「市街化調整区域は売れない?」

市街化調整区域の不動産売却でお悩みですね。

確かに市街化調整区域だと建物を建てられないなどの制限があり、売れにくいこともあるでしょう。

しかし売り方次第では、市街化調整区域でも普通に売れます。

今後は市街化調整区域がますます売りにくくなる傾向なので、売るなら早く売り出す方が有利。

あなたの土地が売却できれば、相続のわずらわしさも減り、生活資金の足しにもなりますね。

この記事では、市街化調整区域の不動産を売る方法と、知っておきたい知識をまとめました。

あなたの土地売却が成功するために、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

なお土地の地目が「農地」の場合は、宅地への転用を検討しましょう。

農地の宅地転用はこちらの記事で詳しく解説しています。

市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域のこと。

市街化調整区域のイメージ

市街化調整区域の面積は日本の国土の9.9%を占め、人口の約9.5%(1,205万人)が暮らしています。
市街化調整区域の面積と人口

区域区分制度について
区域区分制度は、道路・公園・下水道などの基盤整備についての公共投資を効率的に行いつつ、良質な市街地の形成を図る目的で、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分するものです。なお、三大都市圏や政令指定都市では区分することとされ、それ以外では都道府県が区分するかしないかを選択することとしています。
【参考】国土交通省・市街化区域と市街化調整区域〔区域区分〕

ハウスハウス

住んでる人は多いんだね


家博士家博士

だから売れないわけではないよ。

市街化調整区域が売りにくい3つの理由

市街化調整区域の土地が売りにくい理由として、主に3つが挙げられます。

それぞれ解説します。

理由1. 建物を建てるのに許可が必要な場合が多い

市街化調整区域では、原則として、新たに建築物を建てられません。

例外的に建築が認められるのは、次の3つのケースに限られます。

市街化調整区域で建築できる3つのケース

  1. 開発許可あり
  2. 開発許可が不要(条件あり)
  3. 既存建築物の建替(条件あり)

それぞれ解説します。

建築できるケース1. 開発許可あり

市街化調整区域でも、開発許可を受ければ建築物を建てられます。

ただし開発許可を受けるのは簡単でなく、技術基準(都市計画法第33条)と立地基準(都市計画法第34条)に適用する必要があります。

【参考】国土交通省・開発許可制度の概要

建築できるケース2. 開発許可が不要(条件あり)

市街化調整区域でも、開発許可が不要な建物であれば、条件付きですが建てられます。

具体的には次の様な用途の建物です。

開発許可が不要な建物の例

  • 農家住宅、農業用倉庫、農業用温室
  • 駅舎、図書館、公民館、変電所、郵便局
  • 非常災害のため必要な応急措置として建築する建築物
  • ごく小規模な日用品販売店舗(50平方メートル以内)など

これらを建てるときは、「開発行為等適合証明(通称、不要証明、六十条証明)」を申請します。

【参考】福岡市・市街化調整区域では何を建てることができるのか

建築できるケース3. 既存建築物の建替(条件あり)

市街化調整区域で開発許可が無くても、既存建築物の建替は条件付きで可能です。

条件とは、その敷地の範囲内で、同一の用途、同様の規模・構造の建物を建てること。

ただし第3者が購入して建て替えるためには、市街化調整区域の線引き前にすでにあった建築物であることも条件になります。

既存建築物の建替条件

  • 線引き前にすでにあった建築物
    →属人性なし・第3者でも建替え可
  • 線引き後に建てられた建築物(農家住宅・分家住宅等)
    →属人性あり・本人や相続人のみ可

【参考】福岡市・「既存建築物の建替」とは何か。(都市計画法第34条第14号)

ハウスハウス

市街化調整区域って、誰でも自由に建物が建てられるわけではないんだね


家博士家博士

そう。ただし自治体によって規制緩和があるんだ

自治体によって規制緩和がある場合も

自治体の規制緩和により、市街化調整区域でも開発可能な区域が条例で定められていることも。

こうした区域なら、自治体の許可がおりやすく、売れやすくなります。

例)山形市の場合
(平成29年6月1日施行)
今まで市街化区域に隣接する区域のみ許可されていた戸建住宅・店舗付兼用住宅の建設が、近接するエリア(500m以内)まで拡大されました。さらに宅地分譲・建売分譲・共同住宅も許可されることに。
【参考】山形市・市街化調整区域における規制緩和について

ハウスハウス

建築物が建てられるか、どうやって調べるの?


家博士家博士

自治体に問い合わせるか、不動産会社に調べてもらうか、どちらかだね。

建築可能か調べる2つの方法

市街化調整区域で建物が建築可能か知るには、次の2つの方法があります。

  • 自分で調べる
  • 不動産会社に調べてもらう
自分で調べる場合

自分で調べる場合は、まず登記簿を確認します。

今の建物の登記が線引き前か後かで、建替えの可否の目安が付くでしょう。

線引き後でも、開発許可を受けていれば建替えに問題ありません。

また自治体の窓口で、開発許可や属人性について相談します。

ただしある程度資料が無いと安全側(建築不可)に判断される恐れがあるので、資料を十分に揃えてから行く方が良いでしょう。

不動産会社に調べてもらう場合

後の「売り方」で紹介しますが、不動産会社へ無料査定を依頼すると、このあたりの事情を不動産会社が調べてくれます。

自分で調べるのが面倒な場合は、不動産会社へ無料査定を依頼してみましょう。

不動産会社は実績が豊富な、地元に詳しい不動産会社を選びます。

もし不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると良いでしょう。

全国対応の主要な一括査定サイトとして次があります。

その他、主要な一括査定サイトはこちらでまとめています。

理由2. 電気・ガス・水道・下水などインフラが弱い

市街化調整区域はそもそも市街化を抑制するエリアなので、インフラが整備されていないことも珍しくありません。

例えば、電気については最悪の場合、自己負担で敷設しなければならないことも。

またガスや上水道なら公道があれば敷かれていることもありますが、下水道は整備されていないことも多いでしょう。

もし下水道が整備されていなければ、浄化槽の使用も検討しなければなりません。

ちなみに浄化槽は役所の許可がおりなければ設置できず、汲み取りになる恐れも。

また昔は浄化槽が許可されていた土地でも、汚染などを理由に今は許可されない恐れがあります。

今のインフラ事情については、役所や電力会社に確認しないと分かりません。

理由3. 住宅ローンが借りにくい

3つ目の理由は住宅ローンが借りにくいという点。

市街化調整区域でも、開発許可や既存住宅の建替えなどであれば住宅ローンが借りられます。

しかし金融機関による担保評価が低いため、融資可能額が低くなりがち。

場合によっては住宅ローンの審査に通らないこともあるでしょう。

買い手の多くは住宅ローンを利用するため、ローンが借りにくい市街化調整区域は売りにくいのです。

市街化調整区域を売る2つの方法

市街化調整区域を売る方法としては、主に2つの方法が挙げられます。

方法1. 隣人や近隣の人に売る

最も確実で売りやすいのが、近隣に住む人に買ってもらうこと。

まず隣地を所有する人を中心に、まずは身近で購入してくれる人がいないかヒアリングしてみましょう。

この場合、間に不動産会社を介せず個人間売買で売却すれば、不動産会社に支払う仲介手数料(売却価格の6%+12万円+消費税)が節約できます。

ただし個人間売買では、法令や規制の調査漏れで後からトラブルになるケースも多いため、できれば間に不動産会社を入れた方が安心です。

不動産会社の仲介手数料は、売主と買主が決まっている状態で不動産会社に交渉すれば、半額などに安くしてくれる可能性が高くなります。

個人間売買については、こちらで解説しています。

方法2. 不動産会社経由で売りに出す

近隣にヒアリングしてみたけれど購入者が見つからなかった場合は、不動産会社経由で売りに出します。

1社に断られてもあきらめない

不動産会社の中には、市街化調整区域の土地は売れないと断る会社もあります。

しかし不動産会社の「売れない」は、多くの場合「売りたくない」だけなので、話半分に聞いておきましょう。

なぜなら不動産会社にとって、市街化調整区域の土地は手間がかかる割に仲介手数料が安く、赤字のリスクがあるため。

不動産会社の中には扱ってくれる会社もあるので、1社に断られてもあきらめず何社かあたってみましょう。

地元で売買実績が豊富な不動産会社を探す

不動産会社選びのポイントは、地元での売買実績が豊富な不動産会社を探すこと。

1社だけではなく3社〜6社程度の不動産会社に無料査定を依頼し、話を聞き比べることがポイントです。

ハウスハウス

大手不動産会社ではなくて、地元の不動産会社が良いんだね

家博士家博士

市街化調整区域の土地はそもそも流通量が少ないから、大手不動産会社でも取扱実績がなかったりする。
だから市街化調整区域の土地の売買は、地元不動産会社の方がオススメなんだよ

なお、市街化調整区域の土地を売る場合は、様々な調査が必要になります。

しかし、不動産会社さえ決まればそうした調査もお任せできるので、売主としての手間も省けます。

【不動産会社にお任せできる調査】

具体的な規制の内容について
建築可能な建物の要件など市区町村の役所で確認が必要ですが、不動産会社が調査してくれます。
建築基準法に適合するかどうかの調査
接道が2m以上あるかなど、建築基準法で家が建てられるかどうか確認してもらえます。
インフラ状況の確認
上下水道や電気、ガス、通信など、インフラの整備状況も確認してもらえます。
農地転用の手続き
地目が農地だった場合は宅地に変える手続きを行ってくれます。

特約付きの売買契約もある

市街化調整区域に建物を建てる際は原則として許可が必要ですが、場合によっては許可が下りない恐れもあります。

土地を売買した後に許可が下りなくなってしまうと、購入者はたまりません。

こうした場合に備えて、「許可が得られない場合は売買契約を解除する」といった特約を付けて売買する方法もあります。

特殊な契約になるので、どこまで必要か売却経験の豊富な不動産会社に聞いてみたほうが良いでしょう。

具体的には、不動産会社へ無料査定を依頼し、査定結果を聞くときに相談します。

もし不動産会社の心当たりがない場合は、一括査定サイトを利用すると便利です。

市街化調整区域をもう少し詳しく知りたい方へ

市街化調整区域とは、都市計画区域の1つ。

都市計画区域の3種類の1つ

都市計画法では土地の利用に対して規制を設けており、規制対象になっている区域を「都市計画区域」と呼んでいます。

都市計画区域には、次の3種類があります。

  1. 市街化区域
  2. 市街化調整区域
  3. 非線引き都市計画区域


【参考】国土交通省・建物を建てられるところと建てられないところの話

市街化区域

市街化区域は次の通り。

  1. すでに市街地を形成している区域
  2. おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域

市街化区域は、国土の3.9%で人口の73%が居住しています。
(※国土交通省・平成29年都市計画現況調査より)

例えば東京23区内では、河川敷を除いたすべての土地が市街化区域です。

家博士家博士

市街化区域は建物を建てる時も許可は不要だけど、建てられる建物については『用途地域』によって制限されているんだ

用途地域は「第1種低層住居専用地域」から「工業専用地域」まで、全部で13種類。

用途地域ごとに建ぺい率や容積率、建物の種類や高さ、日影規制などが決められています。

市街化調整区域

都市計画法に基づいて「市街化を抑制すべき区域」とされているのが、市街化調整区域。

日本の国土の約1割を占めており、用途地域の定めもありません。

市街化調整区域においては、建物新築時だけでなく既存建物の建て替えでも行政の許可が必要とされています。

非線引き都市計画区域

都市計画区域の中で、市街化区域・市街化調整区域に該当しない区域が非線引き都市計画区域です。

以前は「未線引き区域」と呼ばれていました。

非線引き区域は土地利用に関する規制が緩やかであるのが特徴。

用途地域が定められていることもあれば、そうでないこともあります。

都市計画図は役所で分かる

あなたの土地が都市計画区域でどうなっているのか調べる方法として、役所に行って聞くことが一番確実です。

家博士家博士

自治体によっては、インターネット上に都市計画図を掲載しているところもあるんだ。
『市区町村名 都市計画図』などで検索すれば分かるよ。

【参考】東京都都市整備局・都市計画情報インターネット提供サービス
【参考】大阪市・マップナビおおさか
【参考】名古屋市都市計画情報提供サービス

市街化調整区域の土地を売却するなら急いだ方が良い理由

市街化調整区域の土地を売却するなら、急いだほうが良いかもしれません。

なぜなら、日本では急激な人口減少と過疎化が進み、地方では住居エリアを中心部に集める動きが進んでいるためです。

急激な人口減少と過疎化

日本の人口は2008年にピークを迎えた後、急激に減少し高齢化が進んでいます。

日本の長期人口変化

日本の長期人口変化

国土交通省の「国土の長期展望」によると、2050年には

  • 5割の地域で、人口が現在の半分以下になる。
  • 2割の地域で、無人化する。

ことが分かっています。

このため市街化調整区域の土地は、ますます売りにくくなると予想されます。

ちなみに不動産価格が上昇している現在でも。最寄り駅から通いエリアでは、地価の下落が続いています。

最寄り駅距離別の公示地価変動率
(地方圏・2018年)

最寄り駅距離別の公示地価変動率(地方圏・2018年)

公示地価とは
公示地価は、国土交通省が毎年全国に定めた標準地約3万地点を対象に、1月1日時点の1平方メートル当たりの価格を3月頃に発表するもの。
都道府県の発表する基準地価と合わせて、土地取引の指標になります。
公示地価は、国土交通省の不動産情報ライブラリにアクセスすると調べられます。
国土交通省 不動産情報ライブラリ
土地の価格の調べ方について詳しくはこちら
土地の価格の調べ方と、価格を比較する場合の修正点とは

立地適正化計画で居住エリアを中心部に集める動き

地方では「立地適正化計画」という計画が進んでいます。

これは人口が減少していく地方で、公共インフラを維持するために、「人が住むエリア」を中心に集めるという政策。

【立地適正化計画のイメージ】

コンパクトシティ説明図

立地適正化計画では、市街化区域の中でさらにエリアを絞って「居住エリア」を指定します。

このため市街化調整区域は、ますます人が住むエリアより遠くなってしまい、価格も下落する恐れがあります。

まとめ

市街化調整区域の不動産が売れにくい理由は次の3つ。

  1. 建物を建てるのに許可が必要な場合が多い
  2. 電気・ガス・水道・下水などインフラが弱い
  3. 住宅ローンが借りにくい

あなたの土地が売れるかは、これらの条件次第です。

詳しくは自分でも調べられますが、不動産会社に依頼したほうが楽で確実です。

地元で売買実績が豊富な不動産会社に無料査定を依頼し、相談してみましょう。

不動産会社の心当たりがなければ、一括査定を利用してください。

一括査定サイトの定番3社

一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。
一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。

この3社以外についてはこちらにまとめています。

  1. すまいバリュー
    おすすめ1位.
    すまいValueバリュー
    査定実績:
    87万件(2016年開始)
    不動産会社数:
    大手6社(全国841店舗)
    運営会社:
    大手6社共同運営
    三井のリハウス住友不動産販売東急リバブル野村の仲介+小田急不動産三菱地所の住まいリレー
    実績 5.0
    不動産会社 4.5
    運営会社 5.0

    大手6社が共同で運営する一括査定サイト。6社といっても全国841店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。首都圏以外でもほとんどの都市で、三井・住友・東急の3社が実績トップを独占しています。
    2024年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトとして定番になっています。
    簡易査定を選べば郵送やメールで概算価格の査定が可能。
    さらに詳しくはこちら⇒すまいValueの詳細

    管理人のコメント

    地方では大手より中小が強いエリアもあるため、HOME4USUUMOが良い場合もあるでしょう。
    しかし都市部では「すまいバリュー」が現状で最強の一括査定サイトです。
    特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。営業マンの質もワンランク上です。

  2. 【公式サイト】すまいValue


  3. HOME4U
    おすすめ2位.
    HOME4Uホームフォーユー
    査定実績:
    累計55万件(2001年開始)
    不動産会社数:
    2,300社
    運営会社:
    NTTデータ・スマートソーシング
    実績 5.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 4.0

    日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始から累計で査定実績55万件と実績は十分です。運営はNTTデータ(東証プライム上場)のグループ会社なので安心。
    不動産会社は大小バランスよく登録されており、幅広く査定を依頼できます。机上査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。
    さらに詳しくはこちら⇒HOME4Uの詳細

    管理人のコメント

    HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多く、自然と査定精度が高くなる仕組み。
    ちなみに記入した内容は、後で不動産会社と話すときに修正できます。
    あまり悩まずとりあえず現時点の希望を書いておけば問題ありません。
    不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。

  4. 【公式サイト】HOME4U


  5. SUUMO
    おすすめ3位.
    SUUMOスーモ
    査定実績:
    非公開
    不動産会社数:
    2,000社
    運営会社:
    リクルート
    実績 4.0
    不動産会社 4.0
    運営会社 4.0

    SUUMOといえば、不動産購入者の9割以上が利用する圧倒的な知名度の不動産情報サイト。運営はリクルートなので安心。登録不動産会社数は2,000社で、物件とエリアで最適な会社を絞った上で紹介されます。
    さらに詳しくはこちら⇒SUUMOの詳細

    管理人のコメント

    大手から地元に強い中小までバランスよく登録されています。最近は数を絞って紹介されるため、最低でも3社以上、できれば6社程度に査定を依頼すると良いでしょう。

  6. 【公式サイト】SUUMO(スーモ)