「家の売却前に、住宅ローンは繰り上げ返済した方が良いの?」
「住宅ローンを全て返済しないと、家を売れないの?」
家の売却と住宅ローンについて、お悩みですね。
結論から言うと、売却前に無理に繰り上げ返済する必要はありませんが、場合によっては繰り上げ返済するメリットもあります。
あなたが売却前に住宅ローン繰り上げ返済をすべきか、正しく判断するため要点をまとめました。
あなたの売却が成功するために、この記事がお役に立てば幸いです。
この記事のもくじ
結論:無理に繰り上げ返済する必要はないがメリットもある
不動産の売却前に、無理して住宅ローンを繰り上げ返済する必要はありません。
しかし、場合によっては繰り上げ返済することでメリットもあります。
繰り上げ返済するかどうか、あなたの事情にあわせて判断して下さい。
住宅ローンは売却代金などで返済できればOK
住宅ローンが残っている家でも、売却代金で住宅ローンを返済できれば、家は売却できます。
そもそも売出し中の家の多くは、住宅ローンが残っている状態なのです。

でも売却代金がローン残額に足りなければ、どうすれば良いの?

オーバーローンってことだね。
オーバーローンでも売却する方法はあるよ。
オーバーローンでも売却する方法はある
「売却価格<住宅ローン残債」の状態を「オーバーローン」と呼びます。
オーバーローンで売却する場合、家の売却代金だけでは住宅ローン残債が返済できませんが、解決方法はあります。
オーバーローンの解決方法はこちら。
- 貯金などで不足分を補う
- 親族などから借りて不足分を補う
- 買い替えでは『買い替えローン』で不足分をまとめる
- 無担保ローンで不足分を借りる
- 任意売却をする
築浅の家では多くがオーバーローンなので、オーバーローンは珍しいことではありません。
オーバーローンでの売却について、詳しくはこちらで解説しています。
家を売ってもローンの残債が全て返せない…。オーバーローンを解決するための7つの方法を解説します。
家の売却前に繰り上げ返済するメリット
家の売却前に繰り上げ返済をする場合、3つのメリットがあります。
メリット1. 自分で抵当権抹消登記すれば司法書士費用が節約できる
住宅ローンをすべて返済すると、マイホームに設定されている抵当権が抹消できます。
万が一住宅ローンの返済ができない(債務不履行)場合に、土地や建物を担保とする権利。抵当権を設定した不動産を競売などで売却することで、抵当権者は優先して弁済を受けることができるため、住宅ローンでは必ず設定されます。
この抵当権抹消の登記を自分で手続きすれば、司法書士費用(1〜2万円程度)が不要です。

繰り上げ返済しないと、自分で抵当権抹消登記はできないの?

売却代金で住宅ローンを返済する場合、自分で抵当権抹消登記するのは銀行が認めてくれないんだ
売却代金で返済する場合は司法書士へ依頼する
抵当権抹消登記の方法には次の2つがあります。
- 司法書士に依頼する
- 自分で手続きする
ただし家の売却代金で住宅ローンを一括返済する場合、「1.司法書士に依頼する」しか金融機関側が認めてくれません。
なぜなら、代金支払→ローン返済→抵当権抹消登記→所有権移転登記を1日で済ませるため、タイトなスケジュールでの登記ミスのリスクを避けるためです。
一般的に抵当権抹消登記は、買主が所有権移転登記をするのに合わせて、買主側の手配する司法書士に依頼します。

司法書士費用は依頼先によっても変わるけれど、交通費込で1万円〜2万円程度だよ
抵当権抹消については、こちらの記事で詳しく解説しています。
不動産売却では、抵当権抹消登記が必要です。抵当権抹消登記の方法は3つあり、今の住宅ローンが残っているか、売却でローンが返済できるかで違います。初めて不動産を売却する人が知っておきたい、抵当権と抵当権抹消の知識について解説します。
メリット2. (わずかですが)金利分の差額だけお得
住宅ローンを繰り上げ返済すると早く返済した金利分だけお得になります。
とはいえ、今は超低金利の時代。
お得になるとはいえ、その額はわずかですが。
200万円×1.0%÷12×6=1万円
約1万円が節約できることになります。
ただし低金利で借りている場合は、後に解説する「住宅ローン減税」の方がお得な場合もあります。
また繰り上げ返済の手数料がかかる場合もあるため、よく確認しましょう。
メリット3. 買い替えでは新しい家のローン審査で有利になる場合も
家を買い替える場合、住宅ローンを繰り上げ返済することで、新しい家の住宅ローン審査に有利になるケースがあります。
なぜなら、今の家の住宅ローンが残った状態では、世帯年収などで決まる融資可能額から、今のローン残額を引かれる恐れがあるため。
世帯年収からの融資可能額: 5,000万円
今の住宅ローン残債: 2,000万円
新しい家の住宅ローン融資可能額: 5,000万円-2,000万円=3,000万円!
5,000万円借りられる家庭でも、3,000万円しか借りられなくなります。
※実際には返済比率や融資期間により、もっと複雑な計算になります。
金融機関によっては影響しない場合も
ただしこの計算方法は、金融機関によって全く違います。
さらに最近は、半年や1年以内に今の家が売却できれば、売却期間は金利分だけの支払いで良いという金融機関も増えています。
また例えばフラット35では、今の家の売却を不動産会社に依頼した媒介契約書があれば、新しい家の住宅ローン審査には影響しません。
こういった不動産売買の特殊な融資は、同じ銀行でも支店によって条件が違い、また数ヶ月単位で状況が変化します。
融資について最新の情報を知りたい場合は、あなたのエリアで売買実績が豊富な不動産会社へ相談すると良いでしょう。
不動産会社の心当たりがなければ、一括査定サイトを利用すると便利です。
主要な一括査定サイトはこちらで紹介しています。
不動産一括査定サイト、主要16社を徹底比較し、ランキングでまとめました。
ローンに縛られず買い先行もしやすい
また、家の買い替えでは、住宅ローンが残っている場合、先に家を売り出す「売り先行」が基本ですが、ローンが無くなれば先に家を買う「買い先行」もしやすくなります。
買い先行のメリットとして、良い物件が見つかればすぐに購入できるうえ、一時的な賃貸への入居やそれに伴う引越しの手間や費用も省けます。
買い先行など買い替えの詳しい手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。
家の買い替えで失敗しないためには、最適な方法を選ぶことが大切。7つの手順で買い替えの失敗を防げます。
家の売却前に繰り上げ返済する注意点
一方、繰り上げ返済には「万が一の備え」がなくなるという注意点もあります。
注意点1. 万が一の余裕資金がなくなる
無理して繰り上げ返済すると、万が一の余裕資金がなくなってしまいます。
余裕資金がないと、いざお金が必要になった時に無担保ローンなどに頼ってしまう恐れも。
こうした無担保ローンなどの金利は、住宅ローンよりも高いため、大きな負担になりかねません。

金利の高いローンは嫌だな…。

病気や事故など何があるか分からないからね。
ある程度の余裕資金は手元に残しておこう。
注意点2. 万が一の団信保険による安心がなくなる
住宅ローンを組むと、セットで団体信用生命保険(団信保険)に加入するのが一般的。
団信保険は万が一、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になってしまった場合に、住宅ローンの返済を免除してくれるもの。
残された家族が安心して暮らしていくための保険とも言えます。
この団信保険が保証してくれるのは、住宅ローンの残債務と同じ額だけ。
住宅ローンが1,500万円残っていたら、それと同額の1,500万円を保証してくれるわけです。
団信保険が無いと…
例えばここで、手持ちの1,500万円を使い住宅ローンを繰り上げ返済したとします。
住宅ローンは完済できましたが、同時に団信保険による保証も終了。
その後すぐに家が売れればいいですが、売れないと売却資金は入ってきません。
さらにここで万が一のことが起きてしまうと、手持ちの現金もなく、残された家族が大変なことになってしまいます。
逆に繰り上げ返済しなければ、万が一の事が起きても住宅ローンは団信保険によって完済でき、1,500万円も手元に残ったまま。
万が一なんて考えたくありませんが、実は繰り上げ返済によってこうした安心がなくなるのです。

住宅ローンは借金だけど、団信保険で実は保険にもなるんだね…

いずれにせよ、繰り上げ返済するのであれば余裕資金は残しておこう。
注意点3. 住宅ローン減税や特例のメリットが減る
住宅ローン減税を利用しているなら、住宅ローンが減ると減税のメリットが減ってしまいます。
年の途中で完済すると、年末の残高が0円になってしまい、住宅ローン減税が利用できません。
今の低金利では、住宅ローンの利子より高い控除額になることも多いでしょう。
住宅ローン減税とは毎年末の住宅ローン残高の0.7%〜1%が10年〜13年間にわたり所得税・住民税から控除されるもの。
2022年以降は税制改正で大幅に変更されています。
【参考】国土交通省・住宅ローン控除制度の概要
【参考】国土交通省・令和4年度税制改正
オーバーローンで売却すると税金が戻ってくる
「売却価格<住宅ローン残債」の状態(オーバーローン)で売却した場合、所得税が戻ってくる特例があります。
売却前に住宅ローンを返済すると、この特例のメリットが活かせない恐れも。
【参考】No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)・国税庁
詳しくはこちらで解説しています。
家を売っても住宅ローンが返せないオーバーローンでは、損失の一部が税金が戻ります。確定申告で少しでも損失を取り戻しましょう。

普通の人は、無理に住宅ローンを繰り上げ返済しないで良さそうだね。

売却するのが確実ならそうだね。
家の売却では、繰り上げ返済よりも高く売ることを考えた方が良いかも。
繰り上げ返済で節約しても数万円だけど、家を高く売れば数百万円高く売れる可能性もあるからね。

家を高く売るためには、どうすれば良いの?

家を高く売るためには、優秀で信頼できる不動産会社を選ぶことが大切だよ。
家の売却では、不動産会社選びで8割が決まると言われます。
優秀で信頼できる不動産会社を選ぶためには、エリアで売却実績が豊富な不動産会社3〜6社へ無料査定を依頼して、話を聴き比べましょう。
不動産会社の心当たりがない場合は、不動産一括査定サイトを利用すると便利です。
一括査定サイトの定番3社
一括査定サイトは主要なものだけでも10社以上ありますが、定番はほぼ決まっています。 一括査定サイトの定番となっている3社はこちら。 この3社以外についてはこちらにまとめています。
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おすすめ1位
すまいValue - 査定実績:
- 77万件(2016年開始)
- 不動産会社数:
- 大手6社(全国875店舗)
実績 5.0 不動産会社 4.5 運営会社 5.0 大手6社が共同で運営する一括査定サイト。6社といっても全国875店舗あるため、ほぼ全ての地域をカバーしています。売却実績も豊富で、特に首都圏では家を売却した3人に2人がこの6社を利用しているほど。首都圏以外でもほとんどの都市で、三井・住友・東急の3社が実績トップを独占しています。
2023年現在、大手6社は他の一括査定サイトからほぼ撤退したため、これら大手に査定を依頼できる唯一の一括査定サイトとして定番になっています。
簡易査定を選べば郵送やメールで概算価格の査定が可能。
さらに詳しくはこちら⇒すまいValueの詳細 -
おすすめ2位
SRE不動産(旧ソニー不動産)- 査定実績:
- (2014年開始)
- 不動産会社数:
- 売主側1社(買主側多数)
- 運営会社:
- SREホールディングス(東証PRM)
実績 4.0 不動産会社 4.0 運営会社 5.0 すまいValueと合わせて利用したいのが、SRE不動産(旧ソニー不動産)。ただし利用できるエリアは首都圏と関西圏のみ。
あのソニーが始めた不動産会社で、大手で唯一のエージェント制を採用。他の不動産会社が積極的に買主を探してくれるため、高値でスムーズに売れやすいメリットがあります。またAI査定に定評があり、千社以上に技術を提供するほど。まずメールで概算価格だけ査定できます。
さらに詳しくはこちら⇒SRE不動産の詳細管理人のコメント
エージェント制は売主だけ担当し、買主は他の不動産会社が探すため、複数に売却を依頼するのに近い効果が期待できます。ただし一括査定でなく1社だけの査定なので、すまいValueとセットで利用がオススメ。
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おすすめ3位
HOME4U - 査定実績:
- 累計50万件(2001年開始)
- 不動産会社数:
- 2,100社
- 運営会社:
- NTTデータ・スマートソーシング
実績 5.0 不動産会社 4.0 運営会社 4.0 日本初の不動産一括査定サイト。2001年のサービス開始から累計で査定実績50万件と実績は十分です。運営はNTTデータ(東証プライム上場)のグループ会社なので安心。
不動産会社は大小バランスよく登録されており、幅広く査定を依頼できます。机上査定を選ぶと郵送やメールで査定可能。
さらに詳しくはこちら⇒HOME4Uの詳細管理人のコメント
HOME4Uでは査定依頼の記入欄が多く、自然と査定精度が高くなる仕組み。
ちなみに記入した内容は、後で不動産会社と話すときに修正できます。
あまり悩まずとりあえず現時点の希望を書いておけば問題ありません。
不動産会社はかなり絞られて紹介されるので、なるべく多くに査定を依頼すると良いでしょう。
【公式サイト】すまいValue
【公式サイト】SRE不動産
【公式サイト】HOME4U
各エリアで最適な組み合わせ
あなたのエリアで最適な一括査定サイトの組み合わせはこちら。
- 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、関西圏(大阪・兵庫・京都・奈良)
- その他の都市(札幌・仙台・名古屋・福岡など)
- 地方(人口密度が少ない地域)
まとめ
ここまで「不動産売却前に住宅ローンを繰り上げ返済すべき? メリットと注意点とは」として解説してきました。
家の売却前に繰り上げ返済するメリットは、
- 自分で抵当権抹消登記すれば司法書士費用が節約できる
- (わずかですが)金利分の差額だけお得
- 買い替えでは新しい家のローン審査で有利になる場合も
逆に注意点は。
- 万が一の余裕資金がなくなる
- 万が一の団信保険による安心がなくなる
- 住宅ローン減税や特例のメリットが減る
あなたの事情でメリットの多い方を選んでください。
あなたの家の売却が成功することを、心よりお祈りしております!