「埋蔵文化財包蔵地の土地は売れるの?」
埋蔵文化財包蔵地の土地売却でお悩みでしょうか?
埋蔵文化財包蔵地は売れるのか、遺跡が出たら調査費用の負担はどうなるのか。
埋蔵文化財包蔵地について調べたいけど、誰に聞けば良いのかよく分からない。
そんなあなたのために、埋蔵文化財包蔵地の売却について、分かりやすくまとめました。
この記事では埋蔵文化財包蔵地の土地売却で知っておきたい注意点、売却方法を解説します。
あなたの土地の悩みが解決し、土地売却が成功するために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
埋蔵文化財包蔵地とは
埋蔵文化財包蔵地とは、文化財が埋もれている土地のこと。
文化財は、遺跡ともいわれますが、具体的には次のようなものです。
- 貝塚
- 古墳
- 土器や石器
- 歴史上で重要な建物の跡
全国に46万箇所、毎年9千件の発掘調査
すでに埋蔵文化財の存在が知られている土地を『周知の埋蔵文化財包蔵地』と呼び、その数は全国に約46万箇所。
この埋蔵文化財を調査するために、毎年9千件程度の発掘調査が行われています。
【参考】文化庁・埋蔵文化財

全国に46万箇所もあるんだね! そんなにたくさんあるなんてビックリ!

意外に多いでしょう?
こうした周知の埋蔵文化財包蔵地の売却では、5つの注意点があるんだ
埋蔵文化財包蔵地を売却するときの5つの注意点
埋蔵文化財包蔵地の売却で知っておきたい注意点は次の5つ。
それぞれ解説します。
注意点1. 不動産価格が下がるリスクがある
埋蔵文化財包蔵地は、不動産価格が下がるリスクがあります。
価格が下がる理由としては、次の4点。
- 建物の建築工事が遅れるリスクがある。
- 建物形状が制限されるリスクがある。
- (個人住宅以外では)調査費用を請求されるリスクがある
- 上記の理由から住宅ローン審査に通らなかったり融資額が減額されやすい。
建物の建築工事が遅れるリスク
埋蔵文化財があると、工事完成が遅れるリスクがあります。
なぜなら埋蔵文化財包蔵地では、現地調査や試掘が行われる場合もあるため。
調査期間中は工事ができず、工事の完成が遅れてしまいます。
さらに重要な遺跡が発見されると、大規模な発掘調査が行われ、ますます工事が遅れてしまうことに。
工事が遅れることは、土地の購入者にとってマイナス要因なので、その分価格に影響します。
建物形状が制限されるリスク
調査結果次第では、建物形状が制限される恐れがあります。
例えば、埋蔵文化財があることで基礎形状が変更になり、3階建ての建物が建てられなくなることも。
また地盤改良ができず、2階建てが平屋になる恐れもあります。
可能性として建物の構造が変わるケースは少ないですが、もし変更になった場合の影響を考えると、大きなリスクといえるでしょう。
調査費用の負担リスク
埋蔵文化財包蔵地の調査費用は、土地の所有者が負担します。
ただし居住目的の住宅では、基本的に調査費用は補助されるので、請求されるリスクはほとんどありません。
個人住宅の負担は4%
個人住宅の場合は、費用の大部分が補助になるため、土地所有者の負担は少額です。
平成30年度の個人住宅の建築に伴う本発掘費用は、790件で総額6億8,272万円(平均約86万円)。
この内、土地所有者の負担額は、総額2,981万円(件数不明)とわずか4%。
【参考】文化庁・埋蔵文化財統計資料
費用の大部分は補助されていることが分かります。
投資用や事業用では90%以上の負担
投資用や事業用の建物を建てる場合は、調査費用の負担リスクがあります。
平成30年度の土地所有者の負担は次の通り。
- ●中小企業
- 本発掘調査 645件(22億5,465万円)
一件当たり 平均341万円
内、土地所有者の負担 98% - ●個人事業
- 本発掘調査 319件(9億412万円)
一件当たり 平均283万円
内、土地所有者の負担 94%
【参考】文化庁・埋蔵文化財統計資料

お宝発見! って感じでメリットがありそうな気もするけど・・・

残念ながら、お宝がみつかっても所有権は地方自治体なんだ。
所有権は地方自治体
調査によって出土した文化財は、警察に届出て、原則として都道府県の所有になります。
【参考】文化財保護法第100条
まれに文化財所有者の子孫が生きていれば、子孫のものになることもあります。

なんだ、土地所有者のものになるわけではないのか・・・
じゃあ、埋蔵文化財包蔵地を知らなかったことにするか…

こらこら。
買主にはキチンと説明する義務があるよ。
注意点2. 買主へ説明する義務がある
埋蔵文化財包蔵地は、売却前に買主へ説明しなくてはいけません。
買主への説明は、口頭だけでなく、売買契約時の重要事項説明に記載します。
もし売主が知らなかったり黙っていても、不動産会社が役所調査で気付くでしょう。
なぜなら不動産会社には『説明義務』があり、売却後に埋蔵文化財包蔵地だと判明したら、不動産会社に賠償金が請求されるため。
さらに売主がわざと黙っていた場合は、売り主の説明義務違反で、売主も賠償金を請求されてしまいます。
重要事項説明に書けば、買主へ説明した証拠になるのです。

買主には説明するんだね。

買主にとっては、リスクが高いからね
注意点3. 60日前届出など基本ルールがある
『周知の埋蔵文化財包蔵地』は、すでに文化財の存在が確認されている土地。
周知の埋蔵文化財包蔵地では、文化財保護法と文化庁の通達などで、基本ルールが定められています。
工事の60日前までに届出
周知の埋蔵文化財包蔵地で工事する場合は、工事規模に関係なく工事着手の60日前までに都道府県・政令指定都市等の教育委員会へ届出ます。
住宅を建てる場合は、設計者が事前に役所と協議して、建築計画と遺跡の両方に最適な方法を探してくれます。
【参考】文化財保護法93・94条
教育委員会からの指示は5種類
届出を受けて、都道府県の教育委員会から次の5種類の何れかの指示があります。
リスクの高い順番で、指示1→指示5となります。
指示1. 発掘調査 ←これが一番厳しい
工事前に、発掘調査を指導されます。
発掘調査になる場合は、次のようなケースです。
- 工事で埋蔵文化財が掘削される場合
- 恒久的な建築物や道路等を設置する場合
指示2. 確認調査(予備調査)
発掘調査の前に、遺跡の規模や予算を確認するために行う調査。
このあと発掘調査になるので、指示1とほぼ同じ扱いです。
指示3. 試掘調査
部分的に掘削して、確認する工事を指導されます。
試掘調査は、結果次第で発掘調査になる恐れがあるので、リスクは高くなります。
試掘調査になるのは、次のようなケースです。
- 地表面の観察等からでは埋蔵文化財の有無が分からない
指示4. 立会調査
役所が工事に立ち会う条件で、工事できます。
立会調査になるのは、次のようなケースです。
- 掘削の深さが遺跡に達しない計画の場合
- 過去の調査から遺跡が少ない地域の場合
- 小規模工事の場合(ガス・水道・電気等の緊急性がある小規模な工事)
指示5. 慎重工事
慎重に工事をする条件で、工事できます。
工事にはほとんど影響ありません。
慎重工事になるのは、次のようなケースです。
- すでに事前調査を実施した場合
- すでに掘削されている地域の場合

慎重工事だったら、ほとんど影響ないんだね。
発掘調査になる可能性はどのくらいなの?

発掘調査になるのは1割以下だよ。
ただし発掘調査は1割以下
埋蔵文化財包蔵地の工事届出の内、発掘調査になるのは1割以下です。
例えば、平成30年度の個人住宅建築に伴う調査件数はこちら。
- 工事の届出件数: 2万6,033件
- 発掘調査件数: 2,230件(8.5%)
- 本発掘調査: 790件実施(3.0%)

発掘調査は1割以下、本格的は調査は3%と少ない。
ただし実際に届け出ないと、どうなるか分からないんだ。
近隣の事例があれば参考になるから、不動産会社に聞いてみると教えてもらえることもあるよ。
注意点4. ルールは地域によって違う
埋蔵文化財の基本ルールはありますが、地域によって細かいルールが違います。
自治体によっては、近接でも届け出が必要
自治体によっては、周知の埋蔵文化財包蔵地でなくても、近接の土地は全て工事の届出が必要です。
近接の土地であっても、教育委員会が必要と判断すれば、試掘や工事立会の対象になる恐れも。
基本的なルールはあるのですが、個別の判断は都道府県の教育委員会の判断になります。
埋蔵文化財の範囲も地域による
どこまで埋蔵文化財になるかの範囲も、都道府県の教育委員会が個別に判断します。
一応基本的なルールは、文化庁の通知で時代別に次になっています。
- ●おおむね中世(1600年頃)までの遺跡
→原則として全て - ●近世(1600年頃〜江戸末期1860年頃)の遺跡
→地域において必要なもの - ●近現代(明治以降)の遺跡
→地域において特に重要なもの
遺跡の地図が公開されている自治体も
例えば、東京都などは遺跡の場所を地図で公表。
遺跡の概要のほか、どういった出土品があるかなど誰でも見られるようになっています。
ちなみにネットで公開していない自治体でも、文化財保護課で遺跡地図が作成されています。
あなたの土地が周知の文化財包蔵地かどうかは、自治体の文化財保護課に問い合わせると分かります。

地域によって、色々違うんだね

結局、個別に役所に聞きに行くのが一番確実なんだ。
不動産会社に売却を相談したら、役所で調べてくれるよ。
注意点5. 回避できる場合もあるが個々のケースによる
周知の埋蔵文化財包蔵地でも、場合によっては発掘調査を回避できる可能性があります。
例えば、埋蔵文化財が地中深くにあり、建物基礎の埋め込みがそれより浅い場合。
この様に工事によって遺跡を破壊する恐れがないと、調査を回避できる場合もあります。
そもそも建築物は、発掘調査の対象になりにくいのです。
建築物は基本的に対象外
文化庁の通知で、発掘調査の対象になるか、構造物毎の目安があります。
この通知によると、道路、ダム・河川、恒久的な盛土・埋立に比べると、建築物は発掘調査の対象にならないとされています。
建築物については,規模・構造・耐用年数等において上記の工作物に比べ比較的簡易なものが多いため,原則として発掘調査の対象とはしないこと。ただし,その規模・構造・耐用年数・将来の利用計画等の観点で,都道府県教育委員会の定める適用基準により,発掘調査の対象とするか否かを定めることができる。
ただし、地盤調査や試掘の結果、担当者の判断によるため、調査の有無はあくまで教育委員会との協議結果次第。
近隣の事例があれば、参考になります。
売買実績が豊富な不動産会社の意見も参考に
埋蔵文化財に関するルールは地域によって違います。
そのため、埋蔵文化財地域の土地を売却したい場合は、エリアで売却実績が豊富な不動産会社の意見を聞く方が確実。
具体的には3〜6社に無料査定を依頼し、意見を聴き比べます。
もし不動産会社の心当たりがない場合は、一括査定サイトを利用すると便利です。
一括査定サイトの定番3社
一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。
一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。
この3社以外についてはこちらにまとめています。
すまいValue
- 査定実績:
- 40万件
- 不動産会社数:
- 大手6社・全国890店舗
- 運営会社:
- 大手6社共同運営
大手6社(三井のリハウス・住友不動産販売・東急リバブル・野村の仲介+・三菱地所ハウスネット・小田急不動産)が共同で2016年に設立した一括査定サイト。
6社といっても全国890店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。
売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。
首都圏以外のほとんどの地方都市でも、三井・住友・東急の3社が売却実績のトップ3を独占しています。
2021年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトです。
簡易査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
地方では大手より地域密着の中小が強い場合もあるので、3位のHOME4Uも確認した方が良いでしょう。
しかし都市部では「すまいバリュー」が定番です。
特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。優秀な営業マンも数多く抱えています。SRE不動産(旧ソニー不動産)
- 査定実績:
- (2014年開始)
- 不動産会社数:
- 売主側1社(買主側多数)
- 運営会社:
- SREホールディングス株式会社
すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。利用できるエリアは首都圏と関西圏限定です。
あのソニーが始めた不動産会社で、売主だけを担当するエージェント制が特徴。無数にある他の不動産会社が買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。管理人のコメント
大手不動産会社でエージェント制はSRE不動産だけ。話を聞くと売却活動に役立つでしょう。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで査定を依頼することがポイント。まずメールで概算価格を査定してくれます。
HOME4U
- 査定実績:
- 累計40万件(2001年開始)
- 不動産会社数:
- 1,500社
- 運営会社:
- 株式会社NTTデータ・スマートソーシング
日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始依頼、査定累計数40万件と実績も豊富。運営は東証1部上場の株式会社NTTデータのグループ会社。
不動産会社は大小バランスよく登録されているため全国どこでも幅広く依頼ができます。
机上査定を選ぶと、郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多いため、自然と査定精度が高くなる仕組みになっています。
ちなみに記入した内容はまた不動産会社と話をするときに修正できます。
あまり真剣に悩まず、とりあえず現時点の希望を書いておく程度で大丈夫。
不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。
【公式サイト】すまいValue
【公式サイト】SRE不動産
【公式サイト】HOME4U
各エリアで最適な組み合わせ

あなたのエリアで最適な一括査定サイトの組み合わせはこちら。
まとめ
埋蔵文化財包蔵地は売却できますが、5つの注意点があります。
埋蔵文化財包蔵地売却の5つの注意点
役所への調査など専門的な知識が必要なので、エリアで売買実績が豊富な不動産会社に意見を聞くと良いでしょう。
あなたの埋蔵文化財包蔵地域の土地売却が成功することを、心よりお祈りしております!