一つの大きな土地をいくつかに分割することを「分筆」と言います。
分筆そのものには特に制限もありませんが、分筆後の土地の面積によっては「売れない土地」になってしまうことも…。
「売れない土地」にしないために、知っておきたい「敷地の最低限度」についてまとめました。
この記事のもくじ
敷地の最低限度は100平方メートルが一般的
敷地面積の最低限度は一般的に100平方メートルで、これ以下だと建物を建てることができません。
(※ただし自治体によって違うこともあるので、不動産会社や自治体に確認が必要です。)
- 多摩部9市(東大和市・町田市・武蔵野市・三鷹市・小金井市・狛江市・東村山市・清瀬市・青海市)
→100平方メートル、120平方メートルの制限 - 5区(目黒区・杉並区・世田谷区・中野区・江戸川区)
→60〜100平方メートルの制限
この敷地面積の最低限度が適用されるのは、主に第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域。
ちなみに建築基準法では「最低限度は最大でも200平方メートル」とされていて、「具体的な数字は自治体が決める」となっています。
【参考】建築基準法第53条の2 2項
条例で定められている場合も
市区町村によっては、条例で最低面積が定められている場合もあります。
足立区宅地開発事業調整条例
事業区域の面積が150平方メートル以上の宅地開発事業で、一団の土地を2以上に分割し、1以上の戸建て住宅を建築する事業が手続きの対象となります。
【参考】足立区・建築物の敷地面積の最低限度について
最低限度が決められた背景
大きな土地は文筆した方が高く売れる
大きな土地を売却する場合は、分筆して売却した方が売りやすく、価格も高く売れます。

分筆? 何だか文字とか手紙みたいだね

大きな土地を分けることを、分筆というんだ。
『筆』は、登記簿上の土地の単位。
登記簿上で1個の土地の事を『一筆の土地』といって、1個の土地を分けるから『分筆』と言うんだよ
大きな土地のまま売却すると、買い手が投資家や事業者など限られるため、なかなか買い手が見つからず、価格を下げなければ売れません…。
しかし分筆して一戸建て向けの土地として売却すれば、一般の人(エンドユーザー)が買い手になるため、買い手が増えて、価格も高く売れます。

このように、一般的に1000平方メートル未満の土地を分割して戸建ての建売住宅開発を行うことを『ミニ開発』と呼ぶんだ
ミニ開発を制限するため最低限度が導入された
このミニ開発には住環境の面から様々な問題点があると言われています。
- 戸建て住宅が集まることで建て替えやアフターメンテナンスが困難になる
- 隣家との間隔が狭くなる
- 日照や採光、通風が不十分
- 居室が狭くなる
- 公園等の公共スペースがつくれない
こうした問題点が指摘されていることもあり、自治体はミニ開発を制限したいと考えています。

売主は分割して売りたいけれど、自治体はミニ開発を制限したいんだね

そう。こうした背景があって、敷地面積の最低限度が決められているんだ
【参考】国土交通省・敷地細分化抑制のための評価指標マニュアル
周りに100平方メートル以下の土地が多いのは?
「最低限度100平方メートル」と聞いて「周りにはもっと小さい敷地もたくさんあるけれど…?」と思うかもしれません。
こうした最低限度に満たない土地は、最低限度の制度が導入される以前からあった土地です。
実は、最低限度の制度は、制度が導入される以前の既存建物には適用されません。
既存建築物は制限されない
制度が導入される以前からある既存建築物に対しては、この最低限度の制限が適用されません。
そのため、100平方メートル未満であっても、違法とされることもないのです。
ただし、以前からある既存建築物であっても、これ以上土地を分割することは不可とされています。
分筆が規制前なら建築が認められることも
また分筆の時期が自治体の最低限度制度導入時期より前の場合は、建物の建築が認められることもあります。
もし分筆時期を調べたい場合は、登記簿謄本表題部の「原因及びその日付」の記載内容から確認してみて下さい。
登記簿謄本の確認方法は、こちらで解説しています。
また最低限度制度の導入時期については、自治体に問合せると教えてもらえます。

分筆時期が制度導入より前なら、建物も建てられるんだね

ただし、絶対にOKというわけでもないんだ。
救済措置が適用されるかどうかは、自治体の判断次第。まずは役所に確認する必要があるんだ
制度導入前の分筆であっても、建築が認められないことがあります。
認められなかった場合は、隣に買い取ってもらうか、自分が隣地を買取るかのどちらかしかありません。

登記簿とか自治体とか面倒だなぁ…

売却を考えているなら、不動産会社に無料査定を依頼すると全部調べてくれるよ。
相続での分筆に要注意
不動産を相続するときに、複数の相続人で土地を分筆することがあります。
この時も最低限度には注意しましょう。
最低限度未満に分筆してしまうと、売れない土地になってしまいます。
すでに最低限度未満に分筆してしまった場合、売却するためには土地を合筆し、セットで売るしかありません。
相続人全員が同意しないと売れないので、子や孫への2次相続で相続人が増えると大変なことになる恐れがあります。
ちなみに不動産の相続では共有名義を選びがちですが、共有名義もデメリットが多いので注意しましょう。
不動産会社も間違えることがある
意外かもしれませんが、土地の最低限度は不動産会社でも間違えることがあります。
同じ再建築不可でも、接道2m未満は常識ですが、最低限度は地域によって様々なので、間違いやすいのです。
いくら間口の広い土地であっても、敷地面積が200平方メートル未満の場合は、分筆によって「売れない土地」になってしまう可能性もあります。

不動産会社が。

こうしたミスを防ぐためには、売却実績が豊富な不動産会社を最低3社、できれば6社選び、意見を聞くことが大事。
たとえどこかの不動産会社が最低限度に気付かなくても、他の不動産会社が気付いて指摘してもらえることもあります。
不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると便利です。
一括査定サイトの定番3社
一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。
一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。
この3社以外についてはこちらにまとめています。
すまいValue
- 査定実績:
- 40万件
- 不動産会社数:
- 大手6社・全国890店舗
- 運営会社:
- 大手6社共同運営
大手6社(三井のリハウス・住友不動産販売・東急リバブル・野村の仲介+・三菱地所ハウスネット・小田急不動産)が共同で2016年に設立した一括査定サイト。
6社といっても全国890店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。
売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。
首都圏以外のほとんどの地方都市でも、三井・住友・東急の3社が売却実績のトップ3を独占しています。
2021年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトです。
簡易査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
地方では大手より地域密着の中小が強い場合もあるので、3位のHOME4Uも確認した方が良いでしょう。
しかし都市部では「すまいバリュー」が定番です。
特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。優秀な営業マンも数多く抱えています。SRE不動産(旧ソニー不動産)
- 査定実績:
- (2014年開始)
- 不動産会社数:
- 売主側1社(買主側多数)
- 運営会社:
- SREホールディングス株式会社
すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。利用できるエリアは首都圏と関西圏限定です。
あのソニーが始めた不動産会社で、売主だけを担当するエージェント制が特徴。無数にある他の不動産会社が買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。管理人のコメント
大手不動産会社でエージェント制はSRE不動産だけ。話を聞くと売却活動に役立つでしょう。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで査定を依頼することがポイント。まずメールで概算価格を査定してくれます。
HOME4U
- 査定実績:
- 累計40万件(2001年開始)
- 不動産会社数:
- 1,500社
- 運営会社:
- 株式会社NTTデータ・スマートソーシング
日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始依頼、査定累計数40万件と実績も豊富。運営は東証1部上場の株式会社NTTデータのグループ会社。
不動産会社は大小バランスよく登録されているため全国どこでも幅広く依頼ができます。
机上査定を選ぶと、郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多いため、自然と査定精度が高くなる仕組みになっています。
ちなみに記入した内容はまた不動産会社と話をするときに修正できます。
あまり真剣に悩まず、とりあえず現時点の希望を書いておく程度で大丈夫。
不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。
【公式サイト】すまいValue
【公式サイト】SRE不動産
【公式サイト】HOME4U
大切な財産である土地を「売れないもの」にしないためにも、分筆の際には注意しておきましょう。
あなたの土地の問題が解決することを、心よりお祈りしております!