も悪化している

賃貸経営を取り巻く環境は悪化しています。

賃貸物件の空室率は、都心部でも上昇。

その一方で新築の賃貸物件は増え続けており、空室が増えているのに賃貸住宅が増えているという矛盾が生じています。

さらに今後は生産人口と世帯数も減少。

借りる人が減るのに賃貸物件は増えるという、アンバランスな状態にあるのが賃貸経営の現状なのです。

他にも「レオパレス」など、賃貸経営にまつわるトラブルも増加中。

家賃保証や高利回りなど魅力的な話は、多くが何らかの大きなマイナスがあるため、営業マンのセールスで判断するのでなく、第3者のコンサルタントなどを利用しましょう。

最近増えてきたタワーマンション高層階

タワーマンションの高層階を購入し、賃貸に出すという相続税の節税策も増えています。

理由は、高層階が高くなる実価格に対して、高層階でも低層階でも相続税評価額がほとんど変わらないため。

タワマン節税対策として階数による固定資産税評価額の税率見直しが実施されたものの、相続税評価額への影響は小さいため、いまでも十分に効果的な節税手法です。

タワーマンションについては、こちらで詳しく解説しています。

過度な節税は税務署が否認できる

国税の伝家の宝刀は最高裁でも認められた

過度な節税は税務署の判断で否認できます。

財産評価基本通達6項といわれる権限で、『国税の伝家の宝刀』とも言われます。

財産評価基本通達第1章6 この通達の定めにより難い場合の評価
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

2022年4月19日に、最高裁が路線価を利用した節税を否認する判決を出しました。
【参考】日本経済新聞・相続マンション、路線価認めず課税「適法」 最高裁判決
不動産を利用した節税が今後は使いにくくなると言われています。

これを受けて、税金の方針を決める令和5年与党税制改正改正大綱では、「「相続税におけるマンションの評価方法については、相続
税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」と記載。

すでに国税庁は有識者会議を開催し、タワマン節税等を封じる通達改正に向けて動き出しています。
市場価格と相続税評価額の乖離の事例

ポイント2. 不動産は公平に配分が難しい

不動産は相続人同士で分けにくいため、相続争いの原因になりやすいという問題があります。

遺産が少額でも相続争いは起きやすい

相続争いと聞くと「遺産が高額な場合にモメるのでは?」と思うかもしれませんが、実は少額でもモメるもの。

家庭裁判所の遺産分割調停件数(2019年度)を見ると、相続争いの76%は遺産が5,000万円以下となっているのです。

家庭裁判所の遺産分割調停件数(2018年度)

相続争いの総件数7,507件のうち、

  • 遺産1,000万円以下の件数・・・2,476件(33%)
  • 遺産5,000万円以下の件数・・・3,249件(43%)
  • 遺産1億円以下の件数・・・832件(11%)
  • 遺産5億円以下の件数・・・533件(7%)
  • 遺産5億円超の件数・・・53件(0.7%)

全体の33%が1,000万円以下の相続争いとなっており、少額だから大丈夫とも言えないことがよく分かります。

家博士家博士

モメたりトラブルになるケースとしてよくあるのは、相続した本人同士は仲が良くても、その配偶者がモメるケースなんだ。

共有名義はトラブルの元

不動産は分割できないため、相続人が共有名義で所有する結果になりがち。

しかし共有名義で不動産を所有すると、トラブルがおきやすくなります。

住んでいる人と、共有名義で所有だけしている人の間で、家賃を払え・払わないというトラブルが起きやすくなるのです。

また売却のタイミングでも、意見が相違してトラブルになりやすいのです。

共有名義の不動産については、こちらで解説しています。

金融資産は相続争いになりにくい

金融資産は分割しやすいため、あなたが遺書を残すことで公平に配分できれば、相続争いを防げます。

ハウスハウス

余計な揉め事にならずに済むから、控除範囲内なら金融資産が一番いいってことなんだね

年金生活者が不動産を売却しても年金は減らない

家を売却するとなると、年金生活者の場合は「年金が減額されるのではないか?」と心配になるかもしれません。

結論から言うと、家を売却してお金が入っても年金の減額などはなし。

心配せずに売却できます。

年金生活者の不動産売却については、こちらで解説しています。

不動産の売却価格を知る方法

今は、都市部を中心に不動産価格が高騰しています。

不動産価格指数(全国)

不動産価格指数(全国202403)

不動産価格指数とは

不動産相場の価格変動が純粋に分かる指数。国土交通省がアンケートで集めた年間30万件の成約価格を元に、ヘドニック法という統計計算でまとめたもの。3ヶ月前までのデータが毎月末頃に公表される。2010年の平均を100として算出。

中古マンションは約11年で89%も値上がりしています。


戸建ては上昇していないように見えますが、これは都心部の戸建てが上昇している分を、地方の戸建ての値下がりが打ち消しているため。

戸建ては立地によって、価格の2極化が進んでいます。

あなたの不動産の売却価格を正確に調べる方法はこちら。

  1. エリアで売買実績が豊富な不動産会社に絞る
  2. 上記の3〜6社に無料査定を依頼して、査定価格と話を聴き比べる

エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、査定の精度が高くなります。

また今は都市部を中心に不動産価格が高騰しているため、不動産のプロでも査定が難しい状態。

不動産会社によって査定価格に差が出るため、1社だけでなく最低3社以上に査定を依頼しましょう。

ただし数が多すぎると対応が大変なので、多くても6社程度が良いでしょう。

ハウスハウス

エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、どうやって探すの?


家博士家博士

不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると便利だよ


一括査定サイトの定番3社

一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。 一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。 この3社以外についてはこちらにまとめています。

  1. すまいValue
    おすすめ1位
    すまいValueバリュー
    査定実績:
    77万件(2016年開始)
    不動産会社数:
    大手6社(全国875店舗)
    運営会社:
    大手6社共同運営
    三井のリハウス住友不動産販売東急リバブル野村の仲介+小田急不動産三菱地所の住まいリレー
    実績 5.0
    不動産会社 4.5
    運営会社 5.0

    大手6社が共同で運営する一括査定サイト。6社といっても全国875店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。首都圏以外でもほとんどの都市で、三井・住友・東急の3社が実績トップを独占しています。
    2023年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトとして定番になっています。
    簡易査定を選べば郵送やメールで概算価格の査定が可能。
    さらに詳しくはこちら⇒すまいValueの詳細

    管理人のコメント

    地方では大手より中小が強いエリアもあるため、HOME4USUUMOが良い場合もあります。
    しかし都市部では「すまいバリュー」が現状で最強の一括査定サイトでしょう。
    特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。営業マンの質もワンランク上です。

  2. 【公式サイト】すまいValue


  3. SRE不動産
    おすすめ2位
    SRE不動産(旧ソニー不動産)
    査定実績:
    (2014年開始)
    不動産会社数:
    売主側1社(買主側多数)
    運営会社:
    SREホールディングス(東証PRM)
    実績 4.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 5.0

    すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。ただし利用できるエリアは首都圏と関西圏のみ。
    あのソニーが始めた不動産会社で、大手で唯一のエージェント制を採用。他の不動産会社が積極的に買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。またAI査定に定評があり、千社以上に技術を提供するほど。まずメールで概算価格だけ査定できます。
    さらに詳しくはこちら⇒SRE不動産の詳細

    管理人のコメント

    エージェント制は売主だけ担当し、買主は他の不動産会社が探すため、複数に売却を依頼するのに近い効果が期待できます。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで利用がオススメ。

  4. 【公式サイト】SRE不動産


  5. HOME4U
    おすすめ3位
    HOME4Uホームフォーユー
    査定実績:
    累計50万件(2001年開始)
    不動産会社数:
    2,100社
    運営会社:
    NTTデータ・スマートソーシング
    実績 5.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 4.0

    日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始から累計で査定実績50万件と実績は十分です。運営はNTTデータ(東証プライム上場)のグループ会社なので安心。
    不動産会社は大小バランスよく登録されており、幅広く査定を依頼できます。机上査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。
    さらに詳しくはこちら⇒HOME4Uの詳細

    管理人のコメント

    HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多く、自然と査定精度が高くなる仕組み。
    ちなみに記入した内容は、後で不動産会社と話すときに修正できます。
    あまり悩まずとりあえず現時点の希望を書いておけば問題ありません。
    不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。

  6. 【公式サイト】HOME4U

各エリアで最適な組み合わせ



エリア別のオススメ一括査定サイト

あなたのエリアで最適な一括査定サイトの組み合わせはこちら。

  • 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、関西圏(大阪・兵庫・京都・奈良)

    →まずすまいValueで大手に、あわせてエージェント制のSRE不動産にも話を聞くと良いでしょう。

  • その他の都市(札幌・仙台・名古屋・福岡など)

    →まずすまいValueで大手に、あわせてHOME4Uでエリアに特化した中小にも話を聞くと良いでしょう。

  • 地方(人口密度が少ない地域)

    →まずHOME4Uで探し、数が少なければSUUMOHOME’Sも使ってみると良いでしょう。

ポイント3. 2次相続も考えておく

あなたの相続で上手く節税できても、あなたの配偶者から子供へ相続する2次相続で多額の相続税が発生するケースがあります。

特に配偶者の税額の軽減を利用した場合によく起きる失敗です。

2次相続で利用できる控除として、10年以内なら『相次相続控除』がありますが、控除額は1次相続で課税された相続額の10%×経過年数と多くありません。

この問題はかなり難解なので、弁護士や税理士に相談されることをオススメします。

【参考】国税庁・No.4168 相次相続控除

ポイント4. 長期的に不動産は値下がり傾向

あなたの不動産が、相続後も資産価値を維持できるかも判断する基準になります。

日本の不動産は、ごく一部の都心を除き、長期的には値下がりします。

なぜなら次の2つの原因があるため。

  1. 人口の急減と高齢化
  2. 増え続ける住宅

それぞれ解説します。

原因1.人口の急減と高齢化

日本の人口は、2008年をピークに急速に減少しています。

日本の長期人口変化

日本の長期人口変化

2050年には総人口がピーク時より約2,500万人減の1億192万人に。

また家を購入する年代にあたる生産年齢人口(15〜64才)は、2008年の7,728万人から、2050年には約2,500万人減の5,275万人まで減少すると予想されているのです。

一方の高齢化率は人口ピーク時の2008年には22.1%でしたが、2050年には37.7%と約1.7倍に。

日本の年齢別人口推移

日本の人口比率推移

地域別の人口分布で見ても、2050年には現在の居住地域の5割以上で人口が半分以下になり、2割の地域では無居住化(無人化)すると予想されています。

エリア別日本の人口増減
日本の人口増減

こうした急激な人口減少によって住宅需要が減り、家の価値も下がってしまうのです。

ハウスハウス

外国人の受け入れで、これから移民が増えるのじゃないの?

家博士家博士

確かに海外からの移民は増えるかもしれないけど、増えたとしてもせいぜい100万人規模。
2,500万人以上減少することに比べると圧倒的に数が少ないんだ。

原因2.増え続ける住宅

原因の2つ目は、人口減少や高齢化にもかかわらず住宅が増えているということ。

実は日本は先進国で唯一、住宅総量規制がない国なのです。

住宅総量規制のある国では、住宅数がコントロールされているため、住宅数が増えすぎることがありません。

しかし、住宅総量規制のない日本では、新築住宅が建て放題。

「経済波及効果が高い」という理由で、人口減少・高齢化が進んでいるのに、新築住宅がどんどん建てられています。

日本人の人口・世帯数と住宅戸数

住宅戸数と世帯数の変化2018年rev3

家博士家博士

2008年から2018年の10年間で、住宅戸数は483万戸も増えたんだ

ハウスハウス

ということは、それだけの新築住宅が増えたってことなんだね

その一方で、2018年時点の空き家率は13.6%、空き家戸数は849万戸にも上っています。

新しい家を建てた分、既存住宅を解体するなどコントロールされていれば良いのですが、そうではないために住宅戸数の増加と共に空き家も増加しているのです。

ちなみに、ドイツやイギリスなどの空き家率は3〜4%程度。

日本と同じように2003年をピークに人口減少が続くドイツでも、住宅総量規制などによって空き家対策が取られています。

3大都市圏は生産緑地の解除も心配

また3大都市圏(首都圏・名古屋圏・近畿圏)では、2022年から順次開放予定の生産緑地の影響で一戸建ての値下がりが加速する恐れも。

生産緑地とは、都市部に残されている農地のことで、2022年以降に一部が解除されます。

2022年解除見込みの生産緑地と住宅着工面積
2022年に解除見込の生産緑地面積 新築住宅着工床面積2022年度 割合
東京都 143万m2 884万m2 16%
埼玉県 138万m2 438万m2 32%
千葉県 107万m2 377万m2 28%
神奈川県 75万m2 503万m2 15%
首都圏合計 463万m2 2,202万m2 21%
愛知県 166万m2 481万m2 35%
大阪府 132万m2 491万m2 27%
京都府 57万m2 118万m2 48%
兵庫県 41万m2 258万m2 16%
奈良県 85万m2 59万m2 144%
関西圏合計 315万m2 926万m2 34%

この表で25%を超える地域は、生産緑地の開放が住宅価格に影響する恐れがあります。

マンションの多くは建替えできない

都市部のマンションは多くが建替えできず、解体して更地を売却するか、スラム化します。

これから迎えるマンションの高齢化

マンションも築年数が古くなると、建て替えが必要になります。

日本でマンション建設が本格的に始まったのは1980年代から。

当時建てられたマンションは築40年を超えると配管の漏水などが増えるため、多くのマンションがこれから建替えの時期を迎えます。

マンションの築年数別戸数(全国)

築年別のマンション戸数(全国2023年)修正01

築40年以上のマンションの数

築40年超のマンション戸数(2023年)修正

容積率緩和がないと数千万円の自己負担に

しかし多くのマンションは建て替えできません。

なぜならマンションを建て替えるためには、建て替え後の戸数を大幅に増やし、増えた住戸の売却益で建替え費用を補う必要があるため。

同じ敷地でマンションの総戸数を増やすためには、容積率の緩和が必須になります。

容積率が大幅に緩和されるエリアでしか、建て替えはできないのです。

容積率に余裕がないマンションでは、建て替えに1戸あたり数千万円という多額の費用負担が必要なため、現実的ではありません。

容積率とは
土地の面積に対して、建築できる建物の床面積の制限
例えば土地500m2で容積率150%であれば、500m2×150%=750m2のマンションが建てられます。
ハウスハウス

マンションの建て替えができそうなエリアって、どんなところ?

家博士家博士

都市部の駅500m圏内(徒歩7分圏内)であれば建て替えの可能性がある。
それ以外は難しいんだ

建て替えの時期が来る前にも問題は発生します。

それが、大規模修繕費用が徐々に高額になるということ。

実は既に多くのマンションでこの修繕費用が不足しています。

修繕積立金については、こちらで解説しています。

修繕費用がまかなえないと、残された道はマンションを解体して更地売却すること。

しかし更地売却するにも住民の80%以上の賛成が必要なので、賛成決議ができなければそのまま放置され、スラム化する恐れもあります。

マンションの建替えについては、こちらで詳しく解説しています。

すでに売れない不動産も多いという現実

「不動産が売れなくなると言っても、まだしばらくは大丈夫なのでは?」

そう思うかもしれませんが、実はすでに売れない不動産もたくさんあります。

例えば、バブル期に建てられた数千万円のリゾートマンション。

今となっては10万円でも売れないのが現実です。
苗場のマンション事例

また埼玉県深谷市では、廃校になった中学校体育館と土地(1,500m2)が入札により、マイナス795万円で落札。

深谷市中学体育館

深谷市が落札者に795万円を支払って、不動産を引き取ってもらっています。

すでに地方では、お金を支払って不動産を引き取ってもらう時代になっているのです。

【参考】埼玉県深谷市 新たな入札方法による旧中瀬小学校体育館の売却について

さらに各自治体では、人口が減少する中で公共サービスを維持するために、撤退戦が始まっています。

「コンパクトなまちづくり」と「市街地の空洞化防止」を目的とした、立地適正化計画です。

コンパクトシティ構想説明図

立地適正化計画では居住区域と非居住区域を線引きすることで、インフラ整備にかかる費用などを抑制。

非居住区域に指定されてしまえば、売ることはもちろん、貸すことも難しくなり「負動産」に。

計画策定の進捗状況は自治体によっても違いますが、過疎地など人口減少が著しい地域にある不動産は一刻も早く売るなどした方が良いと言えるでしょう。

立地適正化計画については、こちらで詳しく解説しています。

空き家急増により不動産の価値は3種類に分かれる

空き家が急激に増えています。

空き家が増えるということは、需要に対して供給が多くなっているということ。

家が欲しい人に対して、家の戸数が多い状態になるため、価値が下がっていくことは明らかです。

しかし、全ての家の価値が同じように下がっていくわけではありません。

家博士家博士

ポイントになるのは立地。
立地によって、不動産の価値は3種類に分かれるんだ

ハウスハウス

3種類?

家博士家博士

1.しばらく価値が維持される不動産、
2.価値が下がり続ける不動産、
3.無価値になる不動産
の3種類だよ

全体的に見ると供給過多の状態であっても、都市部の駅500m圏内(徒歩7分圏内)なら需要もそれなりに多く、価値はしばらく維持されるでしょう。

一部は上昇を続ける可能性もあります。

一方で、郊外や地方都市については、緩やかにしかし長期的に価値がズルズルと下がり続けます。

さらに過疎地になると人口減少が著しいこともあり、誰も買わない・売れない不動産になり無価値に。

活用も難しくなってしまい、どうしようもない「負動産」となってしまう可能性が非常に高いのです。

駅からの距離で価格が全く逆の動きになっている状態は、公示地価をみるとよく分かります。

最寄り駅距離別の公示地価変動率
(3大都市圏・2018年)

最寄り駅距離別の公示地価変動率(3大都市圏・2018年)


最寄り駅距離別の公示地価変動率
(地方圏・2018年)

最寄り駅距離別の公示地価変動率(地方圏・2018年)

都市部でも地方でも、駅から距離が遠いエリアでは、公示地価が下がり続けています。

公示地価とは
公示地価は、国土交通省が毎年全国に定めた標準地約3万地点を対象に、1月1日時点の1平方メートル当たりの価格を3月頃に発表するもの。
都道府県の発表する基準地価と合わせて、土地取引の指標になります。
公示地価は、国土交通省の土地総合情報システム 地価公示・都道府県地価調査にアクセスすると調べられます。
国土交通省地価公示・都道府県地価調査
土地の価格の調べ方について詳しくはこちら
土地の価格の調べ方と、価格を比較する場合の修正点とは

空き家はどれくらい増える?

普段の生活の中でも空き家を見かけることがありますが、そもそも空き家はどれほど増えると予想されているのでしょうか。

シンガポール国立大学不動産研究センターによると、2030年における日本の空き家率は30%、戸数にすると2,000万戸を超えると予想されています。

これは全体の1/3が空き家になるという計算。

3軒に1軒は空き家になる可能性があるのです。

さらに、日本の住宅価格は2040年には2010年と比べて46%下がるという試算も。

つまり、住宅価格は約半分にまで下がってしまうのです。

ハウスハウス

家は『憧れ』だったのに、まさかこんな深刻な状態になるなんて・・・

ポイント5. 認知症だと売れなくなる

最後に知っておきたいのは、あなたの認知症リスクがどの程度あるか。

不動産の所有者が認知症になってしまうと、不動産を売却することがかなり難しくなります。

なぜなら、認知症の人は判断能力が無いとされるため、所有する不動産の売却には成年後見人制度を利用するため。

成年後見人制度では、裁判所が本人のために必要だと認める場合に限って、不動産を売却できます。

相続対策は本人のためではないため、多くの場合は認められません。

認知症について、詳しくはこちらで解説しています。

賃貸経営の不動産で相続する場合、認知症対策として家族信託という方法もあります。

まとめ

あなたの不動産の相続を考えた場合に、不動産で相続するか、売却して現金で相続するか、判断するポイントは次の5つ。

  1. そもそも9割は相続税の課税対象外
  2. 不動産は公平に配分が難しい
  3. 2次相続も考えておく
  4. 長期的に不動産は値下がり傾向
  5. 認知症だと売れなくなる

>今後の方針を考えるために、まずは今いくらで売れるか、価格を確認してみてはいかがでしょうか。

今の価格を調べる方法は、エリアで売却実績が豊富な不動産会社を複数(3〜6社)選び、無料査定を依頼します。

不動産会社の心当たりがない場合は、一括査定サイトを利用すると便利です。

一括査定サイトの定番3社

一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。 一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。 この3社以外についてはこちらにまとめています。

  1. すまいValue
    おすすめ1位
    すまいValueバリュー
    査定実績:
    77万件(2016年開始)
    不動産会社数:
    大手6社(全国875店舗)
    運営会社:
    大手6社共同運営
    三井のリハウス住友不動産販売東急リバブル野村の仲介+小田急不動産三菱地所の住まいリレー
    実績 5.0
    不動産会社 4.5
    運営会社 5.0

    大手6社が共同で運営する一括査定サイト。6社といっても全国875店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。首都圏以外でもほとんどの都市で、三井・住友・東急の3社が実績トップを独占しています。
    2023年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトとして定番になっています。
    簡易査定を選べば郵送やメールで概算価格の査定が可能。
    さらに詳しくはこちら⇒すまいValueの詳細

    管理人のコメント

    地方では大手より中小が強いエリアもあるため、HOME4USUUMOが良い場合もあります。
    しかし都市部では「すまいバリュー」が現状で最強の一括査定サイトでしょう。
    特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。営業マンの質もワンランク上です。

  2. 【公式サイト】すまいValue


  3. SRE不動産
    おすすめ2位
    SRE不動産(旧ソニー不動産)
    査定実績:
    (2014年開始)
    不動産会社数:
    売主側1社(買主側多数)
    運営会社:
    SREホールディングス(東証PRM)
    実績 4.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 5.0

    すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。ただし利用できるエリアは首都圏と関西圏のみ。
    あのソニーが始めた不動産会社で、大手で唯一のエージェント制を採用。他の不動産会社が積極的に買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。またAI査定に定評があり、千社以上に技術を提供するほど。まずメールで概算価格だけ査定できます。
    さらに詳しくはこちら⇒SRE不動産の詳細

    管理人のコメント

    エージェント制は売主だけ担当し、買主は他の不動産会社が探すため、複数に売却を依頼するのに近い効果が期待できます。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで利用がオススメ。

  4. 【公式サイト】SRE不動産


  5. HOME4U
    おすすめ3位
    HOME4Uホームフォーユー
    査定実績:
    累計50万件(2001年開始)
    不動産会社数:
    2,100社
    運営会社:
    NTTデータ・スマートソーシング
    実績 5.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 4.0

    日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始から累計で査定実績50万件と実績は十分です。運営はNTTデータ(東証プライム上場)のグループ会社なので安心。
    不動産会社は大小バランスよく登録されており、幅広く査定を依頼できます。机上査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。
    さらに詳しくはこちら⇒HOME4Uの詳細

    管理人のコメント

    HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多く、自然と査定精度が高くなる仕組み。
    ちなみに記入した内容は、後で不動産会社と話すときに修正できます。
    あまり悩まずとりあえず現時点の希望を書いておけば問題ありません。
    不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。

  6. 【公式サイト】HOME4U

各エリアで最適な組み合わせ



エリア別のオススメ一括査定サイト

あなたのエリアで最適な一括査定サイトの組み合わせはこちら。

  • 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、関西圏(大阪・兵庫・京都・奈良)

    →まずすまいValueで大手に、あわせてエージェント制のSRE不動産にも話を聞くと良いでしょう。

  • その他の都市(札幌・仙台・名古屋・福岡など)

    →まずすまいValueで大手に、あわせてHOME4Uでエリアに特化した中小にも話を聞くと良いでしょう。

  • 地方(人口密度が少ない地域)

    →まずHOME4Uで探し、数が少なければSUUMOHOME’Sも使ってみると良いでしょう。

あなたの不動産の相続に最適な方法が見つかり、相続の悩みから開放され安心して日々くらせることを、心よりお祈りしております。