「不動産の売り出し価格はどのくらい? 成約価格とは違うの?」
不動産の売却で、売り出し価格と成約価格についてお悩みですね。
この記事では、売り出し価格と成約価格で9割が知らない事実、そして売り出し価格の決め方についてまとめました。
あなたの不動産売却が成功するために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
売り出し価格と成約価格とは
売り出し価格は売主の希望価格
『売り出し価格』とは、不動産を売り出すときに売主が希望する価格のこと。
今売り出されている不動産の売り出し価格は、不動産ポータルサイトなどで見ることができます。

今の売り出し価格は、ネット上で誰でも見れるんだ。
成約価格は実際に売買が成約した価格
『成約価格』とは、実際に売買が成立した価格のこと。
成約価格は、一般の個人は見れません。
成約価格は不動産会社しか見られない
成約価格は不動産会社しか見られません。
なぜなら成約価格は、『レインズ』という公的なデータベースだけに登録されており、レインズは不動産会社しか利用できないため。
国土交通省の指定流通機関である、不動産流通機構が運営するデータベース。
過去の取引事例、現在の売り出し物件情報が登録されています。
不動産会社しか利用できません。
(参考)家を売るときに知っておきたい「レインズ」のこと
個人で見れるのは概要だけ
ただし成約価格の概要だけ、私たち一般の個人も見られます。
これらのサイトでは、個人情報保護のため詳細は隠されており分かりません。

売り出し価格でも成約価格でも、どっちでも良いんじゃないの?

ところが、大きな違いがあるんだよ。
売り出し価格と成約価格の差
売り出し価格は成約価格と違い、場合によって大きな差があるので注意しましょう。
特に不動産の売り出し価格を決めるときは、売り出し価格だけで決めると、失敗する恐れがあります。
売り出し価格と成約価格の差は、マンションと戸建てで違い、それぞれ築年数によっても違います。
マンションの差は11%〜34%
中古マンションの売出し価格と成約価格の差を、築年数別にまとめたものがこちら。
築年数別の売り出し価格と成約価格
(中古マンション・首都圏・2019年)
グラフの差を表で見やすくまとめるとこちら。
マンション | 売り出し価格 (1m2あたり) | 成約価格 (1m2あたり) | 差 |
---|---|---|---|
築0〜5年 | 104.1万円 | 84.4万円 | 23.4% |
築6〜10年 | 81.5万円 | 73.4万円 | 11.0% |
築11〜15年 | 69.7万円 | 62.5万円 | 11.5% |
築16〜20年 | 62.6万円 | 55.0万円 | 13.8% |
築21〜25年 | 50.0万円 | 42.7万円 | 17.0% |
築26〜30年 | 38.7万円 | 30.7万円 | 26.0% |
築31年〜 | 43.4万円 | 32.4万円 | 33.8% |
中古マンションの売り出し価格と成約価格で差が特に大きいのは、築5年以内と築26年以上です。
差が大きい理由は、高値狙いや買主との意識のズレ
築5年以内で差が大きい理由は、高値を狙った売出しが多いため。
売主は、新築時に複数の戸数を割り当てられた地権者や、転売目的で新築を購入した投資家です。
こういった売主は、特に売り急いでいないため、高値で売り出して時間をかけて売ります。
また築26年以上で差が大きい理由は、売主と買主で意識のズレがおきやすいため。
売主は、長年住んだ愛情から高値で売れると考える一方で、買主はリフォーム費用も考え安値で購入したいと考えます。
売主は高く売り出し、買主は安い物件だけを購入するのです。
戸建ての差は15〜50%
同じ様に、中古戸建ての売出し価格と成約価格の差を、築年数毎にまとめるとこちら。
築年数別の売り出し価格と成約価格
(中古戸建て・首都圏・2019年)
グラフの差を表で見やすくまとめるとこちら。
戸建て | 売り出し価格 | 成約価格 | 差 |
---|---|---|---|
築0〜5年 | 4,918万円 | 4,171万円 | 17.9% |
築6〜10年 | 4,564万円 | 3,984万円 | 14.6% |
築11〜15年 | 4,514万円 | 3,745万円 | 20.5% |
築16〜20年 | 4,144万円 | 3,485万円 | 18.9% |
築21〜25年 | 3,933円 | 3,023万円 | 30.1% |
築26〜30年 | 3,667万円 | 2,453万円 | 49.5% |
築31年〜 | 2,846万円 | 2,062万円 | 37.9% |
中古戸建てでは、築年数が20年以上で売出し価格と成約価格の差が大きくなることが分かります。
築20年超では買主とのイメージのズレ
築20年以上で差が大きい理由として、売主と買主のイメージのズレがあります。
築20年超の戸建てでは、売主はまだまだ住めると思う一方で、買主はリフォーム費用を考え、安くないと買いません。

しかしマンションも戸建ても、売り出し価格と成約価格は全然違うんだね…。
こんなに値引きして売ってるの?

値引きでなく、売り出した物件の半分以上は、売れてないからだよ。
実は売り出し価格のデータに含まれる半分は、売れ残りなんだ。
【9割が知らない事実1】 売り出した半分以上は売れていない
実は中古不動産の半数以上は、売り出しても売れずに、売り止めています。
なぜなら売主の中には、試しに高値を狙って売り出してみた人が多いため。
首都圏の成約率を築年数別にまとめるとこちら。
中古マンションの築年数別成約率(首都圏・2019年)
中古戸建ての築年数別成約率(首都圏・2019年)
これを見ると、マンションも戸建ても成約率は半数以下で、築年数が古くなるほど成約率が下がることが分かります。
このグラフはあくまでレインズに登録されたデータなので、実際にはもう少し成約率は高くなりますが、それでもせいぜい半分程度。
実際には、売りに出された物件の、半分以上が売れていません。

えー! 半分以上が売れてないの!
実際に売れた物件だけだと、売り出し価格と成約価格の差はどのくらいのなの?

実際に売れた物件では、10%も差がないよ。
【9割が知らない事実2】 売れた物件の差は10%未満
売れた物件では、売り出し価格と成約価格はほぼ同じで、その差は10%もありません。
正式には『価格開差率』と呼ぶ
実際に売れた成約物件の売り出し価格と成約価格との価格差を、正式には「価格開差率」と呼びます。
価格開差率 = (成約価格ー売り出し価格)÷売り出し価格
売り出し価格より成約価格が安いことが多いので、価格開差率はマイナスの数値になります。
価格開差率は-2.2〜-7.8%
価格開差率の統計は少ないのですが、2015年に近畿レインズがまとめたデータがあります。
築年数と価格開差率(2015年近畿圏)
近畿レインズよると、マンションも一戸建ても、築年数が古くなるほど価格開差率も拡大。
つまり、買主が価格交渉によって値下げしているということが分かります。
その一方で、開差率が0%と「値引きなしの物件」があるのも事実。
マンションも戸建ても3割以上が値引きなし
マンションでは32.1%、一戸建てでは37.9%が値引きなしで成約していました。
開差率ごとの成約件数分布
実際に売れた物件では、売り出し価格と成約価格の差『価格開差率』は、大きな差が無いと分かります。

そうか、売れた物件の売り出し価格は、成約価格とほぼ同じってことだね。
じゃあ、売り出し価格を決めるときは、成約価格を元に決めたら良いの?

そうだね。基本は成約価格から決めるんだ。
次は売り出し価格の決める手順を詳しく解説しよう。
- 売り出し価格の半分は売れ残り。
- 売れた物件の売り出し価格は、成約価格とほぼ同じ。
売り出し価格の決め方
不動産の売り出し価格を決める手順はこちら。
- 査定価格から相場を把握する
- 今の競合の売り出し価格を確認する
- 希望する売却期間と価格で最終決定する
それぞれ解説します。
手順1. 査定価格から相場を把握する
売り出し価格を決めるために、まず不動産会社に無料査定を依頼して、査定価格から相場を把握します。
不動産会社はレインズの成約価格を元に、『取引事例比較法』という方法で、価格を査定。
取引事例比較法では、あなたの家の近隣で、あなたの家に類似した成約事例を1〜3件選んで、あなたの家と比較することで成約価格を補正して家の価格を査定します。

じゃあ、どこの不動産会社に査定を依頼すれば良いの?

エリアで売買実績が豊富な不動産会社の方が、査定の精度は高い。
3〜6社に査定を依頼するのが定番だよ。
不動産価格指数(全国)

「不動産価格指数」とは
不動産価格指数とは、純粋に不動産相場の価格変動を見ることができる指数。
国土交通省がヘドニック法という統計計算手法で、年間30万件の不動産売買成約価格から築年数や立地などの余計な要素を取り除き、純粋な価格変動をまとめたもの。
3ヶ月前の売買実績を毎月末に公表。
マンションは、この7年半で52%も値上がりしています。
戸建ては上昇していないように見えますが、これは都心部の戸建てが上昇している分を、地方の戸建ての値下がりが打ち消しているため。
戸建ては立地によって、価格の2極化が進んでいます。
不動産のプロでも査定が難しいため、3〜6社に査定を依頼した方がより確実に相場を把握できます。

エリアで売買実績が豊富な不動産会社なんて知らないよ。

都市部なら大手3社は外せないね。
不動産売却の実績は大手3社が圧倒的
不動産売却の実績では、大手3社が圧倒的です。
売買仲介件数上位をランキングしたものがこちら。
売買仲介件数ランキング上位30社
(2020年3月)
「三井のリハウス」「住友不動産販売」「東急リバブル」の3社は、仲介件数が2万件を超えており圧倒的だと分かります。
都市部の不動産を査定するなら、これら大手トップ3は含めた方が良いでしょう。
早速、これらの大手トップ3社に、それぞれ連絡しても良いのですが、3回も電話するのは面倒かもしれません。
しかし、一括査定サイトの「すまいValue」を利用すれば、わずか数分でこれらの大手トップ3社を含む最大6社にまとめて無料査定を依頼できます。
地方は大手の営業エリア外なので、その他の一括査定サイトを使って、売買実績が豊富な不動産会社を探しましょう。
査定価格から相場を把握できたら、最も信頼できそうな不動産会社に売却を依頼する『媒介契約』を結びます。
この先は、売却を依頼する不動産会社のアドバイスを聞きながら決めると良いでしょう。
手順2. 今の競合の売り出し価格を確認する
相場を把握したら、次に競合の売り出し価格を確認します。
中古戸建てと土地は比較しにくいので、ザックリ調べるだけで良いでしょう。
しかし中古マンションでは、物件同士を比較しやすいため、競合の売り出し価格に大きく影響されます。

相場より高く売れることもあるの?

競合が少ないと、相場より2割以上高くても売れる可能性があるよ。
競合が少なければ、高値売却のチャンス!
競合物件が少ない場合は、相場よりから2割以上高値でも売れる可能性があります。
なぜなら購入する人は、限られたエリアで、予算・広さ・築年数などを絞って探しているため、条件さえあてはまれば、相場より高値でも売れてしまうため。
逆に競合物件が多いと、それらの競合物件より高値に感じる価格で売り出しても、売れにくくなります。
競合物件は、主なポータルサイトで分かりますし、さらに不動産会社にお願いすれば、レインズ内の非公開物件まで分かります。