「安心R住宅は、家が売れやすくなる?」
家の売却で『安心R住宅』を取得するかお悩みですね。
そんなあなたに、安心R住宅のリアルな実情をまとめました。
安心R住宅は、売却でメリットがありますが、注意点もあります。
この記事では、安心R住宅の概要とメリット、注意点について解説しました。
この記事を読めば、あなたが安心R住宅を取得するべきか、スッキリ分かるでしょう。
あなたの家の売却が成功するために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
安心R住宅は国が積極的に進めている制度
安心R住宅は、2017年(平成29年)12月にスタートした制度。
目的は、中古住宅を買う人を増やし、増え続ける空き家を減らすこと。
ただし国土交通省が積極的に推進しているものの、今のところ普及は限定的です。
3つの要件をクリアする
安心R住宅を取得するためには、3つの要件(安心・きれい・分かりやすい)が必要です。
- 1. 基礎的な品質があり『安心』
- 新耐震基準等に適合している。
専門家の検査(インスペクション)の結果、構造上の不具合・雨漏りが認められない。 - 2. リフォームの実施又はリフォームプラン付きで『きれい』
- リフォーム工事が実施されているか、費用を含むリフォームプランがついている。
外装、主な内装、水回り状況の写真を閲覧できる。 - 3. 情報が開示されていて『分かりやすい』
- 今まで実施した点検や補修の内容、どんな保険・保証がつくのかが分かる。
確かに、こうした情報が分かると、買主は安心感があるね。
なお、安心R住宅の「R」は「Reuse(リユース)」「Reform(リフォーム)」「Renovation(リノベーション)」を意味します。
【参考】国土交通省・安心R住宅
なんだかすごい良さそうな制度だけど、どうすれば安心R住宅に認定されるの?
不動産会社に依頼すれば、手配してくれるよ
ほぼ全ての不動産会社で安心R住宅は利用できる
今は実質ほぼ全ての不動産会社で、安心R住宅を利用できます。
決められた基準をクリアしていると不動産会社が確認できれば、広告などで安心R住宅のマークを付けます。
国の登録事業者団体に所属していることが条件
安心R住宅の制度が利用できるのは、国からの審査を受け登録された事業者団体に加盟している不動産会社のみ。
といっても、不動産会社であれば、多くが全宅連やその他いずれか団体に所属しているため、ほぼ全ての不動産会社で安心R住宅を利用できます。
2023年10月現在で13団体が制度に登録しています。
- 一般社団法人優良ストック住宅推進協議会(スムストック)
- 一般社団法人リノベーション協議会
- 公益社団法人全日本不動産協会
- 一般社団法人石川県木造住宅協会
- 一般社団法人日本住宅リフォーム産業協会(JERCO)
- 一般社団法人住まい管理支援機構(HMS機構)
- 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合(全宅連)
- 一般社団法人全国住宅産業協会(全住協)
- 一般社団法人ステキ信頼リフォーム推進協会
- 一般社団法人耐震住宅100パーセント実行委員会
- 一般社団法人住宅不動産資産価値保全保証協会
- 一般社団法人日本木造住宅産業協会(木住協)
- 一般社団法人安心ストック住宅推進協会(安心ストック)
不動産会社にお願いするだけなら簡単だね。
でも費用はかかるんでしょ?
まあ、その前にまず安心R住宅のメリットから知っておこう
安心R住宅の2つのメリット
安心R住宅のメリットとして、次の2点が挙げられます。
- 家が売れやすくなる
- 比較的簡単に取得できる
それぞれ解説します。
メリット1. 家が売れやすくなる
安心R住宅に認定されると、家が売れやすくなります。
ただし効果は限られる
ただし効果は限られ、少しだけ売れやすくなる程度。
場合によっては効果がほとんど無いこともあります。
詳しくは『安心R住宅の注意点』で解説します。
家が売れやすくなる2つの理由
安心R住宅で家が売りやすくなる理由として、次があります。
- 安心・きれい・わかりやすい
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入できる
この他に、2021年までは「木造築20年超(マンション築25年超)でも住宅ローン控除が受けられること」がありました。
しかし2022年税制改正で築年数制限が解除され、新耐震なら住宅ローン控除ありになったため、このメリットは無くなっています。
【参考】国土交通省・住宅ローン減税
2つのメリットをそれぞれ解説します。
売れやすくなる理由1. 安心・きれい・わかりやすい
安心R住宅で家が売れやすくなる理由は、やはり安心・きれい・わかりやすいので買主が魅力を感じること。
特に安心感が大きく、その要因はインスペクションの合格でしょう。
資格者による住宅の健康診断のこと。
主に目視で、住宅の基礎や外壁等のひび割れ・雨漏りなど不具合の有無、劣化状況を調べます。
あくまで目視なので、見て分かる範囲の不具合のみの診断になります。
しかしインスペクションには、問題点もあります。
インスペクションは知名度が低く、重大な欠陥を見逃す恐れもある
2018年4月から売買時にインスペクションの説明が義務化されましたが、2019年9月時点でまだ実施率4%と低迷。
普及していないことは、ポジティブに考えると、インスペクションは競合との差別化につながり、売れやすくなる効果があります。
一方でネガティブに考えると、多くの買主はインスペクションを知らないため、売れやすくなる効果は限られます。
またインスペクションは目視だけの点検なので、隠れた部分(柱と基礎の接合部など)は、重大な欠陥があっても分かりません。
インスペクション済みだからといって、重大な欠陥が無いと保証されるわけではないのです。
インスペクションって、目視だけなんだね。
でも何も無いよりは、インスペクション済みの方がマシだけどね。
インスペクションの説明が宅建業法改正で義務化され、注目されています。売り主の立場でインスペクションについてどう対応するべきか、最新の状況をまとめました。
売れやすくなる理由2. 既存住宅売買瑕疵保険に加入できる
インスペクションに合格すると、既存住宅売買瑕疵保険(きぞんじゅうたくばいばいかしほけん)に加入できます。
ただし安心R住宅に認定されなくても、インスペクションに合格すれば、既存住宅売買瑕疵保険は加入できます。
売買引き渡し後に保険対象部分に瑕疵(不具合)が見つかった場合に、補修費用等がカバーされる保険。保証期間は1年〜5年。保証対象は、構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分。オプションで給排水設備・電気設備が追加できます。インスペクションに合格する必要があります。
一般的に家の売買では、引き渡しから3ヶ月程度の『瑕疵担保責任』を設け、この期間中に買主が気付いた瑕疵(かし)は、売主の負担で補修します。
このため、既存住宅売買瑕疵保険では、売主と買主に次のメリットがあります。
- 売主は通常3ヶ月の瑕疵担保責任がカバーされる。
- 買主は瑕疵保証期間が通常3ヶ月から1〜5年に長くなる。
これはスゴく良い保険だね。
まぁ、無いよりは良い程度かな。
実は大手不動産会社が独自に用意する保証の方が手厚いし、認知されているからね。
大手不動産会社の建物保証・設備保証の方が効果あり
一部の大手不動産会社は、さらに設備もカバーした『建物保証・設備保証』を独自に用意しています。
この保証は、大手不動産会社に売却を依頼すると、一定の条件さえ満たせば無料で保証されるもの。
大手の保証の方が、買主によく知られており保証が手厚いため、家が売れやすくなる効果は高いのが現実です。
詳しくはこちらで解説しています。
既存住宅売買かし保険は売却に有利ですが、2022年改正で税制メリットは消滅。さらに4つの注意点があり、無料で利用できる大手の保証の方が利用者は多いのが現実です。詳しく解説します。
メリット2. 比較的簡単に取得できる
安心R住宅は、比較的簡単に取得できる点もメリットです。
耐震基準は2000年基準の前でOK
安心R住宅で必要な耐震性は、1981年6月1日以降の「新耐震基準」。
木造建築物は2000年に耐震基準が大きく改正されていますが、この2000年基準は満たしていなくても取得できます。
もし新耐震の戸建てを売る予定で、2000年の耐震基準に適合しないなら急いだ方が良いかもしれません。木造戸建ての売却で知っておきたい「2000年基準」についてまとめました。
点検記録等も『不明』でOK
安心R住宅で必要な点検記録等ですが、求められているのは「情報開示」だけ。
もし書類が無くても、「不明」と書けば審査に通ります。
不明で良いんだ…
リフォームもプランを付けるだけ
安心R住宅で必要なリフォームですが、リフォーム工事を実施する必要はなく、プランを付けるだけでOK。
購入者このプラン通りにリフォームする必要はありません。
耐震基準適合証明やインスペクションも業者次第
安心R住宅に必要な他の条件、例えば耐震基準適合証明書やインスペクションも、業者によっては判断がユルい場合があります。
これらの判断は、厳格な基準が設けにくいため、どうしても業者によって差が出てしまうのです。
なんだか安心R住宅って、かなりユルい基準なんだね。
せっかく良い制度なんだけど、抜け道が多くて、今後どれだけ普及するか心配だね。
次に注意点を解説しよう。
安心R住宅の3つの注意点
安心R住宅には次の注意点があります。
- まだ買主の認知度が低く、今後も不明
- インスペクションなどが必要
- 補修工事や耐震改修が必要になる恐れ
それぞれ解説します。
注意点1. まだ買主の認知度が低く、今後も不明
安心R住宅は制度開始が2017年12月からと日が浅く、まだ認知度が低いのが現状です。
利用はわずか0.2%
安心R住宅で売り出された物件は、中古住宅全体のわずか0.2%しかありません。
国土交通省の発表によると、令和4年度に安心R住宅の提出は1,769件。
一方で、同期間に全国のレインズに新規登録された中古住宅は84万9,757件なので、全体の0.2%だけでした。
累計でも、安心R住宅は6,913件しか利用されていません。(2023年3月現在)
制度の利用が、なかなか進んでいないことが分かります。
不動産ポータルサイトで絞り込み条件になっていない
例えばSUUMOなどの不動産のポータルサイトで、絞り込み条件の中に「安心R住宅」はありません。
SUUMOなど不動産のポータルサイトでは
「住宅ローン控除が利用できる」
「瑕疵保険付き」
「修繕・点検の記録あり」
など、条件を絞り込んで検索できるようになっています。
条件に安心R住宅が含まれないのは、「安心R住宅が良い」と思って探す買主が少ないことを反映しています。
簡単に取得できるため信頼性が低い
また安心R住宅のメリット「簡単に取得できる」ことも、見方を変えると「信頼されない」ことになりかねません。
たとえば点検記録も、買主が知りたいのは単なる書類の有無ではなく、その内容のはず。
このように改善の余地がある制度なので、今後に期待したいところです。
今後もどうなるか不明
安心R住宅は良い制度ですが、このまま認知度が低迷しかねません。
なぜなら過去に国が進めた制度の中には、認知度が低迷して自然消滅した制度も多くあり、同じ状況になりかねないため。
国の制度で認知度が低いものがあるの?
2002年から始まった既存住宅の住宅性能表示制度は、認知度が低くほとんど利用されていないんだ
既存住宅の住宅性能表示制度の様に低迷する恐れも
住宅性能表示制度は新築住宅では利用実績が伸びているものの、既存住宅についてはかなり低迷しています。
2002年度から2012年度までの12年間で、一戸建ては1,004戸、共同住宅等では2,429戸(36棟)しか利用されていません。
安心R住宅も、このまま低迷する恐れがあります。
民間の「スムストック」は大手の信頼がある
安心R住宅と同じ様な民間の基準として「スムストック」があります。
スムストックは大手ハウスメーカ10社が連携する中古住宅の基準。
スムストック自体も、一般にはあまり知られていません。
しかしスムストックの認定を受けるためには、大手ハウスメーカー施工という条件があるため、これだけで効果は大きいのが現実。
さらに築後50年以上のサポートが付くなど、買主には一定のメリットがあり、高く売れやすくなります。
注意点2. インスペクションなどが必要
インスペクションは必須
安心R住宅の認定を受けるためには、インスペクションが必要です。
インスペクションは、30坪の住宅で2〜3時間、5万円程度の費用がかかるもの。
不動産会社によっては、インスペクション費用を負担する会社もあるので、相談してみましょう。
インスペクションの説明が宅建業法改正で義務化され、注目されています。売り主の立場でインスペクションについてどう対応するべきか、最新の状況をまとめました。
旧耐震の戸建ては耐震基準適合証明が必要
旧耐震基準の戸建ては、新耐震基準に適合していることを証明する『耐震基準適合証明』が必要です。
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認がおりて建てられた建物の基準。
耐震基準適合証明書の取得にかかる費用は、図面があり構造的に問題なければ、10万円〜15万円程度です。
耐震診断費用は自治体から補助金が受けられるケースが多いので、不動産会社に聞いてみて下さい。
耐震基準適合証明書の注意点、取得すべきか判断する方法を解説します。耐震基準適合証明書より他の方法を選んだほうが良いケースもあるので知っておきましょう。
注意点3. 補修工事や耐震改修が必要になる恐れ
検査に合格しないと売主負担で工事が必要
インスペクションで不具合が見つかった場合は、補修工事が必要です。
また耐震基準を満たしていない場合は、耐震改修工事が必要。
工事費用は売主が負担します。
耐震改修工事は補助金があることも
耐震改修工事は、戸建住宅で100万円〜200万円程度。
自治体から補助金がでることも多いので、こちらで確認してみましょう。
【参考】住宅·建築物の耐震化に関する支援制度
補修工事には火災保険が使えるケースも
インスペクションで補修工事の対象になるのは、多くが外壁や雨樋など。
これらの工事費用には、火災保険が適用できる場合も多いので、チェックしてみましょう。
火災保険で家の修理費用を格安・無料ですませる方法があります。築5年以上の一戸建てなら、約7割で平均100万円の保険金が下りています。あなたの支払った保険料を、上手く活用しましょう。
安心R住宅に向いている家
新耐震で状態の良い一戸建て
安心R住宅に向いている家として「新耐震で状態の良い一戸建て」が挙げられます。
その理由は次の2点。
- 補修工事や耐震改修が不要
- 瑕疵保険が利用できる
新耐震基準で建てられており、状態が良い一戸建てであれば、改修工事等は不要です。
その分の余計な出費もありません。
また瑕疵保険が使えれば、他の競合物件と差別化できます。
新耐震のマンション
新耐震のマンションも安心R住宅に向いています。
なぜならマンションでは、インスペクションが通りやすいので、安心R住宅の取得は簡単だから。
ただし旧耐震のマンションで耐震診断や耐震改修をしていない場合は、耐震基準適合証明書が取得できず、安心R住宅は認定されません。
まとめ
中古住宅のマイナスイメージを払拭するため、国土交通省が進める「安心R住宅」制度。
安心R住宅のメリットは次の2点です。
- 家が売れやすくなる
- 比較的簡単に取得できる
一方で注意点もあります。
- 買主の認知度が低く、今後も不明
- 取得にはインスペクションが必要
- 補修工事や耐震改修が必要になる恐れがある
安心R住宅の制度は、まだ認知度が低く、今後も普及するか分かりません。
改修工事が必要と判断されると、内容によっては工事費用が高額になることもあります。
安心R住宅でなく、他の方法を使った方が良いかもしれません。
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