「認知症の親の家を売りたいけど、どうすれば良いの?」
認知症の親御さんの自宅売却でお悩みですね。
確かに認知症は介護費用がかかり、回復も難しいので、施設に入るなら家を売るのは自然の流れ。
しかし本人が認知症だと、実の子供でも親の家を勝手に売れない場合があります。
なぜなら一般的に、認知症の親の家を売るには、成年後見制度を利用する必要があるため。
ただし認知症でも進行次第で、本人に売却の意思があれば、売却できる可能性は高くなります。
この記事では、親が認知症になってしまった場合に、親の家を売る手順と注意点について分かりやすくまとめました。
また認知症になる前であれば、家族信託や任意後見人で、親の財産を子供が守る方法もあります。
家族信託についてはこちらで解説しています。
認知症になる前に用意しておきたい家族信託について、仕組みや注意点、始める方法について、分かりやすく解説します。
あなたの親御さんの家の売却が成功するために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
認知症の親の家を売るときの3つの注意点
認知症の親の家を売るときの注意点はこちら
それぞれ解説します。
注意点1. 子供でも親の家を売却できない場合がある
制限行為能力者は家を売却できない
たとえ子供などの親族でも、認知症の親の家を売却できない場合があります。
なぜなら親が「認知症で判断能力が無い」と医師に診断されると、「制限行為能力者」となるため。
法律行為をなす意思能力を欠いているとされる人のこと。
制限行為能力者は、自分の所有する不動産を自由に売却できず、また自分の子供に売却の代理を依頼もできない。
後見人制度を使わないと売却できない
制限行為能力者は、本人に代わって「成年後見制度」を使わないと家を売却できません。
成年後見制度は、家庭裁判所に申立て、裁判所の指定する後見人が本人の代理になるもの。
成年後見制度については、後述の「成年後見制度とは」で詳しく解説しています。
じゃあ成年後見制度を使えば良いんだね。
いや、成年後見制度は最後の手段だよ。
他の方法をまず試して、どうしてもダメなら仕方なく使うものなんだ。
注意点2. 成年後見制度は慎重に判断する
認知症で成年後見制度の利用率はわずか4%未満だけ
認知症患者で成年後見人制度を利用している割合は、わずか4%未満。
残り96%以上の認知症患者は、成年後見人制度を利用していません。
厚生労働省の推計によると、認知症患者の数は2020年末で推定約600万人。
一方で成年後見人制度の利用者は、2020年末で23万2287人と、認知症患者数のわずか3.9%にすぎません。
(裁判所の成年後見関係事件の概況による)
認知症患者でも、成年後見人制度を利用する人は25人に1人以下と少ないのが現実です。
なんで成年後見制度を利用する人が少ないの?
成年後見制度にも注意点があるからだよ。
成年後見制度の注意点
- 裁判所指定の後見人は8割が専門職で、親族は2割
→知らない他人が家族間に介入することになり、手続きも面倒 - 専門職の後見人・監督人には費用がかかり、当たり外れもある
→毎月2万円〜6万円かかり、親族とトラブルもある - 家の売却には後見人と裁判所の許可が必要
→成年後見制度を利用しても家を売れない恐れもある
成年後見制度を利用しても、家を売却できない恐れがあり、それどころか多額の費用負担とトラブルの恐れもあります。
詳しくは後述の「成年後見制度の注意点」で解説します。
成年後見制度を利用するべきか判断する基準
成年後見制度を利用するべきか、「必要度」の査定フォームが一般財団法人後見の杜にあります。
試しに診断してみると良いでしょう。
⇒後見人をつける「必要度」の査定フォーム
家を売るためだけに成年後見制度を利用すると、この先ずっと費用負担や他人が介入することになってしまいます。
成年後見制度を利用する前に、できることを試してみた方が良いでしょう。
成年後見制度を使っても、家が売れるとは限らないんだね。
じゃあ家を売るためにはどうすれば良いの?
認知症といっても程度が様々だから、親の同意があれば普通に売れることも多いよ。
注意点3. 認知症の程度によっては親の同意で売れる
認知症の診断は医師によってバラツキがある
認知症の症状は人によって様々なので、認知症の診断は非常に難しく、医師によってバラツキがあります。
実際に認知症診断のガイドラインとして、日本神経学会の認知症疾患診療ガイドライン2017がありますが、このガイドラインでも認知症の診断はテストの点数などで明確に判断できないと明記されています。
代表的なMMSEやHDS-Rなどのテストはありますが、いずれもスクリーニング(初期診断)に使うもの。
最終的には「医師の判断」になってしまうので、医師によって判断は分かれるのです。
だから「認知症=制限行為能力者」という単純なものでなく、認知症でも普通に生活できる人も多く、96%以上の認知症患者は成年後見制度を利用していません。
認知症といっても人によって様々だし、医師によって判断も分かれるのか。
だから親が売却に同意していれば、不動産会社によっては、売却してくれるんだ。
親が売却に同意していれば、不動産会社の判断次第
親が認知症の気配があったとしても、本人が家の売却に同意していれば、実際は不動産会社の担当者の判断になるのが現実です。
不動産会社の担当者が、本人の意思を確認して売買に問題ないと判断すれば、家を売却できることが多いでしょう。
特に認知症の初期であれば、症状が出たり出なかったりするので、調子が良いときに不動産会社の担当者と話をすれば良いでしょう。
親が売買契約に立ち会えなくても、親の意思であなたが代理人として家を売ることが可能です。
代理人については不動産会社が教えてくれます。
不動産の売却では、代理権を委任することであなた自身が立ち会わなくても不動産売却ができるようになります。代理人に委任する方法や必要な書類、注意点をまとめました。
親の家を売却することに協力的な不動産会社を探す
認知症の親の家を売るなら、成年後見人制度を利用する前に、まず不動産会社を探した方が良いでしょう。
売却に協力してくれる不動産会社は多く居ます。
1社に断られても諦めずに、複数に当たってみましょう。
不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると簡単です。
一括査定サイトの定番3社
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ここまで認知症の親の家を売るときの3つの注意点を解説しました。
次に成年後見制度の4つの注意点を解説します。
成年後見制度の4つの注意点
それぞれ解説します。
注意点1. 知らない他人が後見人になる恐れ
成年後見制度を利用するために裁判所に申し込み(法定後見人申し立て)しても、見知らぬ他人が、親の後見人になってしまう恐れがあります。
裁判所指定の後見人は8割が専門職で、親族は2割
2021年現在、裁判所が指定する法定後見人は80.2%が弁護士などの専門職で、親族が後見人になっている割合は19.8%程度です。
ただし親族以外が後見人になっているケースの多くは、申立書の後見人候補者が無記入だったり親族以外なので、親族が拒否されているわけではありません。
申立書に親族の後見人候補者を記入した場合、裁判所が法定後見人に親族を指定する割合は、約80%と推定されています。
なんで後見人は親族じゃないの?
過去に親族の後見人が財産を使い込んで、家庭裁判所の監督責任が問われたんだ。
2012年の裁判がきっかけで専門職が多くなった
裁判所が法定後見人に専門職を指定する理由として、過去の裁判があります。
2012年に親族が財産を使い込むトラブルがあり、家庭裁判所の監督責任が問われた判例があったためです。
知的障害のある親族の後見人が3500万円を使い込んだ事件で、家庭裁判所が監督責任として231万円の支払いを命じられました。
【参考】裁判所・裁判例結果詳細(平成22年2月20日)広島高等裁判所
2000年には、法定後見人に専門職が選ばれる割合がわずか10%未満でしたが、今は完全に逆転しています。
現在の家庭裁判所は、監督責任を問われることを恐れて、専門職を法定後見人に指定するケースが多くなっているのです。
自分の親なのに、子供が後見人になれないの?
特に預貯金額が500万円以上あると、専門職が後見人になる可能性が高いね。
預貯金が500万円を超えると専門職になりやすい
家庭裁判所の判断基準は、横領の恐れがある預貯金の金額です。
預貯金が500万円を超えると、法定後見人として親族でなく専門職が指定されがち。
専門職は家庭裁判所が指定するので、親族が選ぶことはできません。
親族が後見人になっても、財産は信託銀行に管理される
もし親族が後見人に指定されても、預貯金が1,200万円を超えると後見制度支援信託という制度により、預貯金は信託銀行に管理されてしまいます。
信託銀行の管理する財産は、家庭裁判所の指示書がないと払い戻しできません。
後見制度支援信託の申し込みには、専門職への初期費用が10万円〜30万円かかります。
でも後見人が専門職だと、しっかり仕事してくれるんじゃないの?
専門職の後見人は費用が高いことが問題かな。
注意点2. 専門職の後見人には費用がかかる
目安は月2万円〜6万円
専門職の後見人には費用がかかり、地域や管理する財産額によって違いますが、目安は月2万円〜6万円。
例として、東京家庭裁判所の目安は下記になります。
管理財産 | 後見人の報酬 |
---|---|
1,000万円以下 | 月額2万円 (年額24万円) |
1,000万円超 5,000万円以下 |
月額3万円〜4万円 (年額36万円〜48万円) |
5,000万円超 | 月額5万円〜6万円 (年額60万円〜72万円) |
さらに家の売却など特別な業務を依頼すると追加報酬がかかります。
後見人に払う「費用」概算シミュレーター
一般財団法人 後見の杜が、専門職の法定後見人に支払う費用の概算シミュレーターを作成しています。
成年後見制度を検討しているなら、試しに試算してみると良いでしょう。
⇒後見人に払う「費用」概算シミュレーター
専門職の後見人には、こんなに費用がかかるんだ!
親が亡くなるまで支払い続けることになるからね。
それだけでなく、専門職の後見人はトラブルになるケースもあるんだ。
注意点3. 専門職の後見人とトラブルの恐れ
過去10年で221件、約17億円の横領
最高裁判所の調査によると、専門職の後見人による不正事例は、過去10年で221件、被害額は総額で約16.8億円あります。
えー、そんなにあるの!
事件が表面化したものでそれだけあるから、事件化しなかったトラブルを含めるともっと多いね。
後見人の役割は本人の資産保護なので、親族とモメやすい
後見人の役割は、本人の資産保護なので、本人の資産を使って支払いなどをしたい親族とモメやすいこともあります。
本人に何か物を買ってあげたくても、本人の為になる証拠や根拠を示して、後見人が認めないと貯金が払い出せません。
親族は手続きが大変ですし、後見人は資産を減らしたくないので、互いの意見が対立しやすくなってしまいます。
トラブル事例は書籍などを参考に
成年後見制度のトラブルは、「後見 トラブル」などで検索すると数多く出ています。
書籍もあるので、興味があれば下記を参照して下さい。
目次
序章 後見の基礎知識
第1章 今、なぜ後見制度が問題なのか
成長を止めた後見、政策的に増加する保佐・補助の利用
もはや衰退傾向の任意後見
配偶者と障害者の親御さんに愛想を尽かされた法定後見
市長申し立てランキング一位は福島県
8兆4千億円を848億円かけて管理する高コスト体質の後見
後見制度を使っても99・9%の確率で動かせる不動産と家族信託の今後第2章 成年後見との後悔しない向き合い方
後見制度を使う必要度と費用の査定の目安
任意後見で失敗しない6つのノウハウ
親や配偶者が認知症の方へのアドバイス
子供に知的・精神障害がある親御さん、兄弟姉妹への助言
まだまだ元気なシニア層への提案第3章 一緒に住めない、お金を使えない、深刻後見トラブルのなぜ?
スイスと米国の後見トラブル「亡命、無理心中、避妊器具装着」
日本における高齢者後見トラブル10選
日本における障害者後見トラブル10選
後見トラブル泣き寝入り、6つの後見対策第4章 家庭裁判所は誰のためにあるのか
2012年の広島高裁判決から私たちが学んだこと
なぜ親族後見人は家庭裁判所から追い出されたのか
本来であれば裁判所が主導すべき監督業務の外注ラッシュの実態
障害者である姉にとっての過剰な負担は、なぜ起きたのか
家庭裁判所から勝手に当てがわれた監督人への5大対策
家庭裁判所に付き合わされる信託銀行と信用金庫業界
後見係の失態と執るべき対抗策第5章 いわゆる専門職後見人の一部の呆れた実態
後見利益団体リーガルサポートの素顔10選
裁判所が決定した弁護士後見人による使い込み横領事件
身上監護は本人とお話をするだけ、と断言する大阪の弁護士
人としてまさかの悪条件を突きつけた弁護士後見人第6章 清く正しい成年後見制度を目指すために
一緒になって後見利用を良くしよう
始まる!「みんなの成年後見センター」のプラン
後見人が必要かどうかを見極める後見業務のチェックリスト
おわりに引用元: 宮内康二著 成年後見制度の落とし穴
専門職でもトラブルの恐れがあるから、必ずしも安心できないんだね。
専門職が後見人になると、家を売れないの?
売るために必要な条件は2つある。まず後見人が本人のためと認めること。
そして2つ目は裁判所が許可することなんだ。
注意点4. 家の売却には後見人と裁判所の許可が必要
まず後見人が家を売ると判断しないと売れない
成年後見制度では、本人の家を売るために、まず後見人が家を売ると判断しなくてはいけません。
後見人の判断基準は、「本当に被後見人(認知症の本人)のためになっているかどうか」
だから「維持管理が大変だから」という理由では、売却できない恐れがあります。
後見人が認める理由としては「施設の入居費用ねん出のため」や「老朽化のため」といった理由が適切でしょう。
ただし施設の入居費用ねん出という理由でも、被後見人に十分な金融資産があれば、許可が出ない恐れもあります。
あくまで後見人の判断が優先で、親族の意向は優先されません。
親が施設に入居してしまうと、維持管理が難しいから売却するケースも多い。
でも単に維持管理が難しいからという理由では、許可されないんだ
後見人が判断すれば裁判所は99%以上認める
後見人が家を売ると判断すれば、裁判所の判断が必要です。
ただし2020年現在で、後見人が家を売ると判断した場合、99%以上の割合で裁判所は認めています。
(8,223件中で却下は11件)
相場より大幅に安い価格で売るなどのことがない限り、裁判所が却下することはないでしょう。
適正な価格はどうやって知るの?
不動産会社の無料査定が一番正確だね。
今は不動産相場が高騰しているから、最新の価格を調べたほうが良いよ。
今は不動産相場が高騰している
今は都市部を中心に、不動産価格が高騰しています。
不動産価格指数(全国)
不動産価格指数とは
不動産相場の価格変動が純粋に分かる指数。国土交通省がアンケートで集めた年間30万件の成約価格を元に、ヘドニック法という統計計算でまとめたもの。3ヶ月前までのデータが毎月末頃に公表される。2010年の平均を100として算出。
中古マンションは約11年で98%も値上がりしています。
一戸建ては高騰していないように見えますが、これは都市部の値上がりを地方や田舎が打ち消しているため。
一戸建てでは、価格の二極化が進んでいます。
あなたの親御さんの家も、思わぬ価格になっているかもしれません。
売却を検討するためにも、とりあえず価格を確認してみると良いでしょう
不動産会社へ無料査定を依頼する
価格を調べる方法は、不動産会社に無料査定を依頼する方法が一般的。
無料査定を依頼するポイントは次の2つ
- エリアで売買実績が豊富な不動産会社に絞る
- 上記の3〜6社に無料査定を依頼して、査定価格と話を聴き比べる
エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、査定の精度が高くなります。
また今の相場は、不動産のプロでも査定が難しいほど動いています。
不動産会社によって査定価格に差が出るため、1社だけでなく最低3社以上に査定を依頼しましょう。
ただし数が多すぎると対応が大変なので、多くても6社程度が良いでしょう。
エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、どうやって探すの?
不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると便利だよ
主要な一括査定サイトはこちらでまとめています。
不動産一括査定サイト、主要16社を徹底比較し、ランキングでまとめました。
最後に成年後見人制度について、基本的な知識を解説します。
成年後見制度とは
判断能力が無い成年者を守る制度
成年後見人制度は十分な判断能力を持たない成年者に対し、後見人が手続き等の代理を務める制度です。
後見人は本人の代理として、財産の管理や契約、遺産分割協議などができます。
自分に不利な契約も、正しく判断できなければ言われるがまま結んでしまう恐れがある。
こうしたリスクを防ぎ、判断能力が十分でない人を保護・支援するために成年後見制度があるんだ
裁判所が作成した説明動画
裁判所ホームページでも解説しています。
⇒裁判所・成年後見制度について
⇒よくある質問 東京家庭裁判所後見センター
裁判所が作成したパンフレットも分かりやすいでしょう。
⇒成年後見制度ー利用をお考えのあなたへー
動画やパンフレットを見なくても、この後を読めば、成年後見制度については分かります。
成年後見制度には2種類ある
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
法定後見 | 任意後見 | |
---|---|---|
本人の 判断能力 |
すでに無い | まだある |
後見人の選定 | 家庭裁判所 | 本人 |
利用手続き | 親族などが家庭裁判所に申立て | 利用者が元気なうちに契約。 判断能力が低下したら後見人が申立て |
後見人の報酬 | 裁判所が決める | 契約で自由に設定 |
できること | ・預貯金の入出金 ・年金や税金の手続き ・病院の入院手続き ・介護施設の入居契約 ・不動産の管理や処分 ・遺産分割協議 |
契約で決める |
法定後見人制度とは
法定後見制度とは、本人が認知症になってから親族などが申立て、家庭裁判所が後見人を選ぶもの。
後見事務が複雑だったり難しい場合は、成年後見人をサポートするために、さらに「後見監督人」が選任されることもあります。
また本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階があります。
【参考】法務省民事局・成年後見制度
任意後見制度
任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来に備えて任意後見契約を結んでおくもの。
あらかじめ公証人が作成した公正証書で契約を結びます。
本人の判断能力が低下した場合に、後見人などが申立て、後見契約が始まります。
ただし任意後見では、家庭裁判所が指定する監督人が付いてしまい、月々1万円〜3万円程度の費用がかかります。
また任意後見人は、裁判所の判断で拒否や解任される恐れがあり、必ずしも後見人になれるわけではありません。
法定後見制度で申立てができる人
成年後見制度(法定後見制度)の申立てができるのは、
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族
具体的には、親や祖父母、子、孫、兄弟姉妹や甥・姪、おじやおば、配偶者の親や兄弟姉妹などが主な親族に該当します。
この他、検察官や市町村長なども申立てができます。
成年後見人になれる人
家庭裁判所から選定された人が後見人になりますが、主に次のような人が後見人になれます。
- 親族
- 法律や福祉の専門家、その他の第三者
- 福祉関係の公益法人、その他の法人
なお、後見人は必ずしも一人とは限らず、複数になることも。
複数の親族が後見人になる事もあれば、親族と職業後見人などの第三者が同時に選定されることもあります。
後見人の任期は本人が亡くなるか回復するまで
後見人の任期は、認知症になった親が亡くなるか回復するまで。
現実としては今の医学で認知症が回復することはないので、亡くなるまでになります。
家を売るためだけに後見人になったとしても、その後亡くなるまで後見人として責任があるのです。
法定後見制度の申立てにかかる費用
家庭裁判所に法定後見制度の審判を申し立てる際には、手数料がかかります。
- 申立て手数料…800円
- 登記手数料…2,600円
- 連絡用の郵便切手…申し立てる家庭裁判所に要問合せ
(数百円程度) - 鑑定料(「後見」と「保佐」の場合)…個々の事案によって異なる
(多くの場合で10万円以下) - その他、戸籍謄本や登記事項証明書、診断書などの費用
(合計数千円程度)
申立て手数料と登記手数料は、窓口で収入印紙を購入して貼ります。
鑑定料とは本人の判断能力の程度を医学的に確認するため、医師による鑑定を行うときに必要な費用です。
申込みを専門家に依頼すると15万円〜20万円程度かかります。
法定後見人の申立てに必要な書類
後見制度の申立てに必要な書類は、次の通りです。
- 申立書
- 本人の戸籍謄本
- 本人の住民票または戸籍附票
- 成年後見人候補者の住民票または戸籍附票
- 本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
- 本人の成年後見等に関する登記がされていないことの証明書(法務局・地方法務局の本局で発行するもの)
- 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や通帳の写しなど)
この他、審理のために必要な書類の追加提出を依頼されることもあります。
(参考)各地の裁判所一覧
また裁判所に問合せる前に各自治体の地域包括支援センターや社会福祉協議会など、専門の団体に相談することも可能です。
(参考)厚生労働省・地域包括ケアシステム(下の方にセンターの一覧があります)
(参考)社会福祉法人全国社会福祉協議会・都道府県指定都市社会福祉協議会ホームページ
法定後見制度の手続きの流れ
法定後見制度の手続きの流れは次の通り。
- ① 家庭裁判所にて申立て
- 必要な書類を提出し、費用を支払います。
- ② 裁判所にて調査を実施
- 本人の判断能力について、鑑定を行う場合もあります。
- ③ 審判
- 後見等の開始の審判と同時に、成年後見人等を選任します。
本人の代理で財産の管理などができるようになるのは、この審判後からになります。
なお、成年後見人の選任に関しては不服申し立てができません。 - ④ 報告
- 成年後見人に選任されたら、本人の財産や生活状況を確認して財産目録および収支予定表を作成し、家庭裁判所に提出します。
以後、年に1回決められた時期に、本人の生活状況や財産状況などを家庭裁判所に報告するようにします。
まとめ
認知症の親の家の売却は、まず不動産会社に相談してみましょう。
認知症の程度は様々なので、親が売却に同意していれば、不動産会社の判断で売却してくれます。
不動産会社1社に断られても、いくつか当たってみると良いでしょう。
不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると簡単です。
成年後見制度はありますが、利用は最後の手段として、まず他の方法を考えてみて下さい。
成年後見制度の相談先としては、一般社団法人 後見の杜 がオススメです。
あなたの親御さんの家の売却が成功することを、心よりお祈りしております!
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