通行・掘削承諾書とは
「私道に接した不動産を売るには、通行・掘削承諾書が必要?」

通行・掘削承諾書についてお悩みですね。

確かに私道に接した不動産の売却では、通行・掘削承諾書が必要なケースがあります。
しかし取得方法や内容は、専門知識が無いと分からないもの。

そんな通行・掘削承諾書の悩みをスッキリ解決し、手間をかけずに承諾書を取る方法があります。

この記事では、売却で知っておきたい通行・掘削承諾書の知識、取得方法と4つの注意点をまとめました。

また通行・掘削承諾書以外の3つの解決策も解説。

あなたの不動産の私道問題が解決し、不動産売却が成功するために、この記事がお役に立てれば幸いです。

「売却を考えているけど、難しい話は読みたくない…」「手間をかけずにお任せしたい」という方は、この記事にザッと目を通して、まず優秀で信頼できる不動産会社を見つけましょう。
都市部なら、大手トップ3社(三井のリハウス住友不動産販売東急リバブル)に無料査定を依頼して、話を聴き比べるのが定番。一括査定サイト「すまいValue」を使うと、まとめて査定を依頼できます。
地方では大手3社の営業エリア外になるため、NTTグループの一括査定サイトHOME4U、リクルートのSUUMO売却などで地域の実績ある不動産会社3〜6社に無料査定を依頼しましょう。
信頼できる不動産会社が見つかれば、後は相談しながら安心して売却を進められます。

私道と通行・掘削承諾書の基礎知識

まず私道と通行・掘削承諾書について、ザックリと理解しておきましょう。

すでに分かっている方は、読み飛ばして下さい。

私道は私人が所有・管理している道

『私道(しどう・わたくしどう)』とは、私人が所有・管理している道のこと。

私道に対して『公道こうどう』があり、公道は国・都道府県・市町村など公の機関が所有・管理する道路です。

まれに管理だけ公の機関という私道もある

ちなみに私道の中には、まれに「所有は私人」「管理は公の機関(財務省など)」というケースも。

こういった場合は、公道と同じで管理機関の担当窓口に申請すれば掘削できます。

家博士家博士

普段使う道路は、ほとんどが公道だよ。

通行・掘削には所有者の承諾が必要

私道を通行したり、掘削するためには、一般的に私道所有者の承諾が必要です。

承諾は口頭だけでなく、書面に署名押印し『通行・掘削承諾書』として残します。

ハウスハウス

通行は分かるけど、掘削は何で必要なの?


家博士家博士

新しく建物を建てるとき、水道・ガス・下水の工事で道路を掘削するからだよ。
通行・掘削承諾書が無いと、売れないこともあるんだ。

通行・掘削承諾書が無いと売れないことも

私道しか接道していない土地は、私道の通行・掘削承諾書が無いと売れない恐れがあります。

なぜなら次のリスクがあるため。

通行・掘削承諾書が無い不動産のリスク

  • 水道やガス工事ができず、建物の建築・建替えができないリスク。
  • 建築確認が通らず、建物の建築・建替えができないリスク。
  • 自動車が通れないリスク。
  • 私道所有者に通行料を支払い続けるリスク
  • 上記のリスクから不動産の資産価値が下がるリスク
  • 資産価値が下がることで、買主がローンを使えないリスク

接道については、こちらで詳しく解説しています。


ハウスハウス

私道って大変なんだね。


家博士家博士

私道でも持分があれば大丈夫だよ。

私道は持分が有ると無しで大違い

私道に接した不動産の売却は、『私道の持分』で大きく違います。

持分があれば売却に問題ない

私道の持分がある場合、つまり私道の所有権を一部持っている場合は、まず売却に問題ありません。

なぜなら私道の管理は共有者が協力して行うため、互いの通行や掘削を互いに認め合うことが一般的だから。

また多くの場合、分譲時に通行・掘削承諾書を交わしています。

(ちなみに共有持分でなく分筆持分(相互持合型私道)の場合は、地役権が設定されるか、暗黙の地役権が認められることが多いでしょう。【参考】法務省・所有者不明私道への対応ガイドライン27ページ

持分ありでも、承諾書はある方が安心

もし持分はあっても過去に通行・掘削承諾書を交わしていない場合は、通行・掘削承諾書があった方が良いでしょう。

なぜなら共有者とのトラブル、特殊な条件だと問題になる恐れもあるため。

通行・掘削承諾書を交わしておけば、金融機関や購入者に安心してもらえます。

あなたの不動産が新たに取得するべきかは、不動産会社と相談して決めると良いでしょう。

家博士家博士

いずれにしても、他の私道所有者との関係を円満に維持するために、事前にお知らせだけはしておいた方が良いよ

問題になる共有者とのトラブル、特殊な条件とは
例えば、今まで自動車が通行していない私道だと、自動車を通行するために互いに承諾書を交わす必要があります。
持分があっても、他の所有者と売却前に交渉した方が良いでしょう。
この様な私道の持分と通行の問題は過去の判例も様々で、裁判しないと分からないものもあるほど。
複数の不動産会社に意見を聞き、詳しい担当者を見つけましょう。

法務省のガイドラインもある

共有私道の工事については法務省のガイドラインもあります。

あくまでガイドラインで法的な縛りはありませんが、判断の基準にはなるでしょう。
【参考】法務省・共有私道の保存・管理等に関する事例研究会最終とりまとめ

持分がないと通行・掘削承諾書が必要

無いと資産価値が大きく下がる

私道の持分がない不動産は、売却するために通行・掘削承諾書が必要です。

もし通行・掘削承諾書がとれない場合、その不動産の売却は難しくなるでしょう。

私道の持分が無く通行・掘削承諾書もとれないと、不動産の資産価値が大きく下がってしまい、ローン審査にも通りません。

民法改正でライフライン設置は可能になりつつある

2023年4月から民法改正によって、ライフライン(電気・ガス・上下水道等)の設置は、掘削承諾書なしでも可能になりつつあります。

まだ実務レベルでは普及しつつある段階で完全に変わっていませんが、今後は掘削承諾書が不要になる可能性があるでしょう。

詳しくは後で解説します。

ハウスハウス

私道の持分があればOK。無ければ通行・掘削承諾書が必要なんだね。
なんとなく分かったよ。


家博士家博士

じゃあ次に、通行・掘削承諾書について解説しよう。

通行・掘削承諾書の取得と4つの注意点

取得は不動産会社に依頼する

通行・掘削承諾書の取得は、不動産の売却を依頼する不動産会社にお任せするのが一般的です。

もちろん私道の所有者と普段からお付き合いがあり、関係が良好であれば、直接自分で依頼しても良いでしょう。

ただし自分で依頼する場合も文面や書式は不動産会社に作成してもらった方が安心です。

なぜなら、通行・掘削承諾書には4つの注意点があるため。

通行・掘削承諾書の4つの注意点

通行・掘削承諾書の4つの注意点

  1. 承諾書の文面は、金融機関が承認する内容にする
  2. 一度作成した文面は、後から修正できない
  3. 私道の所有者から何らかの条件を求められる恐れもある
  4. 場合によっては測量・境界確定が必要

文面作成には専門知識が必要

通行・掘削承諾書は、現況に合わせて法的に漏れが無い文面でなくてはいけません。

例えば売買後も有効な第三者継承、セットバックの有無、境界の確定など専門知識が必要です。

法的に問題があれば売買後トラブルになりかねず、買主が金融機関の住宅ローン審査で落ちてしまいます。

ハウスハウス

確かに専門家に任せた方が安心だね。
でも費用がかかるの?


家博士家博士

基本は不動産会社の仲介手数料に含まれる。
でも特殊なケースは追加費用がかかる場合もあるね。

費用は基本無料だが追加費用があることも

通行・掘削承諾書の取得を不動産会社に依頼した場合、その費用は不動産売却の仲介手数料に含むのが一般的。

通行・掘削承諾書の取得費用は、実質無料です。

ただし場合によっては、追加費用がかかることも。

費用がかかるケース1. 私道所有者への通行料・償金・ハンコ代

承諾書をとる際に、私道の所有者から通行料・償金・ハンコ代を請求される場合があり、金額が常識の範囲内であれば支払うことになります。

この金額の目安は、条件によって様々なので、一概にはいえません。

私道の所有者が舗装の補修や固定資産税などを負担している場合もあります。

不動産会社と相談して、所有者と交渉しましょう。

費用がかかるケース2. 取得費用が高額な場合

まれに相続によって私道の共有者が数十人と多くなり、かつ住所が全国に及ぶことも。

こういった特殊なケースでは、承諾書の取得に膨大な手間と費用がかかるため、不動産会社に実費を支払うことになります。

なぜなら不動産会社の仲介手数料は、宅建業法で上限が決まっているため。

仲介手数料の上限=売買価格×3%+6万円+消費税
※売買価格が400万円以上の場合

この費用の中には、売却活動や売買契約書の作成費用が含まれているため、どうしても限界があるのです。

仲介手数料については、こちらで詳しく解説しています。

費用がかかるケース3. 測量・境界確定が必要な場合

私道の位置や境界が不明瞭な場合は、測量・境界確定が必要。

測量・境界確定の費用は、作業量により大きく幅があり、約10万〜90万円かかります。

測量・境界確定については、こちらで詳しく解説しています。

不動産会社の選び方

通行・掘削承諾書など私道の面倒な問題は、不動産の専門家にお任せした方が確実で安心です。

まず私道の問題を安心して任せられる『優秀で信頼できる不動産会社』を選ぶことに集中しましょう。

3つのステップで選ぶ

不動産会社を選ぶ手順は、次の3つのステップ。

不動産会社を選ぶ3つのステップ

  1. エリアで売却実績が豊富な不動産会社に絞る
  2. その中から3〜6社に無料査定を依頼する
  3. 査定結果と私道の質問に対する回答から、最も良さそうな不動産会社を1社選ぶ

ハウスハウス

なんで3〜6社に無料査定を依頼するの?


家博士家博士

担当者の当たり外れもあるし、比較するには最低3社は必要だからさ。
あとじっくり話を聞くには多くてもせいぜい6社程度が現実的だよ。

多めに査定を依頼して、話を聞く数を絞る方法もあり

査定を依頼するときは、とにかく数多くの不動産会社へ依頼して、査定結果で3〜6社に絞って話を聞いても良いでしょう。

なぜなら、不動産会社の中には、手間がかかる私道の不動産を避けるところもあるため。

そういった不動産会社は、無料査定を依頼しても査定を出さなかったり、明らかに安値の査定価格を提示します。

査定価格が明らかに安かったり、質問をしてもやる気がなさそうな不動産会社は話を聞く対象から外して、3〜6社を選ぶと良いでしょう。

ハウスハウス

売却実績が豊富な不動産会社はどこなの?


家博士家博士

都市部なら大手3社が強い。
売却の予定があるなら、両手仲介の無いSRE不動産(旧ソニー不動産)など大手以外にも話を聞いた方が良いよ。


実績は大手3社が強い

売買仲介件数ランキング上位36社
(2024年3月)

不動産会社の売買仲介件数ランキング2024年3月

不動産売却の実績は、大手3社に偏っています

三井のリハウス住友不動産販売東急リバブルの3社は、仲介件数が2万件を超えており、大手の中でも圧倒的。

都市部で査定を依頼するなら、これら大手3社を中心に考えると良いでしょう。

ハウスハウス

大手3社は別格だね。


家博士家博士

3社もそれぞれ特徴があるから、解説しよう。

【大手1】三井のリハウス
38年連続で売買仲介件数1位

三井のリハウス

  • 店舗数 277店舗
    (首都圏174、関西圏45、中部圏25、札幌9、東北6、中国9、九州9)
  • 三井のリハウスは、38年連続で売買仲介件数1位と業界を代表する不動産会社。

    独自の査定システムは精度が高く、売主の約76%がほぼ提案価格(提案の95%以上)で成約しています。


    多くの購入希望者を抱えるため早く売れることも強みで、売主の65%が2ヶ月以内に成約するほど。

    また担当者のレベルが高いことにも定評があり、顧客満足度は96%と高評価です。

    家博士家博士

    業界を代表する会社だから、初めての売却ならまず話を聞いてみると良いよ。
    他と比較する基準にもなるからね。

    三井のリハウスの無料査定はこちらから
    三井のリハウス

    【大手2】住友不動産販売
    熱心な営業スタイルに定評

    すみふの仲介ステップ

    • 店舗数 203店舗
      (首都圏114、関西圏55、中部東海10、北海道8、東北3、中国7、九州6)

    住友不動産販売(すみふの仲介ステップ)は、営業マンの熱心な営業スタイルに定評があります。

    現在の購入希望者の登録数も公開しており、常に2万人を超える希望者が登録。

    自社ホームページの月間来訪者数は300万件以上、登録物件数は2万8千件以上と十分なスケールメリットもあります。

    家博士家博士

    スマートでクールな営業より人情深く熱心な営業が好みなら、他より出会える可能性が高いかも。


    【大手3】東急リバブル
    東急沿線や大型案件に強み

    東急リバブル

    • 店舗数 220店舗
      (首都圏141、関西圏45、名古屋11、札幌10、仙台6、福岡7)

    東急リバブルは東急電鉄系の不動産会社ですが、全国に店舗を持つのが特徴。

    東急電鉄沿線はもちろん、法人営業や投資物件にも強みを持っています。

    大手にまとめて査定を依頼するなら「すまいValue」

    大手3社にまとめて無料査定を依頼するなら、一括査定サイトの「すまいValue」が便利。

    すまいValueは、大手上位6社(三井のリハウス住友不動産販売東急リバブル野村の仲介+小田急不動産三菱地所の住まいリレー)が共同運営する一括査定サイトです。


    すまいvalue

    すまいValueの公式サイトはこちら
    すまいValue

    ハウスハウス

    とりあえず大手3社に査定を依頼すれば良いの?


    家博士家博士

    売却予定なら個人の相性もあるから、大手3社以外と比較した方が良い。
    首都圏・関西圏ならエージェント制のSRE不動産(旧ソニー不動産)、それ以外なら地域で実績No.1の会社にも査定を依頼しよう。

    SRE不動産(旧ソニー不動産)
    売主だけを担当するエージェント制

    SRE不動産
    大手と比較するならSRE不動産(旧ソニー不動産)が良いでしょう。

    なぜならSRE不動産は、大手で問題になりがちな両手仲介が無いため。
    (※両手仲介とは売主と買主を同じ不動産会社が担当すること。大手は顧客を多く抱えるため、自然と両手仲介が多くなる。)

    SRE不動産は、業界初のエージェント制で売主だけを担当。
    買主は無数にある他の不動産会社が積極的に探します。

    結果として、大手にも劣らない販売力で、早く高く売れやすいことが最大のメリット。

    ただし営業エリアは首都圏・関西圏限定です。

    家博士家博士

    SRE不動産は業界でも両手仲介無しで知られているから、他社が競って営業してくれる。
    大手と話を聴き比べて、自分に合ってる方を選ぶと良いよ。

    SRE不動産(旧ソニー不動産)の公式サイトはこちら
    SRE不動産

    その他エリアは地域No.1を探す

    大手やSRE不動産の営業エリア外なら、地域で実績No.1の不動産会社を中心に選びましょう。

    実績No.1の不動産会社は、実績をアピールしているのですぐに分かります。

    不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトをいくつか併用すると良いでしょう。

    全国対応の主要な一括査定サイトとして次があります。

    その他、主要な一括査定サイトはこちらでまとめています。

    ハウスハウス

    不動産会社にはどんな質問をすれば良いの?


    家博士家博士

    質問するためには、多少は基礎知識があった方が良いね。
    私道の持分と通行・掘削承諾書について知っておけば、相談しやすいよ。

    更に詳しく知りたい人のための知識

    建築基準法上の道路になる

    私道でも、『建築基準法上の道路』として認められます。

    『建築基準法上の道路』として認められると、その私道に間口2m以上接道する土地には建物を建築可能に。

    もし私道が『建築基準法の道路』でなければ、その土地は『再建築不可』となり売却が難しくなってしまいます。

    袋地は最低限の通行の権利あり

    他の土地に囲まれて公道に接していない土地を、袋地と言います。

    一方、袋地を囲んでいる土地のことは囲繞地(いにょうち・いじょうち)と言います。

    囲繞地は最低限の通行ができる

    袋地の所有者は公道に出るために、囲繞地を通行できるとされています。

    これらは民法第201条、211条、212条、213条に規定されている内容です。

    民法第210条

    1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行する事ができる。
    2. 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

    民法第211条

    1. 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
    2. 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

    民法第212条

    • 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。

    民法第213条

    • 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを有しない。
    • 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

    通行は最低限のみで通行料がかかることも

    ただし囲繞地の通行権は最低限の権利しか認められていません。

    そのため「接道義務を満たすために幅を2m以上にしたい」「車の通行ができるようにしたい」といった要望が認められるかどうかは微妙なところ。

    過去の判例でも、判断は分かれているため、裁判をしてみないと結果は分かりません。

    また、囲繞地の所有者が請求すれば、通行料を支払う必要があります。

    【参考】公益財団法人不動産流通推進センター・位置指定道路と囲繞地通行権

    位置指定道路でも勝手に通れない

    私道と同じで所有者は制限できる

    位置指定道路でも私道なので、近隣の第三者が通行する権利(通行地役権)が保証されません。

    また道路所有者は自動車の通行を制限できます。

    位置指定道路とは

    位置指定道路とは建築基準法上の道路の一つで、特定行政庁(都道府県または市町村)が道路位置を指定した私道のこと。
    建築基準法42条1項5号

    位置指定道路では、建築基準法第44条・第45条によって、道路内に建築物を建てたり、勝手に変更廃止できません。

    建築基準法第44条(道路内の建築制限)
    建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない。
    第45条(私道の変更又は廃止の制限)
    私道の変更又は廃止によって、その道路に接する敷地が第43条第1項の規定又は同条第2項の規定に基く条例の規定に抵触することとなる場合においては、特定行政庁は、その私道の変更又は廃止を禁止し、又は制限することができる。

    位置指定道路は、大きな一つの土地を分割して分譲し、複数の住宅を建てた開発地に多くあります。

    なぜなら建物を建てるためには、各敷地が接道義務(建築基準法で定められた道路に2m以上接する)をクリアする必要があるため。

    土地の開発者が建物を建てる許可条件として、位置指定道路を設けます。

    だから位置指定道路で多いのは、道路を分筆して分譲地の購入者がそれぞれ所有し、所有者だけ通行できるケースです。

    公衆用道路でも勝手に通れない

    位置指定道路で登記上の地目が『公衆用道路』でも、やはり勝手に通れません

    なお固定資産税上で公衆道路であれば、固定資産税、都市計画税、不動産取得税が非課税です。
    【参考】公益財団法人不動産流通推進センター・位置指定道路の通行権

    一定の公共性は認められる場合も多い

    私道でも一定の公共性が認められ、第三者の通行の自由が認められる場合もあります。

    特に位置指定道路など建築基準法上の道路に該当し、原則として変更や廃止できない場合。

    こうした道路はたとえ私道でも、通行地役権が認められやすいのです。

    【参考】黙示の通行地役権が認められた事例

    ちなみに私道の補修費用は原則所有者負担ですが、一定の公共性が認められる場合は補修費用を補助する自治体も増えています。

    この場合は「所有者全員の同意」が条件になることがあります。

    民法改正でライフライン設備の設置は可能になりつつある

    2023年4月施行の改正民法で明確化

    2023年4月施行の改正民法により、ライフライン設備が囲繞地に設置・使用できると明確化されました。

    今までは下水だけが下水道法第11条で規定されていた権利ですが、民法第213条の2で明確化されています。
    【参考】法務省民事局 民法改正と「共有私道ガイドライン」の改訂について

    民法第213条の2

    1. 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

    下水道法第11条

    1. 前条第一項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとって最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。

    まだ実務レベルでは移行段階

    ただしライフライン設備の設置については、まだ移行段階。

    例えば一部の自治体では、「私道所有者の掘削承諾書」の代わりに「利害関係者から意義が出た場合、申込者の責任で解決する旨の誓約書」を提出すれば水道を設置できます。

    しかし一部の自治体なので、あなたの自治体がどうなのかは問い合わせた方が良いでしょう。

    エリアごとの最新情報は不動産会社が詳しく把握しています。

    ハウスハウス

    私道の所有者が通行・掘削承諾書を断ったらどうなるの?


    家博士家博士

    できれば避けたい方法だけど、裁判や調停をすれば通行・掘削が認められる可能性は高い。
    でも将来に遺恨を残すと、色々トラブルになる恐れがある。
    裁判や調停をせず、通行・掘削承諾書をもらう以外の方法が3つある。

    通行・掘削承諾書以外の3つの解決策

    通行・掘削承諾書以外の解決策としては、主に3つの方法があります。

    方法1. 持分を購入する

    私道の所有者から持分を売ってもらえば、共有持分のある不動産として売却できます。

    購入費用と、長期的に私道の舗装など維持管理費用の負担がありますが、売買をスムーズできるメリットの方が大きいでしょう。

    購入する持分の大きさ(面積)は関係ありませんので、所有者の納得する範囲で最小の面積にします。

    購入方法には、次の2種類があります。

    1. 私道を分筆して、そのうちの1筆を売買する方法
    2. 私道全体の共有割合を持分として売買する方法

    それぞれ手順を解説します。

    (1)私道を分筆して、そのうちの1筆を売買する方法

    手順

    1. 私道所有者と売買に関する合意をし、代金や方法、売買対象の範囲を決める
    2. 売買対象となる部分の位置を決め、測量を手配
    3. 対象となる部分を分筆するため、その部分と隣接する土地所有者に境界立会を求める
    4. 境界位置が確定し測量を終えたら、分筆の手続きをする
    5. 分筆完了後に売買契約、引き渡し、決済

    なお、売買契約のタイミングは一番最初でも良いですが、この場合は1〜4について特約等に記載しておく必要あり。

    測量が長引いたり分筆が困難なケースもあるので、白紙解約についての条項を記載しておくとトラブル防止になります。

    (2)私道全体の共有割合を持分として売買する方法

    手順

    1. 私道所有者と売買に関する合意をし、代金や方法、売買対象の共有割合を決める
    2. 売買契約、引き渡し、決済

    ハウスハウス

    どちらの方法がいいのかな?
    手続き的には、共有割合を持分として売買した方が簡単そうだけど・・・


    家博士家博士

    それは私道所有者との話し合い次第。
    不動産会社と相談しながら進めていこう。
    あと私道を所有すると費用負担があるかもしれないよ。

    私道を所有すると補修費用や税金の負担があることも

    私道を所有すると、定期的な舗装の補修費用や税金(不動産取得税・固定資産税・都市計画税)がかかる場合もあります。

    ただし第3者が通り抜ける公衆用道路であれば非課税で、補修費用には自治体の補助金があります。

    【参考】国税庁・No.4622 私道の評価

    また共有名義であれば、マンションの修繕積立金の様に積み立てる場合もあります。

    いずれの場合も不動産会社が調べてくれるので、お任せすればよいでしょう。

    方法2. 通行地役権を設定する

    他人の土地を通行するために利用できる権利

    2つ目の方法は、通行地役権(民法280条以下)を設定すること。

    通行地役権とは「通行」という目的のために設定される地役権です。

    地役権は、自分の利便性を高めるために他人の土地を利用できる権利のことを言います。

    この場合は私道所有者との間で「地役権設定契約」を締結すればOK。

    通行料の支払いなど地役権の対価が定められますが、法律上は無償でも可能です。

    通行権として最も効力が強い

    通行地役権は、通行権として最も効力が高いとされています。

    他に通行権としては、

    • 賃貸借契約による通行権
    • 使用貸借契約による通行権
    • 近隣のよしみといった行為で通行を認める
    • 囲繞地(いにょうち)通行権

    などがあります。

    【参考】私道の通行権はどこまで保護されているか

    登記は承役地に

    地役権では自分が所有している土地を要役地(ようえきち)、利用される側の他人の土地を承役地(しょうえきち)と呼び、地役権の設定登記は承役地にします。

    ハウスハウス

    地役権設定契約を結んでいれば、要役地を売却した場合でも買主は通行地役権を引き継げるの?

    家博士家博士

    基本的に買主も通行地役権を継承できる。
    ただ承役地が売却された場合、契約だけだと新しい所有者に通行地役権を主張できないリスクがある。だから通行地役権の設定登記をしておく方が安心なんだ。

    方法3. 私道所有者へ売却する

    3つ目の方法は、私道所有者へ自分の土地を売却する方法です。

    もちろん価格の折り合いがつき、私道所有者がOKであればの話ですが。

    買い手を探す必要もなくなるため、比較的短期間で売却できるメリットもあります。

    まとめ

    私道に接する不動産を売却する場合、私道の持分によって違い

    • 共有持分あり:特に問題なし(ただし共有者の了解は必要)
    • 共有持分なし:通行・掘削承諾書が必要

    通行・掘削承諾書は、不動産会社に依頼するのが一般的。

    私道所有者との関係が良好であれば、直接交渉しても良いですが、文面は不動産会社に用意してもらいましょう。

    承諾書の費用として、私道所有者から通行料や償金を請求されることもあり、金額が常識の範囲内なら支払うしかありません。

    手数料は不動産会社の仲介手数料に含まれるのが一般的ですが、測量・境界確定など別途費用がかかる場合もあります。

    通行・掘削承諾書以外の解決策もあるので、不動産会社と相談して最適な方法を選んで下さい。


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