「マンションの床面積」には、『壁芯(へきしん又はかべしん)面積』と『内法(うちのり)面積』の2種類があります。
さらに廊下などの共有部を含める計算方法も含めると、同じマンションでも3種類の床面積に。
ここで問題なのは、使用目的によってどの面積を使うか決まっているため、知らずに間違えるとトラブルになりかねないこと。
この記事では、複数あるマンションの床面積と、それぞれの目的でどれを利用するべきかを解説します。
また床面積で間違えやすい知識についても、あわせて解説。
あなたの目的に合った正しい床面積がサクッと分かり、面積違いのトラブルを防ぐために、この記事がお役に立てれば幸いです。
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マンション(区分建物)だけ壁芯と内法の2種類
マンションの床面積には、壁芯と内法の2種類があります。
壁芯と内法の違いは「新築か中古か」と考えると分かりやすいでしょう。
新築マンションの広告は壁芯面積
新築マンションの場合、パンフレットなどに記載される床面積は「壁芯面積」(へきしんめんせき、又は、かべしんめんせき)となります。
壁芯面積とは、壁や柱の中心を基準とした線で囲まれた部分の面積のこと。

なぜ新築だと壁芯面積なの?

建築基準法が壁芯面積だから、そのまま設計図面の数字を使っているんだ。
設計図面での建物面積とは、壁芯面積。
建築確認申請など建築基準法に基づく申請も、壁芯面積で行われます。
建築基準法では、床面積の算定方法として、次のように定められています。
建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
引用元: 建築基準法施行令2条1項3号

じゃあ、中古マンションはなんで壁芯じゃないの?

中古マンションは登記されている面積で取引されるからだよ。
中古マンションだけは内法面積(登記面積)
一方の中古マンションについては、「内法面積」(うちのりめんせき)を使います。
内法面積とは、壁の内側を基準とした線で囲まれた部分の面積のこと。
登記記録上の面積はこの内法面積で、公簿面積とも呼びます
壁や柱の中心を基準とする壁芯面積と比べると、内法面積の方が狭くなります。
中古住宅を売却する際、契約書に記載する床面積はこの内法面積(登記面積)です。

中古マンションでも、広告上では床面積として壁芯面積を使うことが多いんだ。
面積の項目にわざわざカッコ書きで「壁芯」と書いているのは、契約書上の面積(内法面積)と異なるからなんだよ

なるほど。壁芯と内法の違いを知らないと「広告の面積と違う!」となりそうだけど、間違っているわけではないんだね
なお、登記上の床面積については、次のように定められています。
建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。
引用元: 不動産登記規則第115条
マンションは区分建物になるため、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分=内法面積となります。
戸建ては新築も中古も壁芯面積
戸建て住宅に関しては、新築・中古を問わず壁芯面積を使います。
不動産登記規則第115条でも、『建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた』と規定されています。
壁芯と内法の差は5〜8%
壁芯面積と内法面積の差は、おおよそ5〜8%。
内法面積では、壁の半分とメーターボックス(MB)やパイプスペース(PS)の分が、壁芯面積より小さくなります。
メーターボックスは電気やガス、水道の使用量を示すメーター類が収められている部分。
間取り図で「MB」と表記されている部分で、共用部分になります。
パイプスペースも共用部分で、間取り図で「PS」と書かれている部分。
こちらは上下水道やガス管などの配管スペースです。
メーターボックスとパイプスペースが同じ場所にある場合は、まとめて「MBPS」と表記されていることもあります。

そんなに大きく違わないね。
じゃあ、どっちでも良いんじゃないの?

税制優遇などで、〇〇m2以上という面積要件がある。
特にマンションで壁芯面積50〜58m2あたりは要注意なんだ
特に注意したい税制優遇の面積要件
不動産の税制優遇では、床面積が要件になっているものがあります。
次のような制度を利用する時には、面積要件が不足しないか、床面積の計算方法に注意しましょう。
税制優遇の面積要件
- フラット35
→壁芯面積30m2以上 - 住宅ローン控除
→登記面積50m2以上 - すまい給付金
→登記面積50m2以上 - 登録免許税の軽減の特例
→登記面積50m2以上 - 不動産取得税の軽減の特例
→固定資産評価証明書の現況床面積 - 新築住宅に係る固定資産税の減額
→固定資産評価証明書の現況床面積 - 住宅取得等資金贈与の特例
→登記面積50〜240m2 - 住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
→登記面積50m2以上
それぞれ解説します。
1. フラット35
床面積の要件:戸建70m2以上、マンション30m2以上
フラット35の床面積は、壁芯面積です。
中古マンションでは、登記面積×1.06で計算することも可能です。
フラット35を中古マンションで利用するためには、フラット35適合証明を取得する必要があります。
【参考】フラット35・ご利用条件について
2. 住宅ローン控除
床面積の要件:50m2以上
住宅ローン控除は登記記録の床面積で、マンションは内法面積、一戸建ては壁芯面積です。
マンションで専有面積が50m2を少し超えるくらいの広さだと、内法面積が50m2以下になり控除が受けられないこともあります。
(令和3年税制改正により一部40m2以下も利用可能)
住宅ローン控除は、最大400万円の節税効果があるお得な制度。
さらに消費税対策として、控除期間が3年延長され、お得になっています。
【参考】国土交通省・住宅ローン減税制度利用の要件
3. すまい給付金
床面積の要件:50m2以上
すまい給付金も登記記録の床面積で、マンションは内法面積、一戸建ては壁芯面積です。
すまい給付金は、最大30万円(2019年10月以降は最大50万円)が給付される制度。
【参考】国土交通省・対象要件(新築住宅)
4. 登録免許税の軽減の特例
床面積の要件:50m2以上
登録免許税の軽減の特例も登記記録の床面積で、マンションは内法面積、一戸建ては壁芯面積です。
5. 不動産取得税の軽減の特例
床面積の要件:50m2以上、240m2以下(戸建て以外の貸家住宅は1戸あたり40m2以上)
この場合の床面積は、固定資産評価証明書に記載されている現況床面積が該当します。
現況床面積は課税床面積とも呼ばれ、これは登記記録の床面積に共有部分の床面積を按分して加算(自分の持分を加算)したものになります。
【参考】東京都主税局・不動産取得税
6. 新築住宅に係る固定資産税の減額
床面積の要件:50m2以上、280m2以下(戸建て以外の貸家住宅は1戸あたり40m2以上)
こちらも、不動産取得税の軽減の特例と同じで、固定資産評価証明書に記載されている現況床面積が該当します。
登記記録の床面積に共有部分の床面積を按分して加算したものです。
新築住宅にかかる固定資産税が3年間(マンション等の場合は5年間)、2分の1に減額。
4年目(マンション等の場合は6年目)から固定資産税の額が元に戻ります。
7. 住宅取得等資金贈与の特例
床面積の要件:50m2以上、240m2以下(被災者は下限なし)
この場合の床面積は、登記記録の床面積になります。
父母や祖父母等の直径尊属からの住宅資金贈与が、最大1,200万円(2019年10月以降は最大3,000万円)まで非課税になるもの。
【参考】国税庁・No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
8. 住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
床面積の要件:50m2以上
住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例の床面積は、登記記録の床面積になります。
住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例とは、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選択できるもの。

マンションで内法の床面積が50m2だと、特例が色々使えないんだね。

だからほとんどのマンションは、内法でも50m2を超える様に設計してあるんだよ。
足りないのは一部の古いマンションだから、リノベーションマンションは50m2未満のこともある。
他にこんなときは?
不動産に関する制度以外にも、床面積が気になる場面があります。
火災保険は多くが内法面積
火災保険の保険金額を決める面積は、マンション管理規約に規定されている『専有部分』の面積を基準にします。
多くのマンション管理規約では、内法面積が専有部分になります。

マンションの管理規約をチェックしてみよう。
管理規約には「専有部分等の範囲」が明記されている。
一般的な管理規約なら壁や天井の躯体部分は専有部分から除くことが多いから、内法面積で考えるんだ
屋根裏・ロフトは天井高1.5m以上をカウント
屋根裏やロフトについては、天井の高さが1.5m以上ある部屋だけ、登記面積に算入します。
一部だけでも高さが1.5m以上あれば、全ての面積が算入されます。
不動産登記について定めた「不動産登記事務取扱手続準則」では、次のように定められています。
天井の高さ1.5メートル未満の地階及び屋階(特殊階)は、床面積に算入しない。ただし、1室の一部が天井の高さ1.5メートル未満であっても、その部分は当該1室の面積に算入する。
引用元: 不動産登記事務取扱手続準則第82条第1号
出窓は床面レベルで高さ1.5m
出窓についても、不動産登記事務取扱手続準則で、次のように定められています。
出窓は、その高さ1.5メートル以上のものでその下部が床面と同一の高さにあるものに限り、床面積に算入する
出窓の高さが1.5メートル以上でも、出窓の下の部分が床面より高い位置にある場合(段差がある場合)は、床面積に含まれないとされています。
賃貸広告は混在
賃貸の広告においては、壁芯面積と内法面積が混在しています。
戸建てや一棟賃貸では壁芯面積、分譲区分では内法面積が多くなっています。
さらに、次のような共有部分の面積も含んでいることもあります。
- バルコニー
- アルコープ(壁面の一部をくぼませて作った空間で、廊下から少し後退させた玄関前部分のこと)
- 防災備蓄倉庫
こうした部分の面積も含んでいる場合、通常は但し書きでそれぞれの面積を記載します。
さらに知っておきたい知識
さらに知っておきたい知識として、畳のサイズや単位(m2と坪)があります。
畳のサイズは4種類
一言で「畳」と言っても、実は4種類のサイズがあります。
畳のサイズ
- ●京間(本間)
- 畳のサイズ:1,910mm×955mm
1畳の面積:1.82㎡
京都中心に見られるタイプで、4種類の中で最も大きいサイズです。 - ●中京間
- 畳のサイズ:1,820mm×910mm
1畳の面積:1.65㎡
名古屋中心に見られるタイプです。 - ●江戸間
- 畳のサイズ:1,760mm×880mm
1畳の面積:1.54㎡
東京中心に見られるタイプです。 - ●団地間
- 畳のサイズ:1,700mm×850mm
1畳の面積:1.44㎡
エリアに関係なく集合住宅に多く見られるタイプで、最も小さいサイズになります。

畳の大きさって、こんなに違うんだ!

一応、1畳=1.62m2以上として計算するように決められている。
まぁ実際は今でも古い家は昔のままだけどね。
住宅の居室等の広さを畳数で表示する場合においては、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いること。
m2と坪
m2(平方メートル)と坪は、どちらも土地の広さを示す単位。
m2は見慣れた単位だと思いますが、坪は尺貫法(しゃっかんほう)による面積の単位です。
m2から坪、または坪からm2を計算する場合には、次の計算式を使うと簡単です。
m2から坪を計算する場合
80(m2)×0.3025=24.2(坪)
坪からm2を計算する場合
80(坪)÷0.3025=264.46(m2)
なお、契約書に記載する面積は「m2」を使うことと決められています。
イメージしやすいように、m2表記の補足的に「坪」で表記するのはOKですが、「坪」のみではNGです。
まとめ
建物の床面積には、壁芯と内法の2つの計算方法があります。
- 壁芯面積は壁や柱の中心を結んだ線に囲まれた部分の面積で、新築マンションのパンフレットに記載される面積
- 内法面積は壁の内側を結んだ線に囲まれた部分の面積で、登記簿に記載される面積
- 壁芯面積のほうが内法面積より大きく、5〜8%の差がある
住宅ローン控除などの制度には床面積の要件がありますが、どの面積を使うかは制度によって異なります。
- 壁芯面積を使うもの:フラット35
- 内法面積を使うもの:住宅ローン控除、すまい給付金、登録免許税の軽減の特例、住宅取得等資金贈与の特例、住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
- 「不動産取得税の軽減の特例」や「新築住宅に係る固定資産税の減額」は、固定資産評価証明書に記載されている現況床面積が基準となります。
優遇制度の床面積要件は「内法面積で50m2以上」というものが多いため、壁芯面積で見てしまうと対象外になってしまう可能性もあります。
床面積を見るときには、壁芯なのか内法なのかをよく確認するようにしましょう。
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