「マンションの寿命がきたら建替えになる? 費用はどうなるの?」
マンションの寿命や建替えについてお悩みですね。
そんなあなたのために、あなたのマンションの寿命と建替えについて、分かりやすく解説します。
(筆者は、国家資格の技術士(建設)およびコンクリート技士の資格を保有する専門家。さらにこの記事は構造設計一級建築士との共著です。)
結論からいうと、マンションの寿命は〇〇年という一般的な話は、聞き流して良いでしょう。
なぜならマンションの寿命は、個々のマンションによって大きく違い、あなたのマンションの寿命もまた違うため。
また寿命を迎えたマンションは多くが建替えできませんが、あなたのマンションがどうかはまた違います。
この記事では、あなたのマンションの寿命と建替えの可能性を判断するチェックリストを用意しました。
(結論を早く知りたい方はこちら⇒チェックリスト)
さらに詳しく知りたい方のために、あなたのマンションの寿命を知るための『3つの寿命』、そして建替えの現状と実例について解説しています。
マンションは、あなたの大切な資産ですから、慎重に判断してください。
あなたのマンションの寿命とその後が分かり、あなたがスッキリ安心できるために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
1 マンション寿命と建替えを3分で理解する
マンション寿命と建替えの問題をざっと理解するため、要点をまとめました。
- マンションの寿命は、個々のマンションで違う。
- 建替えできるかは、容積率と立地で決まる。
- 建替えが難しいマンションは「解体して土地売却」又は「スラム化」のどちらか。
マンション毎に全く違う「マンションの寿命」
マンションの寿命は、マンションによって全く違います。
2019年時点で建替えられたマンションの平均寿命は40.6年。
しかし内訳を見ると、築20年未満から築50年以上まで、マンションによって寿命に大きな差があることが分かります。
最も長い寿命のマンションは、日本の建築史でも有名な「同潤会アパート」。
1929年完成、2013年に取り壊されるまで、84年間も住宅として利用されていました。
最近の住宅性能表示制度で劣化対策等級3以上のマンションなら75年〜90年はもつとされます。
しかし2000年以前に建てられたマンションだと、寿命は長くても50年位が限界だと考えた方が良いでしょう。
詳しくは後ほど解説のマンションの寿命は何年か?をお読み下さい。

マンションにも寿命があるんだ…。
いつまでも永遠に住めるイメージだったけどな…。

最近のマンションは比較的寿命が長くなっているけど、どうしても限界はあるんだ。
特に旧耐震設計のマンションは売ることも難しくなっているよ
建替えられたマンションは0.3%
寿命を迎えたマンションは全て建替えられると思いがちですが、現実に建替えられたマンションはごく一部だけ。
マンションは全国に約665.5万戸(2019年末時点)、旧耐震基準(1981年以前の基準)で建設された築35年以上のマンションは約104万戸。
しかし建替えられたマンションは約2万戸(2020年4月時点)しかありません。
(国土交通省 マンションに関する統計・データ等)
ざっくり計算すると建て替えが必要な旧耐震マンションのわずか2%弱、マンション全体の0.3%しか建て替えられていません。

なぜ一部のマンションは建て替えに成功したの?

実は建替えに成功したマンションは、ある条件に恵まれていたんだ。
建替えできたのは条件に恵まれたごく一部だけ
建替えに成功したマンションは、次の条件に恵まれていました。
- 容積率制限(土地面積に対する建物床面積の比率制限)に十分な余裕があった。又は容積率が緩和できた。
- 立地が比較的都心で、マンション購入希望者が大勢いた。
建替後の戸数を大幅に増やし、その売却益で建替え
条件に恵まれたマンションは、建替えの際に次の方法で建替え費用を安くしたのです。
- マンションの戸数を大幅に増やした。
- 増やした戸数を新しい入居者に売却。
- その売却益を建替え費用に充てた。

だから条件が良いマンションは建て替えできたんだ!

安い費用だったからこそ、住民の80%が合意できたんだよ。
住民の80%以上が合意しないと、マンションは建て替えできないからね
平均で1.9倍に戸数を増やしている
実際に建替えたマンションを見ると、戸数を1.9倍に増やしています。
(2019年時点で建替中及び建替えられたマンション256件)
建替え前 平均77戸
↓
建替え後 平均146戸(約1.9倍)
建替えの具体例
いずれの例も、増えた戸数を新築として売ることで、建替え工事費の大部分をまかなえたのです。
1件ずつの詳しいデータは、マンション再生協議会・建替え事例にまとめられています。
ほとんどのマンションは容積率に余裕が無い
しかしほとんどのマンションは、容積率制限に余裕がありません。
なぜならマンションを建設するディベロッパーは、容積率を限界まで使って、販売戸数をなるべく多く設計するため。

だから、マンションの建て替えは0.3%しか無いのか

容積率に余裕が無いだけじゃなく、すでにオーバーしているマンションも多いんだ
築年数が古いマンションは多くが容積率オーバー
国土交通省の推計によると、築年数が古いマンションの多くは、すでに容積率がオーバーしています。
容積率がオーバーしているマンションの割合
- 1970年以前築のマンション…67%
- 1971年〜1975年築のマンション…65%
- 1976年〜1980年築のマンション…11%

なんで容積率がオーバーしているの?

都市計画が見直されて、容積率が低くなったからだよ
多くの地域では、都市計画の見直しによって、容積率は年々低くなります。
そのため、昔の容積率で建てられたマンションの多くは、すでに現状の容積率をオーバーしている『既存不適格』になっているのです。
既存不適格マンションについては、こちらで詳しく解説しています。
容積率緩和できなければ1戸2千万円以上の負担に
多くのマンションは容積率に余裕がないため、自治体と協議して特別に容積率を緩和してもらう必要があります。

容積率の緩和は簡単にできるの?

簡単ではない。
自治体が認める条件がそろってないと難しいんだ。
もし容積率緩和が認められない場合、マンションの建替えには「1戸あたり2000万円を超える高額な建替え費用」が必要。
住民が高齢化している場合、この建替え費用を支払うのは難しいのが現実です。
容積率制限に余裕の無いマンションは、自治体と協議して容積率を緩和する。それができないと建替え費用が高額になり、建替えはできない。

建替えできないと、どうなっちゃうの?

まず解体して敷地売却で調整することになる
住民の80%が合意できれば解体して土地売却
マンションの建替えができない場合、マンション住民の80%が合意すれば、「建物を取り壊して更地にして売る」という方法があります。
区分所有者の4/5以上の賛成で、マンションとその敷地を売却できるもの。
次のいずれかの条件を満たせば利用できる。
- 耐震性不足
- 外壁の剝落等により危害を生ずるおそれがある
- バリアフリー性能が確保されていない
土地を売却した売却代金から、解体費用を差し引いた残りを、住民で分けることになります。
築年数が古くても立地が良いマンションであれば、それなりに利益もあるでしょう。
解体も必ずしも悪い話ではありません。

建て替えは難しそうだけど、取り壊して更地にするならできそうだね

今後は多くのマンションが、解体して土地を売却することになると予想されているよ
2019年2月頃に話題になった、滋賀県野洲市の廃墟マンション(築47年、9世帯)ですが、アスベストの問題もあり、解体費用は約1億1,800万円になっています。
所有者9人なので、1人あたり1千300万円以上の負担に。
とりあえずは税金で行政代執行しますが、後で市から請求されます。
【参考】野洲市・定例記者会見資料

解体で住民の8割が合意できないと、どうなるの?

空室が増えてスラム化することになる。
合意できないマンションは空室が増えスラム化する
建替えができないマンションは、次第に空室が増えます。
特に2025年以降は団塊世代が75歳を超え、その多くが施設などに入居し始めることから、マンションの空室が急激に増えると予想されています。
空室の割合が30%を超えるとスラム化・廃墟化が始まる
マンション内で空室の割合が30%を超えると、マンションのスラム化・廃墟化が始まると言われます。
なぜなら空室が増えると、管理組合が機能せず、管理費や修繕積立金の滞納が増えるため。
管理組合が機能しないと、管理会社も管理や修繕ができません。
管理会社はいずれ撤退し、掃除がなくなりゴミが散乱し、照明が切れ、やがてエレベータも止まります
10万円でも売れないマンション
具体例として、バブル時代に建てられた苗場スキー場の数千万円のリゾートマンション。
今は10万円で売りに出されていますが、誰も買いません。

10万円で売るなら、放棄した方が良いんじゃないの?

法律では不動産の所有権を放棄することはできない。
不動産は誰か他の人に売る(譲る)ことしかできないんだ。
所有している限り、税金、管理費、修繕積立金を払い続けることになる。
所有権は放棄できない
マンションがスラム化しても、マンションオーナーは所有権を放棄できません。
誰かに売らない限り、不動産の所有権から逃れることができないのです。
マンションを所有している限り、管理費や修繕積立金、固定資産税、都市計画税などの維持費を支払い続けることに。
スラム化したマンションを売ろうとしても、誰も買いません。
スラム化して売ることもできないという状態も、ある意味でマンションの寿命なのです。
相続で子供まで迷惑がかかる

子供に相続するときはどうなるの?

子供が遺産の全てを放棄した場合に限り、スラム化したマンションの所有権も放棄できる。
ただそれでも子供に管理責任は残るので、子供が管理費や修繕積立金などを支払い続けることになる。

スラム化したマンションは、子供にまで迷惑がかかるんだね。
2 マンション寿命のチェックリスト
あなたのマンションの寿命を判断するチェックリストです。
この項目に3つ以上あてはまる場合は要注意です。
- 前回の大規模修繕で、修繕積立金を全て使い切っている。又は修繕費の融資を受けている。
- 長期修繕計画の計画期間が30年未満で、修繕項目に、サッシ・配管・エレベーター・機械式駐車場等の取替が含まれていない。
- 月々の修繕積立金が、「専有面積×200円/m2」より大幅に安い。
- 積極的に管理組合の理事長をする人がいない。
- 住民が入れ替わらず、住民の高齢化が進んでいる。
- マンションの容積率に余裕が無く、自治体と容積率緩和を協議する環境ではない。
- 徒歩7分以内に、鉄道の駅や市役所などの主要公共施設が無い。

3つ以上あてはまると、どうなるの?

マンションの寿命が残りそう長くないかもしれない。
今ならまだ間に合うから、先ずいくらで売れそうか確認してみるといいかも。
3つ以上あてはまるなら
3つ以上あてはまる場合、今後の選択肢を考えるために「マンションがいくらで売れそうか?」を確かめてみましょう。
今は不動産相場が高騰し、マンションの価格が高騰しています。
あなたのマンションも思わぬ高値で売れるかもしれません。
不動産価格指数(全国)

「不動産価格指数」とは
不動産価格指数とは、純粋に不動産相場の価格変動を見ることができる指数。
国土交通省がヘドニック法という統計計算手法で、年間30万件の不動産売買成約価格から築年数や立地などの余計な要素を取り除き、純粋な価格変動をまとめたもの。
3ヶ月前の売買実績を毎月末に公表。
マンションは、この7年半で52%も値上がりしています。
マンション価格を知るなら不動産会社の無料査定で
あなたのマンションの価格を知るためには、不動産会社に無料査定を依頼します。
無料査定を依頼するポイントは、次の2つ。
- エリアで不動産売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶこと。
- 複数(3〜6社)の不動産会社に査定を依頼し、話を聴き比べること。
エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、査定の精度が高くなります。
また今は都市部を中心に不動産価格が高騰しているため、不動産のプロでも査定が難しい状態。
不動産会社によって査定価格に差が出るため、1社だけでなく最低3社以上に査定を依頼しましょう。
ただし数が多すぎると対応が大変なので、多くても6社程度が良いでしょう。

エリアで売買実績が豊富な不動産会社は、どうやって探すの?

不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると便利だよ
一括査定サイトの定番3社
一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。
一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。
この3社以外についてはこちらにまとめています。
すまいValue
- 査定実績:
- 40万件
- 不動産会社数:
- 大手6社・全国890店舗
- 運営会社:
- 大手6社共同運営
大手6社(三井のリハウス・住友不動産販売・東急リバブル・野村の仲介+・三菱地所ハウスネット・小田急不動産)が共同で2016年に設立した一括査定サイト。
6社といっても全国890店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。
売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。
首都圏以外のほとんどの地方都市でも、三井・住友・東急の3社が売却実績のトップ3を独占しています。
2021年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトです。
簡易査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
地方では大手より地域密着の中小が強い場合もあるので、3位のHOME4Uも確認した方が良いでしょう。
しかし都市部では「すまいバリュー」が定番です。
特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。優秀な営業マンも数多く抱えています。SRE不動産(旧ソニー不動産)
- 査定実績:
- (2014年開始)
- 不動産会社数:
- 売主側1社(買主側多数)
- 運営会社:
- SREホールディングス株式会社
すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。利用できるエリアは首都圏と関西圏限定です。
あのソニーが始めた不動産会社で、売主だけを担当するエージェント制が特徴。無数にある他の不動産会社が買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。管理人のコメント
大手不動産会社でエージェント制はSRE不動産だけ。話を聞くと売却活動に役立つでしょう。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで査定を依頼することがポイント。まずメールで概算価格を査定してくれます。
HOME4U
- 査定実績:
- 累計40万件(2001年開始)
- 不動産会社数:
- 1,500社
- 運営会社:
- 株式会社NTTデータ・スマートソーシング
日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始依頼、査定累計数40万件と実績も豊富。運営は東証1部上場の株式会社NTTデータのグループ会社。
不動産会社は大小バランスよく登録されているため全国どこでも幅広く依頼ができます。
机上査定を選ぶと、郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多いため、自然と査定精度が高くなる仕組みになっています。
ちなみに記入した内容はまた不動産会社と話をするときに修正できます。
あまり真剣に悩まず、とりあえず現時点の希望を書いておく程度で大丈夫。
不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。
【公式サイト】すまいValue
【公式サイト】SRE不動産
【公式サイト】HOME4U
各エリアで最適な組み合わせ

あなたのエリアで最適な一括査定サイトの組み合わせはこちら。
3 マンションの寿命と建替えを10分でより深く理解する
ここから先は、もう少し深く「マンション寿命と建替えの問題」を知りたい方のため、詳しく解説します。
マンションの寿命と建替えはこれから表面化する問題
マンションの寿命と建替えの問題は、これから表面化する問題です。
なぜなら、日本のマンションは、まだ歴史が浅い建築物だから。
日本のマンションはまだ7割が築30年未満
国土交通省がマンションの築年数を調査した結果がこちら。
分譲マンションの築年数の推移
出典:国土交通省・築30、40、50年超の分譲マンション戸数
これによると、日本の分譲マンションは築30年未満が67.9%と約7割になります。
築年数が40年を超えたマンションは全体のわずか13.8%。
日本のマンションは、まだ歴史が浅い建築物なので、マンションの寿命と建て替えは、これから表面化する問題なのです。

じゃあマンションの寿命は何年くらいなの?

マンションの寿命は、マンションによって大きく違うんだ。
3つのポイントで判断できるよ。
マンションの寿命は何年か?
マンションの寿命は『3つの寿命』で決まる
マンションの寿命は、次の3つの寿命で決まります。
- (1)建物の寿命
→新しいマンションほど長寿命 - (2)管理の寿命
→マンションによって大きな差がある - (3)社会的な寿命
→長期的には売れにくくなる傾向

ええ? 建物の寿命だけで決まるんじゃないの?

建物が大丈夫でも、価値が無くなって売れないマンションがあるんだ
それぞれ解説します。
(1)建物の寿命
建物の寿命は次の3つのポイントがあります。
建物の寿命3つのポイント
- 2000年以降築では、住宅性能表示の劣化対策等級3になっているか
- 新耐震設計(1981年(昭和56年)6月以降に着工)又は耐震診断で合格しているか
- コンクリートの劣化が見られないか

意味が全然分からないんですけど…。

順番に説明するよ
新しいマンションほど長寿命
建物の寿命は、新しいマンションほど長寿命の傾向があります。
なぜなら日本の建築技術は年々進歩しており、新しいマンションほど長寿命化を考えて造られているため。

新しいマンションって、どのくらいの築年数のこと?

ひとつの目安は、2000年以降の住宅性能表示制度で劣化対策等級3だと安心だね。
新しいマンションは、劣化対策等級3がひとつの目安
マンションの建物の寿命を判断するひとつの目安が、新築時の『住宅性能表示』の劣化対策等級。
もしあなたのマンションが住宅性能表示で劣化対策等級3なら、建物の寿命については安心でしょう。
等級1〜3で、寿命として次のように想定されています。
住宅性能表示の劣化対策等級
- 等級1
- 建築基準法の必要最低限で、目安として25〜30年で大規模な改修工事が必要。
- 等級2
- 2世代(おおむね50~60年)で大規模な改修工事が必要。
- 等級3
- 3世代(おおむね75~90年)で大規模な改修工事が必要。
最近のマンションでは等級3が標準。
例えば、平成30年度の新築分譲マンションでは劣化対策等級3が63.2%と過半数を占めます。
【参考】一般社団法人住宅性能評価・表示協会 平成30年度建設住宅性能評価書(新築)データ (共同住宅等)
ただし住宅性能表示があるのは一部のマンションだけ
ただし住宅性能表示がないからといって、寿命が短いわけではありません。
なぜなら、住宅性能表示があるのは一部のマンションだけだから。
住宅性能表示の普及率の推移がこちら。
住宅性能表示の普及率推移
(分譲マンション)
住宅性能表示がある分譲マンションは2006年以降に建てられたマンションの7〜8割程度。
2000年以前は制度自体がありませんでした。

住宅性能表示がなければ、どうすれば良いの?

まず耐震設計基準が新耐震か、あとはコンクリート躯体の劣化が進んでいるかだね。
耐震設計は新耐震と旧耐震に分かれる
今存在するマンションには、大きく分けて2種類の耐震基準があります。
1981年(昭和56年)の5月31日以前に着工されたマンションは「旧耐震」、それ以降は「新耐震」と呼ばれます。
旧耐震のマンションは、今の耐震基準より弱く設計されており、震度6以上の地震では瞬間的に崩壊・倒壊する可能性があります。
新耐震のマンションは、震度6以上の地震でも、すぐには崩壊・倒壊しないように設計されています。
旧耐震でも3〜4割は問題なし
ただし旧耐震のマンションでも、全てが新耐震より弱い訳ではありません。
一部の旧耐震のマンションでは、設計時に余裕が十分にあり、新耐震の基準をクリアするものもあります。
国土交通省のマンション総合調査(2018年)によると、耐震診断を実施した旧耐震の分譲マンション103棟のうち40.8%%は、耐震性がある(Is値0.6以上)と診断されています。
このように、旧耐震のマンションが耐震性があるかどうかを判定するためには、「耐震診断」という調査をする必要があります。
耐震診断をおこなった結果、運良く新耐震基準(Is値0.6以上)を満足していれば何もする必要ありません。
耐震診断で不合格なら耐震改修工事が必要
もし耐震性能が新耐震基準に不足している場合は、「耐震改修工事」をしなくてはいけません。
耐震改修工事の工事費は、1戸あたり数十万〜数百万円かかるため、年金暮らしの高齢者には厳しい負担になります。
耐震改修工事の事例
【事例1】
1973年築、東京都目黒区マンション、173戸
耐震改修工事費用:2億円(1戸当たり115万円)【事例2】
1978年築、東京都豊島区マンション、126戸
耐震改修工事費用:8,000万円(1戸当たり63万円)【事例3】
1973年築、東京都港区マンション、45戸
耐震改修工事費用:4億円(1戸当たり889万円)
耐震診断を実施していない旧耐震マンションが6割
国土交通省のマンション総合調査(2018年)によると、旧耐震マンションの6割が耐震診断を実施していません。
なぜなら耐震性がないと判断されると、耐震改修をしないかぎり、余計に売りにくくなってしまうため。
実際に、耐震性がないと判断された旧耐震マンションの38.1%は耐震改修工事を実施しないと決めています。
今後は耐震診断が義務化される流れに
耐震改修促進法の改正(2013年11月25日施工)により、自治体が指定した緊急輸送道路の沿道のマンションには、耐震診断が義務化されました。
今後も耐震診断が義務化される流れは続くでしょう。
耐震診断の結果、耐震性が不足していると判明したマンションは、売ることも難しくなります。
すでに旧耐震のマンションは住宅ローン審査が厳しくなっているため、買主が買えないケースも。
旧耐震基準のマンション売却については、こちらで解説しています。

旧耐震でも、耐震診断で合格すれば大丈夫なんだね。
あとコンクリートの劣化はどう判断するの?

コンクリートの劣化は見た目で分かる場合も多いんだ
コンクリートの劣化は見た目で分かる
コンクリートの劣化が進むと、外壁のタイルや塗装に表れます。
外回りと内装の見える範囲を確認して、大きな亀裂(クラック)やタイルの割れ、サビ汁などがなければ、とりあえずは安心です。
特に、ひさしやバルコニーの付け根など、力がかかりやすいところを注意して確認してみてください。
コンクリートの劣化は中性化と中の鉄筋のサビ
コンクリートの一般的な劣化メカニズムは中性化。
アルカリ性のコンクリートが、酸性雨などにさらされて、外から徐々に中性化するというもの。
その影響で中の鉄筋が錆び、体積がふくらんで「爆裂(ばくれつ)」という状態が起きます。
中の鉄筋がサビて爆裂した様子
ここまで鉄筋が見えていなくて、ひび割れて膨らんでいるだけの場合もあります。
こういった爆裂やひび割れ、サビ汁が出ていると要注意です。
古いマンションではコンクリートの品質が悪い恐れも
古いマンションでは、コンクリートの品質が悪い恐れがあります。
なぜならコンクリートの品質は、数年〜十数年毎に品質管理基準が見直され、品質が向上しているため。
例えばコンクリートの材料に問題があると、「アルカリ骨材反応」や「海砂による塩分」など、別の劣化メカニズムが起こることも。
特に1960年〜70年代に建てられたマンションでは、「洗浄不足で塩分が残った海砂」による欠陥コンクリート住宅が多く、1980年頃には社会問題となりました。
その後、コンクリートの品質管理項目として、コンクリート塩分濃度が必ず測定される様になっています。
新しくても施工不良やメンテナンス不良で寿命は短くなる
新しいマンションでも、施工不良やメンテナンス不良で寿命は短くなるケースがあります。
このうち施工不良は、築10年以内に不良が見つかるケースが多く、デベロッパー負担で補修できます。
問題は、メンテナンス不良でコンクリートの寿命が短くなるケース。
外装が補修されないと「微細なクラックからの浸水」が起き、雨がコンクリート内部に侵入して中性化や鉄筋のサビを加速するケースもあります。
メンテナンス不良について、詳しくは次章の(2)管理の寿命で詳しく解説します。

問題のないコンクリートだったら、建物の寿命は何年くらいなの?

おおよそ60〜100年だといわれているよ。
問題のないコンクリートの寿命は60年〜100年
正しい工事方法と材料で、理想的なコンクリート躯体が構築された場合、きちんとしたメンテナンスが行われると、60年〜100年以上の寿命があります。
平成28年8月に国土交通省建設産業局と住宅局が発表した資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」によると、次の様な内容が示されています。
鉄筋コンクリートの耐用年数について | 出典 |
---|---|
実態調査を行った結果、鉄筋コンクリート部材の耐久実態は50年以上あると認められた。 | 篠崎徹・毛見虎雄・平賀友晃・中川宗夫・三浦勇雄(1974) 「約50年を経過した鉄筋コンクリート造の調査」日本建築学会学術講演梗概集 |
実際の建物の減耗度調査のうえ、建物の減耗度と実際の使用年数との関係から、鉄筋コンクリ-ト造建物の物理的寿命を117年と推定。 | 飯塚裕(1979) 「建築の維持管理」鹿島出版会 |
鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の構造体の耐用年数は、鉄筋を被覆するコンクリートの中性化速度から算定し中性化が終わったときをもって効用持続年数が尽きるものと考える。鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる。)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年。 | 大蔵省主税局(1951) 「固定資産の耐用年数の算定方式」 |
固定資産台帳の滅失データを基に、区間残存率推計法を用いて、家屋の平均寿命(残存率が50%となる期間)を推計した 結果(2011年調査) RC系住宅は68年、RC系事務所は56年 | 小松幸夫(2013) 「建物の平均寿命実態調査」 |
これらを見ると、
- 物理的には鉄筋コンクリートの寿命は50年〜100年
- 実際は68年で取り壊されている
ということが分かります。

劣化対策等級3だと75年〜90年。
耐震性問題なくてコンクリートが大丈夫だったら、60年〜100年は建物は大丈夫ってことだね

そうだね。
次に管理の寿命について解説しよう。
(2)管理の寿命
管理の寿命とは、管理組合がきちんと運営されて、マンションの維持管理ができているか。
次の3つで分かります。
管理の寿命3つのポイント
- 長期修繕計画が30年以上又は解体まであり、定期的に見直されているか
- 修繕積立金が予定通り積み立てられ、滞納などないか
- 管理組合が積極的に運営されているか

マンション販売会社や管理会社が、考えてくれるんじゃないの?

マンションの管理は住民主体が基本だよ。
販売会社や管理会社任せだと、後々大きな問題になるんだ。
まず長期修繕計画が大切
長期修繕計画とは、大規模修繕の内容を決めて、その予算計画を立てたもの。
マンションの管理組合で保存されており、住民は自由に見られます。
築年数が古いマンションほど、長期修繕計画に問題が多い
築年数が古いマンションほど、長期修繕計画が無かったり、計画期間が短いなど、問題が多いことが分かっています。
長期修繕計画の有無をマンションの完成年別に整理するとこちら。
完成年別の長期修繕計画の有無
完成年が1969年以前のマンションでは、約3割が長期修繕計画がありません。
また長期修繕計画の計画期間を完成年別に整理するとこちら。
完成年別の長期修繕計画の計画期間
計画期間が30年以上の割合は、1969年以前築だと33.3%だったのが、2015年以降築では85.7%に。
新しいマンションほど計画期間が長いことが分かります。

計画期間が短いと、なんでダメなの?

金額の大きな修繕項目が抜けている恐れがあるからだよ
計画期間が30年未満だと金額が大きな項目が漏れている
計画期間が30年未満だと、大きな費用がかかる重設備の交換が漏れている恐れがあります。
大きな項目とは重設備の交換です。
重設備の寿命は30〜36年後
重設備の修繕は築30年〜36年頃に必要になり、金額が大きいことから、大規模修繕で問題になりがち。
重設備(給排水管取替、ガス管取替、エレベーター全取替、サッシなど建具取替)には多額の修繕費用が必要です。
給排水管やガス管の取替は1戸あたりの負担が100万円以上。
エレベーター取替や機械式駐車場では、1基あたり数千万円から。
タワーマンションのエレベーターは数億円かかります。

重設備以外って何を修繕するの?

内装や軽設備、外壁や防水があるよ。
- 内装、軽設備←5〜12年サイクルで交換
- 外壁、防水←12〜15年サイクルで補修
- 重設備(機械式駐車場、エレベーター、給排水管等)←30〜40年サイクルで交換
内装・設備は5年〜12年サイクルで交換
内装や設備は、5年〜12年という短いサイクルで交換が必要になります。
初めは寿命の短い鉄部の塗装が4〜6年に始まります。
8年頃から給排水ポンプなどの交換。
12年頃から自動ドア、共有部内装の交換などが必要になります。
この内装や設備の修繕・交換は、1度きりでなく繰り返し必要。
徐々に大規模修繕工事の費用が増える要因です。
外壁・防水は12〜15年サイクルで補修
12〜15年目頃からは屋外足場を伴った外壁や防水工事が始まります。
これは外壁の目地に使われるシーリング材の耐用年数が12〜15年だから。
シーリング材交換にあわせてタイルの浮きを調べる全面打音検査・剥離補修や各所防水の補修を行います。

修繕するものが沢山あるんだね。
費用を節約するために、外壁の修繕サイクルを20年とかに延ばせないの?

シーリングの耐用年数が過ぎると、雨漏りしたり、コンクリートの中の鉄筋が腐食して取り返しのつかないことになるんだ。
特に最近は外壁タイルの落下が問題になっている
外壁タイルの落下が問題になっている
最近は外壁がタイル張りのマンションで、タイルの落下事故が相次ぎ、問題になりつつあります。
国土交通省が平成26年に調査したところ、10%以上の建物が外壁落下の恐れがあるとの結果もあります。
【参考】国土交通省・既存建築物における外壁材の落下防止対策に関する調査結果
国土交通省の指針では、築10年前後に打音検査を実施することが推奨されています。
【参考】国土交通省・剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針
平成元年11月に北九州市でマンション外壁が落下し、2名が死亡1名が重傷という痛ましい事故がありました。
外壁タイルの検査指針は、この事故がきっかけ。
ただし今でも毎年のように、外壁タイルの落下は報告されています。
【参考】国土交通省・特定行政庁より報告を受けた建築物事故の概要

タワーマンションとか足場なんて組めないんじゃないの?

タワーマンションでは足場でなく、特殊なゴンドラを利用することも多いね。
強風時は作業ができないから、半年以上の期間がかかるんだ。
工事費用は値上がりするので理想は5年ごとに見直す
長期修繕計画は、計画を作成した後も、できれば5年毎に見直す必要があります。
なぜなら、大規模修繕工事の費用は、近年の職人不足や、消費税率アップにより値上がりする傾向だから。
また、住宅の新しい法制度やトレンドから、価値を維持するためには、新しい設備を導入する必要もあります。
国土交通省・マンション総合調査(平成30年度)によると、「5年ごとを目安に定期的に見直している」と回答したマンションの割合は、全体の56.3%でした。

いろいろお金がかかるんだね。
これを修繕積立金で支払うんだ

だから修繕積立金が計画通り積み立てられているか、も大切なんだ。
修繕積立金が予定通り積み立てられているか
修繕費用は、マンション管理組合が所有者から預かり積み立てた「修繕積立金」から支払われます。
しかし今、多くのマンションで修繕積立金が不足し、問題になっています。
3割以上のマンションが修繕積立金不足
国土交通省・マンション総合調査(平成30年度)では、34.8%が積立金不足に。
さらに15.5%が2割以上も不足しています。

なんで修繕積立金が不足するの?

3つのケースがある。
修繕積立金が不足する3つのケース
- 長期修繕計画がない又は漏れが多く、修繕積立金が安すぎた
- 工事費の高騰で、修繕積立金が不足した
- 工事費の管理が甘く、修繕積立金を無駄遣いした

長期修繕計画の内容が大切なんだね。
でも修繕積立金が不足したらどうなるの?

選択肢は3つある。
修繕積立金が不足した場合の3つの選択肢
修繕積立金が不足したマンションの管理組合は次のどれかを選びます。
- 不足した修繕費を一時金として住民から集める
- 金融機関から借りる(今後の修繕積立金を増やして返済する)
- 大規模修繕をあきらめる

一時金はイヤだね。

いずれにしても住民の半数又は3/4以上の賛成が必要なんだ。
マンションの管理組合が積極的に運営されていないと、決議できず、大規模修繕もできなくなるよ
管理組合に問題があると老朽化が進む
マンションの管理組合が積極的に運営されていないと、大切な決議で意見がまとまらず、何もできません。
何もできないと、大規模修繕ができず、建物の老朽化が進みます。
マンションの管理組合がまとまれば良いのですが、住民が高齢化するとまとまらない場合もあります。
住民の高齢化で意見が対立しがち
築30年を超えると、入居者の中には年金暮らしの人も多くなります。
中には80才を超える方もいます。
余命10年と思っている人と、マンションの価値を数十年間保ちたいと思っている人とでは、意見が対立します。
管理組合として、全ての住民が意見を統一して大規模修繕計画をまとめるのは難しくなります。
住民の意見をまとめる強力なリーダーが管理組合には必要なのです。
管理組合に積極的に関わるリーダーが、管理体制の寿命を左右する。
大規模修繕については、こちらも参考に

管理は大切なんだね。

管理によって、マンションの寿命は大きく違うんだ。
あと最後は、社会的な寿命もある。
(3)社会的な寿命
中古マンションが買われない日本
日本の不動産市場は、
- 新築住宅が大量に建てられている
- 中古住宅は買われない。
という特徴があります。
他の先進国と比較すると、売買される住宅に占める中古住宅の割合は
- 日本: 13.5%
- アメリカ: 77.6%
- イギリス: 88.8%
- フランス: 66.4%
価格下落が著しく、修繕が割にあわない
なぜ日本では中古住宅を買う人が少ないのでしょうか。
これは日本の住宅事情と消費者心理が原因です。
新築住宅を建てることが厳しく制限されいる。
↓
そのため売り出されている家が少ない。
↓
家を買いたい人は、中古住宅が売りに出されるのを待っている。
↓
だから中古住宅はきちんと管理・修繕されて、2代目、3代目の所有者へ再販売される。
↓
築年数が古くなっても中古住宅の価格は保たれる。
↓
資産価値があるので中古住宅を買う人が多い。
しかし日本では、新築住宅の規制が無く、次の流れに。
新築住宅を建てることに制限は無い。
↓
お金さえあれば簡単に新築住宅が購入できる。
↓
中古住宅を買う必要がない。
↓
中古住宅は売れないので、管理・修繕もされず、解体される。
↓
寿命が短いので中古住宅の価値は低い。
↓
資産価値が低いので、中古住宅は買われない。
日本では、このように消費者の好みが新築住宅に偏っています。
このため中古住宅は買い手も少なく、売れても安い価格になる傾向があります。
中古住宅は安くしか売れないので、リフォームしても割にあわなくなります。
リフォームをされない中古住宅は、デザイン、安全性、快適性が時代遅れに。
結果として社会からのニーズが無くなり、マンションの社会的寿命を迎えます。
中古マンションの価格下落率
(2018年)
マンションは築20年〜30年までに、大きく価値が無くなることが分かります。
さらにこの価格で売れているのは、資産価値が高いマンションだけ。
実は多くのマンションは、売りに出しても希望する価格で売れず、売却をあきらめています。
多くの中古マンションは売ることをあきらめる
首都圏の中古マンションで2019年に売り出された内、実際に売れたマンションの割合がこちら。
【中古マンション・戸建が売れた割合】
これを見ると築25年を過ぎたマンションは、売りに出しても約15%(6戸に1戸)しか買われないことが分かります。
もちろんこの中には「試しに高値で売り出してみただけ」という方も含まれてはいますが、それにしても低い割合だといえるでしょう。
住宅ローンや税制でも不利
中古マンションが売りにくい原因として、金融機関の住宅ローンでも不利なことがあります。
旧耐震基準のマンションには融資がつきません。
新耐震基準でも築年数が古いと、融資額が減額されたり融資期間が短くなる傾向があります。
住宅ローン減税も築25年を超えるマンションは対象外になります。
入居者が入れ替われず、管理組合も高齢化
中古住宅として途中から入居する若い世代が少ないことは、所有者の年齢がマンションの築年数と共に高齢化する結果に。
高齢者だらけのマンションは居住者と共に一生を終える結果にもつながりかねません。
この問題は国土交通省でも認識され、様々な取り組みが始まっています。
中古マンションのリノベーションや瑕疵担保責任保険など、新しい動きも少しずつ増えています。
ただし国土交通省も、景気対策を考えると新築住宅の着工戸数を減らすことはできません。
新築マンションが続々と建てられている現状では、中古マンションを購入する人が急に増えるとは考えにくいのです。
立地適正化計画で郊外は無人化
2014年に施行された「改正都市再開発特別措置法」によって、地方自治体が次々と立地適正化計画を発表しています。
立地適正化計画とは、人が住むエリアを、従来の都市計画で決めた市街化地域よりさらに狭いエリア「居住誘導地域」に集める計画。
今後の人口減少で、上下水道・ごみ収集などの公共サービス維持が困難になるため、急ピッチで計画が進められています。
もしあなたのマンションが、駅から遠く不便なエリアだと、もしかしたら数年後には「人が住まない区域」として無価値になる可能性もあります。

社会的な寿命は、どうしようもないなぁ。
やっぱり建替えを考えた方が良いのかな?

次はマンションの建替えについて解説しよう。
あなたのマンションは建替えできる?
マンションの建替えについて、まず費用を知っておきましょう。
マンション建替えの費用は?
マンションの建替え費用はどのくらいか、ざっくりと計算してみます。
ここでは容積率に余裕が無い、建替えに不利なマンションの事例を考えます。
この場合、単純に
となります。
RCマンションの解体費用は、杭残置で概ね坪単価5万円〜8万円程度(1m2当たり1.5万〜2.5万円)。
再建築費用は、時期や場所、グレードによりますが、坪単価120万円程度(1m2当たり36万円)。
66m2 × (2万円/m2+36万円/m2)= 約2,500万円
1戸当たりの建替え費用負担が2,500万円になります。

2,500万円は無理だよ!

建替え費用が2,500万円では、さすがに誰も建替えに賛成しない。
だから別の方法を使うことが多いよ。
マンション建替えの一般的な方法
そこで一般的には1戸あたりの面積を小さくして、一部を新築として売り出し、住民の建替え費用負担を軽くします。
例えば、この様に建替えができます。
↓
建替え後:45m2(13.6坪)×73戸
新築で売却価格が、坪250万円だとすると、
250万円×13.6坪×23戸=7億8,200万
は新たに入居する住民から調達できます。
建替え費用が、
解体8,000万円+新築12億円=12億8,000万円
とすると、その差額
12億8,000万円-7億8,200万円=4.98億円
が住民の負担になります。
これを50戸で負担しますので、
4.98億円÷50戸=約1,000万円
この方法だと、部屋は30%ほど狭くなりますが、1,000万円の負担で建替えは出来ることになります。

1,000万円でも厳しいけど、まあ仕方ないか。
具体的に、一戸あたりの面積を小さくして建替え費用を抑えた例がこちら。
初の民間分譲マンションとして、日本のマンション文化のモデルとなった。60年間の歴史を終え、2017年9月に解体。2019年7月竣工。
建替え前:52〜77m2:28戸
↓
建替え後:38〜55m2:51戸(1.8倍)
1戸あたり負担費用:約2,000万円
逆に戸数を増やさない事例。2005年の耐震偽装事件により、地震耐力が基準の半分しかなかったため、やむなく築7年で解体・建替えた事例。
建替え前:70〜115m2:24戸
↓
建替え後:60〜110m2:25戸(1.04倍)
建替え総事業費:7億7,250万円
ただし補助金・賠償金・1戸売却で約3億円を補填
住民の自己負担:1戸あたり約1800万円
工事期間約2年

耐震偽装の被害者なのに、建替えでローンが1800万円も増えたんだ…

ヒドイよね。
さらに建替えには工事期間もかかるよ。
マンション建替えの期間
マンション建替えには…
- 建替え工事開始まで約2年間の協議、交渉、決議などの労力
- 着工からマンション完成まで約2年間の仮住まい費用
と長い期間の労力と費用が必要です。
建替えの具体例を見てみましょう。
日本最古の分譲マンション。
渋谷駅徒歩2分という立地。
竣工当時は「天国の100万円アパート」といわれたとか…
1953年築
総戸数:110戸(建替え前)→188戸(建替え後)
- 建替え検討開始: 1990年(築後37年)
- 建替え決議: 2003年(築後50年)
- 計画頓挫: 2008年(築後55年)
- 反対者の訴訟: 2012年(築後59年)
- 建替え方針確定: 2015年(築後62年)
- 建替え工事着工: 2016年6月(築後63年)
- 建替え完了: 2020年5月予定(築後67年)
主要幹線道路の国道6号に面していたため、耐震診断が義務化。
不合格(Is値が0.6以下)で建替えに。
1972年築
総戸数:58戸(建替え前)→90戸(建替え後)
- 耐震診断で不合格: 2011年(築後39年)
- 建替え決議: 2014年(築後42年)
- 建替え工事着工: 2015年1月(築後43年)
- 建替え完了: 2017年秋(築後45年)
一部を戸建て住宅用地として売却し、建替え費用にあてた。
1968年築
総戸数:184戸(建替え前)→128戸(建替え後)
- 建替え検討開始: 2003年(築後35年)
- 建替え決議: 2013年(築後45年)
- 建替え工事着工: 2015年12月(築後47年)
- 建替え完了: 2018年3月(築後50年)
建替え前は空き家3割、賃貸2割と半数が所有者不在。
建て替え後に戻って入居したのは21戸だけだった。
戻って入居した人の自己負担1600万円、残りは売却して建替えを行った事例。
1966年築
総戸数:98戸(建替え前)→82戸(建替え後)
- 建替え検討開始: 2007年(築後41年)
- 建替え推進決議: 2009年(築後43年)
- 建替え決議: 2013年3月(築後47年)
- 建替え工事着工: 2013年9月(築後47年)
- 建替え完了: 2015年4月(築後49年)

費用もかかるし、期間も長いね。
これじゃあ、建替えが増えないのも分かるな。

法律も少しずつ変わって、建替えしやすくなってるけど、まだまだだね。
マンション建替えの法律が変わった
旧耐震基準で設計されたマンションのほとんどは建替えられていません。
この問題に対して、平成26年に「改正マンション建替え円滑化法」が制定されました。
この法律では、次の2点が変わりました。
- (1)「マンションを取り壊して土地を売却」という選択肢が可能になった。
- 従来は敷地を売却するために必要な賛成票が「住民全員」。
たったひとりの反対者がいるとダメという、ありえない選択肢でした。
これが「住民の80%以上の賛成」に緩和され、「ありえる選択肢」となりました。 - (2)市街地中心部の旧耐震マンションは、建替えしやすくなった
- 耐震性が不足していると認定されたマンションは、地方自治体の権限で建替え後の容積率制限を緩和できることに。
中心市街地や再開発地域では、地方自治体が容積率を緩和しやすくなり、建替えが現実的になりました。
容積率制限の緩和率がどの程度進むのか、今後の事例に注目が集まります。
自治体が再開発をすすめたい地域では、旧耐震設計マンションの建て替えが進む可能性もあります。
新耐震マンションでも解体して売却が容易に
さらに2020年2月の閣議決定で、新耐震マンションでも次のようなマンションは、「住民の80%以上の賛成」で解体・敷地売却ができる様になりました。
- 外壁の剝落等により危害を生ずるおそれがあるマンション
- バリアフリー性能が確保されていないマンション等
今後は、新耐震のマンションも解体して敷地売却が進みそうです。
【参考】国土交通省・マンションの管理の適正化と再生の円滑化を推進します
東京都でも法改正の予定
東京都では、2019年度に老朽化マンションを連続して建て替える為の新制度を創設する予定。
不動産会社が老朽マンション1棟を買い取って、別の場所へ転居先となる新たなマンションを建設すれば、新たなマンションの容積率を積み増せる制度です。
この制度が活用されれば、不動産会社が主導で、老朽化マンションを連続的に建替えするケースが増えると予想されます。
では、なぜこの様な制度を東京都が創設しているのでしょうか。
その理由は、東京都に築40年超のマンションが急増するためです。
東京都の着工から40年以上のマンションの推移
東京都内の分譲マンションは約181万戸あり、全国の約3割。
都内の分譲マンションの内、建替えを検討し始める築40年以上のマンション戸数が、
2013年 約12.6万戸
↓
2023年 約42.8万戸
と大幅に増加します。
この築40年以上のマンションを建て替えないと、東京全体がスラム化してしまうため、東京都も本腰を入れているのです。

じゃあ、東京都内は建替えできるから安心なの?

都内でも実際に建替えできるのは、23区の中心部や、主要駅徒歩7分以内などに限られると予想されている。
東京でも急速な高齢化と人口減が進むから、郊外ニュータウンなどは建て替えても安くしか売れないからね。

じゃあ、建替えに反対するしかないか。

反対しても2割以下だと追い出されるけどね。
マンション建替えに反対したらどうなる?
マンションの建替えは、住民の80%以上の賛成票が必要。
住民の20%が反対しても建替えできます。
法改正の影響で、建替えではなく、敷地売却(取り壊し)という選択肢も今後は増えることでしょう。
どちらにしても管理組合で一旦決議されれば、たとえ反対でも決議に従うことになります。
あなたが反対しても決議された場合、あなたの選択肢は2つ。
- 時価で管理組合に買い取ってもらう。
- 不動産会社や投資家に買い取ってもらう。
住み続けるという選択肢はありません。
建て替えが決まったマンションは、一般の人には売れません。
買うのは、管理組合か不動産会社、投資家になります。
価格は立地次第で高くも安くもなります。
まとめ
マンションの寿命は〇〇年というのは間違いで、マンションによって寿命は大きく違います。
ですから、あなたのマンションの寿命を知るためには、3つのポイントを確かめましょう。
- 建物の寿命
- 管理の寿命
- 社会的な寿命
また寿命を迎えたマンションは建て替えられるというのも間違いで、ほとんどが建替えできません。
大部分のマンションは解体して土地を売却するか、それができなければスラム化すると予想されています。
あなたのマンションの寿命に不安がある場合は、まず売却価格を確認して、今後の選択肢を考えてみてはいかがでしょうか。
売却したお金で、郊外の築浅マンションを購入するという選択肢もあります。
また戸建住宅であれば、庭仕事や家庭菜園などを楽しめますし、相続後は更地にして売却するという選択肢も。
もちろん子供に残すことができます。
不動産相場が高騰している今なら、あなたのマンションが意外な高値で売れる可能性もあります。
一括査定サイトの定番3社
一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。
一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。
この3社以外についてはこちらにまとめています。
すまいValue
- 査定実績:
- 40万件
- 不動産会社数:
- 大手6社・全国890店舗
- 運営会社:
- 大手6社共同運営
大手6社(三井のリハウス・住友不動産販売・東急リバブル・野村の仲介+・三菱地所ハウスネット・小田急不動産)が共同で2016年に設立した一括査定サイト。
6社といっても全国890店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。
売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。
首都圏以外のほとんどの地方都市でも、三井・住友・東急の3社が売却実績のトップ3を独占しています。
2021年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトです。
簡易査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
地方では大手より地域密着の中小が強い場合もあるので、3位のHOME4Uも確認した方が良いでしょう。
しかし都市部では「すまいバリュー」が定番です。
特に大手トップ3社(三井・住友・東急)の情報量、査定精度、販売力はやはり別格。優秀な営業マンも数多く抱えています。SRE不動産(旧ソニー不動産)
- 査定実績:
- (2014年開始)
- 不動産会社数:
- 売主側1社(買主側多数)
- 運営会社:
- SREホールディングス株式会社
すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。利用できるエリアは首都圏と関西圏限定です。
あのソニーが始めた不動産会社で、売主だけを担当するエージェント制が特徴。無数にある他の不動産会社が買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。管理人のコメント
大手不動産会社でエージェント制はSRE不動産だけ。話を聞くと売却活動に役立つでしょう。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで査定を依頼することがポイント。まずメールで概算価格を査定してくれます。
HOME4U
- 査定実績:
- 累計40万件(2001年開始)
- 不動産会社数:
- 1,500社
- 運営会社:
- 株式会社NTTデータ・スマートソーシング
日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始依頼、査定累計数40万件と実績も豊富。運営は東証1部上場の株式会社NTTデータのグループ会社。
不動産会社は大小バランスよく登録されているため全国どこでも幅広く依頼ができます。
机上査定を選ぶと、郵送やメールで査定可能。管理人のコメント
HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多いため、自然と査定精度が高くなる仕組みになっています。
ちなみに記入した内容はまた不動産会社と話をするときに修正できます。
あまり真剣に悩まず、とりあえず現時点の希望を書いておく程度で大丈夫。
不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。
【公式サイト】すまいValue
【公式サイト】SRE不動産
【公式サイト】HOME4U
あなたのマンションの寿命とその後が分かり、あなたが最適な選択を選ばれることを、心よりお祈りしております。